先日、偶然目にしたテレビ番組で「我が意を得たり」の話を聞きました。歌手で俳優の福山雅治さんがマツコ・デラックスさんに言った言葉です。
長崎から上京する時、福山さんはパンク・ロックを目指していたそうです。ところが事務所から求められたのはポップス。そこで福山さんは悩みます。あくまでも好きなパンク・ロックを貫くか、事務所が求めるポップスに妥協するか…。結局、妥協の道を選択するのですが、その理由を「とにかく売れなければ次がないと考えたから」と福山さんは言ったのです。もしパンク・ロックに固執していたら、今の「福山雅治」は存在していなかったことでしょう。
塾経営者、特に個人塾の経営者の中には「こだわり」を持っている人がいます。こだわりは重要です。差別化・個別化の源は「こだわり」です。しかしその「こだわり」は、あくまでも市場の20%の人が支持してくれるものでなければなりません。趣味の世界なら支持率0%でも構いません。しかし我々はビジネスの世界で塾経営をしています。ビジネスとして成立しない「こだわり」は意味がありません。まずは売れること、少なくとも塾経営が継続できることが最優先のはずです。我々は「学習指導を通して子どもたちの未来に貢献したい」という願望を持って、この世界に足を踏み入れました。ならば、無意味な「こだわり」のために塾経営が続けられなくなるのは本末転倒です。
私は塾経営の中心にこそこだわるべきで、その周辺部分にはどれだけでも妥協して構わないと考えています。福山さんが、芸能活動を継続するために俳優業やポップスを受け入れたように。
そして、この話から学ぶべきことがもう1つあります。
それは、自分のことは自分が一番解っていないということです。傍目八目という言葉がありますよね。自分のことは自分が一番解っているようで、実は冷静に見ることができていないものです。福山さんにはパンク・ロックよりも「家族になろうよ」や「桜坂」の方が絶対に似合っています。デビュー当時の事務所スタッフの眼力は正しかったと言えます。
人は、本当の自分の顔や声を見たり聞いたりすることはできません。鏡の中の自分は左右反対だし、写真の中の自分は過去の自分です。録音した自分の声を初めて聴いたとき、あまりの違和感に驚いた経験を誰もが持っていることでしょう。自分では自分の真の姿を認知することができないのです。では、本当の姿を知っているのは誰でしょう-自分以外の全ての人です。
人の意見に素直に耳を傾けることは大切なのです。
あなたは「自分の塾が最高だ」という信念を持っていることでしょう。しかし、一歩引いて他者の目を導入することは悪いことではありません。もしかしたら、自分も気付いていない「自分の良さ」を見付けてくれるかもしれません。もしかしたら、自分が良かれと思って実行していることが、ビジネス上の弊害になっているかもしれません。そうしたことは、なかなか自分では分からないものです。
さて、10月です。これからの2か月間はじっくりと、来年度の戦略を練る期間です。12月になれば、冬期講習をはじめとする超多忙期に突入してしまいます。ただし、戦略を練ると言っても、自塾の客観的姿を知らなければ、最適な戦略構築はできません。ぜひ、他の人の力を借りましょう。まずは塾生&保護者の声を聞くことです。そして、近隣に住む家族・友人の声を聞くことです。できるだけ多くの客観的評価を集めることで、自塾が次に為すべきことが見えてきます。
ぜひ、塾業界の「福山雅治」を目指してください!