モリモリ元気レポート[82] -つむぎクラブ掲載文より

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森智勝氏

桜、三月、散歩道…塾の多くが新年度を迎えたことと思います。とは言え、受験のラストスパートと新規募集で「てんてこ舞い」の毎日が続いているのではないでしょうか。この後、春期募集も近づいています。4月末のゴールデンウィークまでは息がつけませんね。

昨年の3.11、あの東北大震災の後、塾業界は大きく動きました。それまでも二極化が進んでいたのですが、その傾向が急速に顕著になっています。私塾界が発行している学習塾白書によると、この5年で上位20社の売上占有率が18.5%から25.4%へと上昇しています。その傾向にこの一年、拍車がかかっているのです。時代が不安定になると、消費者のマインドは「安全・安心・安定」を求めます。つまり…大手塾指向に向かいます。白書は、「あと数年で上位100社が売上の50%を占める」と指摘しています。わずか0.27%の事業者が市場の半分を抑えることになるのです。

まさに、中小塾受難の時代です。

しかし、それを時代のせいにして傍観することはできません。また、経営努力という面から見ても、大手塾に劣っている中小塾が存在するのも事実です。実際、懸命の努力を続けている塾は、規模が小さくても地域の信頼を得て発展しているものです。貴塾が今年を発展のターニングポイントにされることを心から願っています。私は地域に様々なカテゴリーの塾が存在し、多様な選択肢を提供することこそ、子供たち、地域に対する最大の貢献だと考えています。

さて、この時期に是非、考えていただきたいことがあります。それは「徹底」の重要性です。決めたことを徹底することが大切だということは、誰でも分かっています。しかし、実行しているかと問えば、心許ない塾が多い。あなたの塾は「どんな塾」だと地域に認識してもらいたいのでしょう。「面倒見の良い塾」「居心地の良い塾」「成績を上げる塾」「合格実績を誇る塾」「ひとり一人に対応する塾」…目指すものは塾によって様々でしょうが、それを徹底することは全ての塾に必須の条件です。

例えば、「わかるまでトコトン教える塾」を標榜するならば、「最後の一人が出来るまで帰さない」という厳しい姿勢が必要です。実際、それを徹底して100名以上を集客している塾があります。ところが、多くの塾が「もちろん、そうしたいのはやまやまだが、今は保護者が送り迎えしているので、あまり居残りをさせると迷惑が掛かる」と言って、中途半端な対応をしてしまいます。1つのクレームを恐れて、思い切った実践が出来なくなっています。これでは、「どんな塾か」が地域に伝わらず、評判を作ることもできません。

以前から指摘していることですが、全ての人に受け入れられる塾にしようと考えていると、誰からも支持されない塾になってしまいます。一部の(全体の約2割)の人が「ここは私の(我が子の)ための塾だ」と思える塾作りが必要です。確かに、「出来るまで帰さない」を徹底すれば、厳しい指導を嫌がる子ども、送り迎えに支障が出る家庭は避けることでしょう。しかし、厳しくとも諦めずに指導してくれる塾を望んでいる家庭は必ず2割以上存在します。

現在、経営不振に悩んでいる塾の経営者に共通するのは、思考が内向きになっていることです。出来る方法を考える前に、出来ない理由を探してしまいます。結果…「振り出しに戻る」です。一歩も前に勧めません。

あなたには「あなたが理想とする塾の姿」があるはずです。その姿の実現に向けて「徹底すること」です。それが差別化であり、独自化であり…塾の評判を作ることです。

塾に限らず、ビジネスには妥協してはいけないコアの部分と、柔軟に対応すべき周辺部分があります。多くの塾が周辺部分に変なこだわりを持ち、コアの部分を疎かにするという逆転現象を起こしています。ぜひ、今年度は基本に立ち返ってください。

あなたはこれからの一年、何にこだわって徹底していきますか?

 
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