モリモリ元気レポート[43] -つむぎクラブ掲載文より

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森智勝氏

先日、九州の大手塾さんを訪問してきました。翌日に、とある企業主催の勉強会があり、その「ついで」に取材訪問したのです。もちろん、事前に訪問の旨は伝えてあったのですが…。

取材が終わった後、その塾の若い社長が食事に誘ってくれました。

「もし、ご都合がよろしければ、今夜一緒にお食事でもいかがですか?」

私は、その配慮に正直、舌を巻きました。いえ、食事に誘ってくれたことに対してではありません。それを切り出すタイミングについてです。

本来、こうした時、事前に誘うのが通例です。実際、そのチャンスはありました。しかし、彼はそうしなかった。なぜ?私が「ついで」の訪問と知っているからです。

もし、事前に誘って、私が本来の依頼者との約束をしていて断わるのは気まずいだろう、ましてや、OKを出してから本来の依頼者から食事に誘われたら困るだろう…という私の立場に配慮したから当日のお誘いになったのです。けっして偶然ではありません。その証拠に、私を誘ってくれた時には既に店の予約が済んでいました。キャンセルになることも覚悟して。

こうした配慮ができる塾は強いです。同じ配慮が、いえ、それ以上の配慮が塾生に、保護者になされているからです。言うまでもなく塾はサービス業です。塾というビジネスにおいて、良い授業は当然のことです。いわゆる必要条件です。しかし、それだけでは充分条件にはなり得ません。そこに、サービス業としての「おもてなしの心」がどうしても不可欠なのです。塾舎の外まで見送りに出る、外で遅くまで待っている保護者に一声掛けに行く…そうした人として当たり前の配慮が当たり前に出来る塾でなければ、地域からの大きな支持は得られないでしょう。ぜひ、周辺部分(コアはもちろん授業です)の配慮をお忘れなく。

同じことがスタッフに対しても言えます。亭主の禁句に「誰のお陰で飯が食えると思っているんだ!」があるように、職員に対しても「誰が給料を…」という台詞は当然禁句です。それがパートだろうがアルバイトだろうが…共に社会貢献を実現するパートナーという考え方が必要です。企業の発展において、以前は顧客満足度という言葉が重要視されましたが、今ではそれに加えて「社員満足度」が必要とされています。そこで働く職員が活き活きと前向きになれるような配慮が求められているのです。当然、職場環境や待遇を改善し続ける努力は必要ですが、「人はパンのみに生きるにあらず」という言葉もあります。誰もがそこで自己実現が可能であり、生き甲斐を感じられる職場かどうかが問われています。

経営者に求められているものは、実は広く、大きく、そして、たいていの場合、目に見えないことばかりです。しかし、その見えないものを見る目を持っている経営者が率いる企業は確実に発展します。

今は少子化に加えて「塾離れ」という逆風が吹いています。中小・個人塾にとっては受難の時代です。しかし、「配慮」という視点から見れば、中小・個人塾は大手に比べてはるかに有利な条件を備えています。「あなた」の配慮を末端まで浸透させることは容易なはずです。

これからの後半期、ぜひ、塾全体の「配慮」を見直してください。きっと、いくつかの改善点が見つかるはずです。

 
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