モリモリ元気レポート[59] -つむぎクラブ掲載文より

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森智勝氏

3月、新年度を迎えた塾が多いのではないでしょうか。これからの1年が向こう10年を左右します。頑張って下さい。

先日、興味深い講演を連続して拝聴しました。私がテーマとしている戦略、戦術、戦闘に関する話です。元々はすべて戦争用語ですが、現在ではマーケティング用語としてお馴染みです。戦闘とは文字通り個人の力量のことです。塾で言うと、教務力や面談力です。戦術とは戦(いくさ)現場での采配のことです。塾で言うと教室長のマネジメント力に当たるでしょうか。それに対して戦略とは「戦(いくさ)前の準備」とでも規定すればよいでしょうか。どこを戦場に想定するか、投入する兵力は何人か、その補給路は…等々、目に見えない部分を指します。目に見えないだけに理解するのが難しいのですが、重要度は8割を占めると言われています。

さて、私が拝聴した講演の講師は、最初がトヨタの下請け工場の経営者で、次が日産の幹部社員です。

まず、下請け工場の経営者から興味深い話を聞きました。日本では次世代型自動車として電気自動車の開発に力を入れているが、ヨーロッパではディーゼル車の開発に力を入れ、すでに現在では50%以上の車がディーゼル車になっていると言うのです。原因はエネルギー問題にあります。記憶に新しいと思いますが、近年、バイオ・エタノール燃料を得るために「とうもろこし」等の穀物の価格が急騰しました。あのバイオ・エタノール燃料は、ディーゼル車に適応できるのです。つまり、ガソリンに替わる燃料としてヨーロッパでは穀物を想定しています。講師の心配は、「確かに電気自動車のほうが優れているのは間違いないが、かつてのベータとVHSの争いのように、世界基準争いで電気自動車が負けるのではないか」というものでした。その危惧は当然です。日本ではディーゼル車の開発は全くしていません。

その疑問と心配を日産の幹部社員にぶつけてみました。日産も電機自動車リーフを今年度中に販売を開始する予定です。世界基準争いで負けたらどうするのかと。

回答は明確でした。「全く心配していません。確かに日産では電気自動車を開発していますが、ディーゼル車はルノーが開発していますから…」

いかがでしょう。この準備が戦略の一部だと考えれば、目に見えないものが理解できるのではないでしょうか。塾経営に置き換えると、次のような問い掛けに対する準備です。「再び、新型インフルエンザが流行したらどうするか(特に鳥型の発生時)」「近くに大手塾が教室を出したらどうするか」等々。

そうしたリスク管理の要点は「悲観的に考えて楽観的に行動すること」です。ところが多くの塾が逆の思考をしています。「何とかなるさ」と鷹揚に構え、いざとなると「もうダメだ。なるようにしかならない。」と無勝手流になってしまう…。

戦闘が講師の、戦術が教室長の役目だとしたら、戦略は間違いなく経営者である「あなた」の仕事です。その戦略眼の有無が、これからの塾業界を勝ち残る鍵となることでしょう。

今年度、一年間の健闘を心から期待します。

 
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