先日、大阪で開催された個別指導研究会主催の勉強会にオブザーバーとして出席しました。
参加者の一人が、「塾(FC個別指導)と並行して『そろばん教室』を開いていて、50名ほど在籍しているのだが、1人も塾部門に移行してきてくれない」と嘆いていました。
直接その塾を訪れたわけではないので一般論になりますが、多分、そろばん教室と塾のマッチングができていないのでしょう。
今、少子化の流れを受け、対象学年を広げる塾が多くなりました。高校部ならば、映像教材を導入した自立学習型予備校に、小学低学年以下ならば、かつてのお稽古事や速読・速聴・英会話などのカルチャー部門に参入するのが定番となっているようです。その方向性自体は必然なのでしょうが、問題はボディゾーンとしている塾部門とのマッチングに無頓着なことです。
カルチャー部門(〇〇キッズ or 〇〇クラブの名称)を導入した塾の責任者に理由を尋ねると、たいていの場合「塾部門の見込み客獲得が目的で、利益は度外視しています」と言います。文字通り見込み客獲得に貢献しているのならばいいのですが、上記の塾のように「なかなかカルチャーから塾に移行してこない」という例を多く見掛けます。原因はマッチング・ミスです。
基幹部門の塾が個別指導で、平均月謝が2万円~3万円だとします。そろばん教室は3千円~5千円でしょうか。月額3千円のそろばん教室に通わせていた家庭が突然、2万円の塾に通わせるでしょうか。少し無理があるように感じます。言ってみれば、そろばん教室と個別指導塾は客層が違うのです。多分ですが、ロボット教室や英会話、高額な幼児教育の方が客層は合うのだと思います。安易に、小学生を集めることを目的にカルチャー部門に手を出すと失敗します。それでも、採算トントンくらい生徒が集まればいいのですが、「〇〇実験教室を開校してチラシを5回も入れたのに反応が0」という実例もあります。「〇〇英会話を導入したが生徒は1人」という実例もあります。
前述したように、対象学年を拡大する方向性は正しいことかもしれません。しかし、導入にあたっては慎重に検討し、ある程度の勝算の上で実行してください。
実は、高校部についてもマッチング-ミスは生じます。ライブ授業で定評のある塾が、映像教材を利用した自立学習型の高校部を新設しても、なかなか生徒が継続してくれないという事例は多いものです。
私の地元(愛知県)に英会話とそろばん等で小学生を5,000人近く集めている塾があります。学長の酒井先生の許可を得て紹介しますが、名大SKYという企業です(映像教材e-teacherの制作販売でも有名ですね)。カルチャー部門に特化して成功している例です。この塾の取り組みを見ていると、生半可なことでカルチャー部門を成功させるのは難しいということが分かります。
もし来春から新規事業の導入を考えているのでしたら、今から準備を始めても早すぎることはありません。年明け、セールスマンの「セールストーク」に乗せられて?安易に行動しませんように。