モリモリ元気レポート[46] -つむぎクラブ掲載文より

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森智勝氏

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお付き合い下さい。

感動が人を動かす」はアビトレの木下先生の専売特許ですが、その実例?を偶然、年末のテレビで見たのでお伝えします。

ある若手漫才師?(済みません、お笑いに疎くて、それが誰か分かりません。)が話していた内容です。

大阪の吉本興業が東京の浅草へ進出したときのことです。あの吉本興業が浅草に小屋(ホールのこと?)を出すというので、東京の漫才協会?にとっては黒船来襲のような出来事です。対策に右往左往しているところへ、吉本興業から業務協力の呼び掛けがありました。「上手いこと言って、東京の漫才協会を呑み込むつもりだ」と幹部連中が身構えているところに、吉本興業の担当者がやってきます。そして開口一番、こう言ったそうです。

皆さんは舞台の上で死にたいと思いませんか?

話の要旨は次のようなことです。

最近の風潮として、テレビの中で短いネタで笑いを取ることが「売れる」最短コースだという考え方が若手に蔓延している。確かに、テレビの影響力は大きい。しかし、それに頼りすぎると使い捨ての芸人を次々と生むことになる。我々は、舞台の上で15分、30分とお客さんと向き合って芸を披露し、通用する(あなた方のような)本物の芸人を作っていきたい。そのために芸所(げいどころ)浅草に進出を決めました。ぜひ、日本の芸能を守り、発展させるためにご協力をいただきたい。

この熱弁に、還暦を過ぎた東京の幹部漫才師たちは深く頭を下げ、「よろしくお願いします」と言ったそうです。

この吉本興業の担当者は只者ではない。

第一声の台詞が素晴らしい。多分、この一文で居並ぶ東京漫才師の心をわしづかみにしたことでしょう。

年老いた?漫才師の気持ちになって下さい。世の中は「お笑いブーム」で、昨日今日この世界にやって来た若者が、たいした芸もないのに脚光を浴び、もて囃されている。自分は何十年も「客」を前にして芸を披露してきたプライドがある。しかし、そうした若手芸人(その大多数は吉本興業所属)に対するジェラシーもある。まあ、複雑な心境であることは想像に難くありません。

この吉本興業の担当者は、ズバリと老漫才師たちの気持ちを代弁したのです。

皆さんは舞台の上で死にたいと思いませんか?

このセリフほど老漫才師達のプライドを満足させ、かつ、彼等本人達も気付かなかった本音・欲求を言い当てたものはないと思います。

そうだ、俺達は常に現場にいることが誇りであり、舞台の上で死ねたら本望だ。

まず、間違いなくそう思ったはずです。

吉本興業の担当者が本心を言ったのか、篭絡するための手練手管だったのかは分かりません。しかし、そんなことはどちらでもいいことです。結果として東京の漫才師達の心を動かし、反発もなく協力体制を一瞬にして作り上げたのですから。

この最初のセリフを見つけ出すために、どれだけの試行錯誤があったことでしょう。それは、私たちがチラシのキャッチコピーを生み出す過程と同じです。

最初が全てを規定する!

最初の一文に徹底的に精力を傾注することを、是非真似してほしい。まだまだ安易なキャッチコピーを採用している塾が多い。安易な「案内文」を書いている塾が多い。

授業の最初の一言も重要です。

生徒の心を鷲掴みにするセリフを用意して教室へと向かっていますでしょうか。その一言で教室の空気をガラッと変えることのできる言葉をいくつも用意しているでしょうか。

繰り返しになりますが、「最初」は全てを規定する最重要な部分です。「はじめ良ければ全て良し」は真実です。

と、なれば、一年のはじめである「今」が最も重要なことにも気付くでしょう。えっ?塾の最初は3月か4月ですって?

よろしい!では、こう言い換えましょう。

-今日という日は残りの人生の最初の日-

これは、ある本のタイトルなのですが、素晴らしい言葉ですね。そう、いつでも「今」が最初です。「今」以上に重要な時はないのです。「4月になったら頑張る人」になりませんように。

 
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