モリモリ元気レポート[63] -つむぎクラブ掲載文より

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森智勝氏

サッカーのワールドカップ、南アフリカ大会での日本チームの活躍に国中が盛り上がっています。大会前には悲観論が蔓延していましたが、予想を裏切る大健闘でした。非難轟々だった岡田監督に対する評価も一転し、その手腕を称える論調に変わっています。

私はサッカーの専門家ではありませんので、その戦術について論評する資格を持ち合わせていませんが、どうやら、それまでの中村選手を中心に据えたオールプレスの戦術を大会直前に転換し、堅守速攻に徹したことが功を奏したようです。

そこで思い出すのが北京オリンピックの星野ジャパン(野球)です。当時、私は次のような見解を述べました。

昨年のアジア予選を全勝で突破した星野監督は、それ以降、「予選メンバーを優先して選考する」と明言していました。いわゆる「星野一家」の親分肌を全面にアピールした形です。今期絶不調の上原投手、故障が深刻だった新井選手、川崎選手、直前まで入院していた村田選手もメンバーに選びました。(中略)選手選考は「戦略」の部分ですが、「戦術」でも「こだわり」が仇(あだ)となりました。(中略)短期決戦では調子の良い者を優先して起用するのが鉄則です。星野監督は鉄則よりも自らの信念(こだわり)を優先させたのです。「結果が全て」という点ではビジネスも同じです。自らの美意識を守ることは尊いとは思いますが、結果(売上、利益)が伴わなければ意味がありません。(中略)私は「こだわり」そのものを否定するつもりはありません。ただ、プロは、それを結果に結びつけて初めて意味があると思うのです。料理人は「こだわりの味」で勝負していますが、誰も美味いと言わない「こだわり」ではプロとして成立しないということです。一度、自らのこだわりを捨ててみて下さい。そこから見えてくるものがあるはずです。その上で、こだわりの重要性を再認識した時には、もう一度纏(まと)えば良いのですから。[元気レポート42号]

岡田監督は勝利(結果)のために自らのこだわりを捨てました。大きな勇気が必要だったと思います。結果が伴わなかった時、付け焼刃的な戦術変更が非難されることは目に見えていました。

岡田監督は決断をしたのです。「判断」と「決断」の違いについては、これまでも述べてきました。判断とは「どこかにある答えを探す作業」であり、決断とは「どこにもない答えを作り出す作業」です。この行為が法に触れるかどうかは、法律の中に答えがあります。ですから、その「判断」を専門家(弁護士)に委ねることは問題ありません。しかし、目の前に現れた二人の男性のどちらと結婚すれば幸せになれるか…こうした問いに答えはありません。あなたが選んだ人と一生を掛けて「この人と結婚して良かった」という答えを作っていくしかないのです。それが「決断」です。ですから、決断を他者に委ねることは有り得ません。

経営とはまさに決断の連続です。そして、それは経営者にしかできない行為です。リーダーの資質の1つに「決断力」が挙げられますが、それは、決定を早くするというだけではなく、その後の「答えを作っていく」という行為までを含めています。つまり、決断力とは「行動力」に通じる能力なのです。

 
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