モリモリ元気レポート[56] -つむぎクラブ掲載文より

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森智勝氏

内藤大助選手と亀田興毅選手のボクシングWBC世界フライ級タイトルマッチは、国民的関心が高かったらしく、驚異的な視聴率を記録しました。かく言う私も、珍しくテレビ中継を見たのですが、試合そのものは凡戦?としか見えなかったのですが、二人を取り巻く人間模様や言動は興味深いものがありました。結果はご存知のように、亀田選手が判定で内藤選手を下し、新チャンピオンになりました。

これは翌日のドキュメントで放送されていたのですが、内藤選手は試合後、控え室に戻る途中、しきりと回りのスタッフに声を掛けているのです。腫れあがった顔のまま…。

「俺、負けていないよな。これも(まぶたの傷も)頭だったし(相手の頭が当たって負った傷だし)。」

本人としては判定に納得がいかなかったようです。正直、誰が見ても内藤選手の負けは明らかだったと思うのですが、戦っている当事者としては客観的に評価できないのも無理からぬことです。ましてや、試合直後の興奮状態の中では。

ところが、その30分後に行われた公式記者会見では内藤選手の発言が一転します。

「弱いから負けたんです。亀田選手の方が強かった。」

見事な敗者の弁です。もちろん、本心ではないでしょう。本音は不本意であり、判定に不満も持っていることでしょう。しかし、公式の場では建前をしっかりと語ることができる。そこに、内藤選手の人としての強さを見ます。

この、建前を語ることができるというのは人として、また、ビジネスをする上でも実に重要なことだと考えています。人が共鳴・共感する建前を高く掲げることが必要なのです。それは理念と言い換えてもいいでしょう。多くの企業が会社の理念を掲げていますが、それを「建前」として軽視している企業と、建前だからこそ常に意識し、磨き続けている企業では大きな差が生まれます。

各塾も、それぞれの理念を持っていることでしょう。それをスローガンに終らせずに、プログラム規定としての目的にまで昇華させることです。リッツカールトンのクレドは有名ですが、それは「言葉」にあるのではなく、クレドを磨き上げるためにホテル全体で取り組んでいる日頃の活動にあるのです。

もし、文字化されている理念をお持ちでない塾は、一度、じっくりと考えることをお勧めします。自塾は学習指導を通して、どんな社会貢献をしようとしているのか。誰でも塾人になるとき、独立するとき、崇高な熱い思いを持っていたはずです。ややもすると、時とともに惰性に陥り、初心を忘れがちになります。自分が塾業に賭ける思いを文字化してください。そして、その思いに地域の人が共鳴・共感してもらえるような日常活動に取り組んでください。戦略構築は、そうした「理念」の下で初めて威力を発揮します。

理念に叶うことは全て実行する。理念に外れることは一切取り組まない。

それで全ての行動に一貫性が保たれます。

亀田選手も記者会見では「内藤選手に感謝している」と、試合前とは打って変わって実に立派な対応でした。

 
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