モリモリ元気レポート[136] -つむぎクラブ掲載文より

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森智勝氏

夏期講習、お疲れ様でした。9月は来年度に向けた戦略構築を開始する時期です。「気の早い…」と思われるかもしれません。しかし12月になると冬期講習-入試-新規募集と、塾業界は超多忙期に突入します。新年度のことをじっくりと考える余裕がなくなります。結果、「例年通り」が継承されることになります。それで例年通りの売り上げが確保できるのでしたらいいのですが、大抵は例年以下に陥ります。そうならないためにも、これから3ヶ月の過ごし方が重要になってきます。

さて、小中高校では2020年度から順次、新しい指導要綱が実施されます。中央教育審議会(中教審)が公表した青写真を見ると、学校教育が大きく転換されることが分かります。グローバル化や少子化の流れを受けて、与えられた課題を効率よくこなす力(処理能力)よりも新たな価値を生み出す力(創造力)の育成に舵を切った内容です。

これはアクティブラーニングの第一人者である鈴木健生氏に教えてもらったことなのですが、今後、飛躍的に人工知能が発展し、いわゆる「作業」は人工知能が担う社会が到来するようです。すると、人間が行う分野は新たな価値の創造に限られてきます。実際、自動運転の車が近未来に完成します。すると、運転手という役割が必要なくなります。これまでも、SFの中で語られていたことが次々と実現されてきました。子どもの頃に科学特捜隊が使用していた腕時計型のテレビ電話は今、現実のものになろうとしています。

子供たちが生きる未来は、我々旧人類には想像もできない社会なのでしょう。教育が、そうした未来の担い手の育成のために変化するのは当然のことです。ただ、だからといって基礎学力を軽視する風潮を招くのは避けたいものです。今でも創造力や表現力が重要視されていますが、そもそも基礎学力のない人が偉大な発明や発見をすることはありません。十分な語彙を習得していない人が表現力豊かになることもありません。私はプログラミング教育もアクティブラーニングも否定するつもりはありませんが、それら目新しいものを重要視するあまり、社会全体が基礎学力を軽視するようになることを危惧します。

塾経営はビジネスですから、需要がある分野に進出するのは当然です。しかし、単に目新しいものに飛びつき、奇をてらった策を弄しても、市場の支持は得られないのではないでしょうか。一昔前のCAIブームが一過性に終わったことを教訓にすべきでしょう。また、デジタル全盛の今、習字やそろばんが見直されていることも示唆的です。

要は、「手っ取り早く儲かる方法」などは存在しないということです。私は20年以上前、「これは目新しいから評判を呼ぶぞ」と短絡的に考え、様々なCAI教材を導入し、数年で数千万円をドブに捨てました。CAIが悪いのではありません。本来、塾が(私が)生徒や保護者の支持を集めなければならないのに、機械が生徒を集めてくれると勘違いしていたのです。実際、ちゃんとした運営をしている塾は、CAIの導入を機に業績を飛躍させていました。

今、小学生における英語の教科化を前に、小学生英語(英会話)を導入する塾が相次いでいます。その方向性は間違いではないのですが、既成のコンテンツを導入しただけで上手くいくとは思わないでください。それらはあくまでも形式知であり、暗黙知にはなり得ないのですから。新指導要綱を受けて、プログラミング教育やアクティブラーニングのコンテンツも業界に紹介されることでしょう。それらについても同じです。

保護者や生徒はコンテンツを求めているのではありません。あくまでも、信頼する塾(あなた)が勧めるので、それを信じてコンテンツを利用しているのです。売るべきはコンテンツ(形式知)ではありません。塾(あなた)という暗黙知です。

昔、ある塾長から「反応がなかったチラシ」に対するアドバイスを求められたことがあります。CAIを導入した新カリキュラムの案内です。読んでみると、どこかで見たような文章が…。そのチラシには、そのCAIのメーカーが作成したパンフレットの文言がそのまま使われていました。塾に対するセールストークをそのまま使用しても、エンドユーザー(保護者&生徒)に響かないのは当然です。塾はそのCAIのセールスマンではないのですから。

今後、塾業界には様々なコンテンツが溢れるようになるでしょう。それは業界の発展のためには歓迎すべきことです。しかし重要なことは、あくまでも塾が主体的に戦略を考え、その中にコンテンツを位置付けることです。繰り返します。生徒を集めるのは形式知であるコンテンツではなく、暗黙知である「あなた」です。過去に大失敗をした私を是非、反面教師にしてください。

 
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