モリモリ元気レポート[65] -つむぎクラブ掲載文より

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森智勝氏

夏休みが終わり、講習の疲れが出始める頃に記録的な残暑が追い討ちを掛けています。くれぐれも体調維持に努めて下さい。8月末、私は猛暑の名古屋を逃れ札幌へ行ったのですが、何と、その日は気温34度超、この夏一番の暑さということでした。これも温暖化の表れなのでしょうか。

さて、塾業界は9月から後期に突入します。この時期に徹底しなければならないのが「退塾防止策」です。年度替りから半年が過ぎ、退塾を考える家庭が出始めます。不思議なもので、一人の退塾者を出すと次々と後を追う塾生が表れます。もちろん、友人関係のつながりで同調するというのが大きな原因ですが、もう一つ、人間の心理に潜む原因があります。

例えば、参加したセミナーの終わりに「質問がある人はどうぞ」と司会者から促された時、いの一番に挙手をするのは勇気がいりますよね。ところが、誰かが先陣を切って質問してくれると、気楽に質問できるようになります。誰もが「一番最初」は避けたがるのです。

同様のことが退塾現象にも言えます。誰かが退塾すると、退塾に対する心理的圧力が軽減されます。気楽に?退塾出来る心理的環境が整ってしまうのです。「あの子が退塾した。では、私も…」という心理状態です。つまり、最初の退塾者を防ぐことです。「ひとりも退塾者を出さない」という覚悟が必要です。

方法としては当然のことながら、充実した授業によって生徒の成績を向上させ、満足度を高め、大きな支持を得るというのが王道です。しかし、マーケティング的観点からのアプローチも考えるべきです。なぜなら、当たり前の結論に収まってしまうと、結局、何もしないで終ってしまうからです。「良い授業」は必要条件ですが、それだけで充分条件にはなり得ません。

では、秋の退塾を防ぐにはどうするか。極端な話をすると、「11月、塾にAKB48がやってくる!」というイベントを予告することです。11月に楽しみが控えているのに、その前に退塾する生徒はいないでしょう。あとは、費用対効果の計算が残っているだけです。AKB…は、本当に極端ですが、塾生に対して魅力的なイベントを立て続けに提供し、「退塾のきっかけ」を与えないことです。

これは、私が推奨しているダイレクト・レスポンス・マーケティングの応用なのですが、いわゆる「客離れ」は商品力とは別の力学で発生します。そもそも、商品力のないビジネスは顧客の獲得ができません。また、消費者は商品のミス(不具合)は許せても、サービスのミスは許さないものです。商品(授業)の周辺を彩るサービスの充実は、ビジネスにおいて不可欠です。

もう1つ、秋に取り組まなければならない課題があります。これは、毎年のようにお話しているのですが、「来年度の戦略構築」です。あと3ヶ月もすると、冬期講習~受験対策~新年度生募集と塾業界は最多忙期に突入します。じっくりと新年度構想を練る時間がなくなります。結局、落ち着く先は「例年通り」です。世の中が猛烈なスピードで変化している現代では、「去年と同じ」は退化につながります。時期的にも余裕を持って考えられる今だからこそ、自由な発想が得られるのではないでしょうか。

どうやら、まだまだ残暑が続くようですが、暑さに負けずに精力的な実践を続けて下さい。

 
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