モリモリ元気レポート[97] -つむぎクラブ掲載文より

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森智勝氏

6月に入り、春期の生徒募集もひと段落です。次は夏期講習でしょうか。

多くの中学校は今月、年度最初の定期試験を迎えます。ここでの成績が重要です。ぜひ、全ての塾生が納得する成績を取らせてください。

考えてみれば、かつての「定期試験」と言えば年5回。そこに2回の実力テストが加わるのが通例でした。それが現在は、年間3~4回が主流です。塾としてはそれだけ募集機会が減っていると言えます。

私が塾経営をしていた頃、5月末に一学期中間試験があり、6月末には期末試験が控えていました。中間試験で失敗した生徒も、期末試験で取り返すことが可能であり、その口惜しさも維持しやすい間隔です。ところが今では、6月に中間試験、9月に期末試験(二期制の場合)です。これだけ間隔が空いてしまうと、「口惜しさ」というモチベーションも維持できません。

そこで、日常的にモチベーションを保つ工夫が塾の現場では必要になってきます。

モチベーションには大きく分けて二種類あります。ひとつが外的要因であり、もうひとつが内的要因です。外的要因とは、例えば他者から褒められる、あるいは叱られることで意欲的になることです。「満点取ったらゲームを買ってあげる」などという約束も外的要因です。それに対して内的要因とは好奇心、知識欲、自己表現等、内なる意欲を指します。人は、この二つの要因によってモチベーションを維持、向上させます。本来、それ以前に根源的要因(眠いから寝る、空腹だから食べる等)があるのですが、今の議論とは無縁ですので省略します。

この二つの要因を縦糸にすると、横糸になるのが「劇的要因」と「日常的要因」です。劇的要因とは、何か大きな出来事によって人生が変わるくらいのモチベーションを得ることです。例えば私の場合、中学2年生の時に父親を亡くし、大きく考え方が変わりました。例えとしては不適切ですが、あの東日本大震災を経験して人生を変えた日本人は大勢います。

それに対して日常的要因とは、日々のルーティーンの中に少しずつ存在する要因のことです。例えば日記を書くことで気持ちの整理を付け、「明日も頑張ろう」と思えることです。我々塾人が提供しなければならない主たる要因は、この日常的要因です。生徒は週に数回、決まった曜日・時間に登塾します。まさにルーティーンとして。その都度、少しのモチベーションUPをさせることが重要なのです。日々の授業が惰性に流れ、怠惰に陥ることは絶対に避けなければなりません。前述のように「テスト」という外的要因の数が激減した現在、それに代わる要因を塾が提供しているかどうか…ぜひ、日々の授業を見直してください。塾に来るたびに生徒が意欲的になるように。特に、個別指導・自立学習指導を選択している塾は、この日常的要因を提供するのが難しいものです。それだけに、今後の塾の発展の大きな鍵となることでしょう。

以下は、以前も紹介した「夏期講習の案内」の一節です。

10年ほど前のことである。中1の高志君(仮名)は1学期の期末試験の英語が84点だった。勉強が苦手な高志君にとって、それは他教科より20点以上上回っていて、本人も保護者も満足していた。しかし、私は大きな危機感を持った。

このままでは英語が苦手になってしまう。

渋る高志君と保護者を説き伏せ、夏期講習を受講してもらった。そして、英語を徹底的に学習させた。その甲斐あって、休み明けの実力テストで彼の英語は100点だった。人生初めての満点だ。これに自信を得た高志君は、その後も他教科は相変わらずだったが英語だけは上位をキープし続け…今、某有名私立高校の英語教師を勤めている。そう、あの夏、高志君の人生は確実に変わったのだ。人生が変わる瞬間とはドラマのようにドラスティックなことではなく、何気ない日常の中に潜んでいる。

夏休み、暑さの中で勉強を続けるのは辛くつまらない作業かもしれない。しかし、だからこそ本当の生きる力が身に付く。この夏、生きる力の尻尾を掴め!

夏期講習という塾にとってのイベントも、生徒にしてみれば日常的要因の1つです。あなたの塾は、どんな夏期講習を提供しますか?言うまでもないことですが、惰性で用意された講習に、生徒のモチベーションを上げる力はありません。

 
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