モリモリ元気レポート[55] -つむぎクラブ掲載文より

写真
森智勝氏

先月号に続き、経費と投資の違いについてお話します。

お金を払えば誰でも入手できる価値を形式知、お金では入手できない価値を暗黙知と呼びます。たいていの場合、形式知に掛ける費用を経費、暗黙知に掛ける費用を投資と呼びます。例えば、今、流行の映像教材は形式知です。当然、形式知にも費用は掛けなければならないのですが、ここから得られるリターンは多くても2倍までです。それに対して暗黙知から得られるリターンは少なくとも10倍以上、時には100倍、1000倍になって帰ってきます。そんな夢のような分野は何かと言えば、代表的なものが「人材」と「情報」です。

人件費を経費と捉えていると企業経営は上手く行きません。「経費」ですから、会社としては削減を考えるようになります。乱暴に言うと「安くコキ使う方向」へと動きます。そうした思想の会社には当然、優秀な人材は定着せず、結果として売上は落ち、会社は縮小均衡へと向かいます。ところが、暗黙知に掛ける費用、いわゆる「投資」は即効性に欠けるため、優先順位の下位に位置している塾がほとんどです。あなたの塾は、スタッフの育成にどれだけの投資をしていますか?本来、売るべき商品のないサービス業に位置する塾は、「人」そのものが商品のはずです。その商品価値を向上させる手段を持たないのでは業績が縮小均衡に向かうのは自明の理です。「情報」についても同様に軽視している塾を多く見掛けます。例え、あまり意味がないと思われるセールス・セミナーでも、参加すれば何か得られる情報があり、それが次の一手につながることがあります。「ひらめき」とは、様々な情報が、それ詰め込んだ脳内で化学変化を起こし、別の形として生まれる現象です。発想力とは先天的なものではなく、後天的なものというのは脳科学の世界では常識だそうです。

もちろん、投資したもの全てで10倍以上のリターンがあるわけではありません。平均すると10分の1程度でしょう。何百万円も掛けて採用、教育した社員が早々と退職してしまうなどということは日常的に起こっています。しかし、例え10分の1の確率でも、それが最低でも10倍以上のリターン率が見込めるならば充分なはずです。ユニクロの柳井氏が「1勝9敗」と言っている本質はそこにあります。

また、優秀な人材ほど自らを成長させる場を求めているものです。そこに自分を成長させる何かを見つけられなくなったとき、人はその場を去っていきます。離職率の高い職場と低い職場の違いは、けっして待遇や給与だけのことではないのです。

さて、あなたの塾の「人材育成法」はどうでしょうか。OJTの名の下に「習うより慣れろだ」とばかりに、いきなり現場に放り込んでいませんか?それでは、せっかく持てる能力の半分も発揮できないばかりか、当初持っていた教育に対する情熱まで冷めてしまいかねません。

この不況は塾業界にとっては人材確保のチャンスと言われています。大手塾は優秀な新卒者の確保に躍起です。中小塾が手をこまねいて無策のままでいると、近い将来、大きな差を付けられないとも限りません。ぜひ、人材育成に眼を向けて下さい。そこから塾の体質強化は始まります。

もちろん、もっとも投資しなければいけない人材は、経営者たる「あなた」自身であることは言うまでもありません。

なお、誤解のないように申し添えますが、だからと言って形式知に費用を掛ける必要がないということではありません。形式知と暗黙知は車の両輪です。どちらが欠けても塾経営は前へ進まないものです。

 
© 2015 全国学習塾援護会