モリモリ元気レポート[131] -つむぎクラブ掲載文より

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森智勝氏

4月に入り、全国的に桜が満開です。塾の現場でも、春期講習が終わればホッと一息つける状況ですね。入試・新年度募集と本当にお疲れ様でした。ただ、今月末まではまだ生徒は動きます。もうしばらく集客に力を入れてください。

私はこれまで、「正論は他人を傷付ける」という主張をしてきました。生徒に対して「君は宿題も忘れるし、遅刻が多いなどヤル気が見えない。そんなことでは成績は上がらないぞ」と言っても、それで生徒がヤル気になるわけではありません。言っていることは間違っていません。正論です。ですが、正論に対しては反論ができません。傷付き、捻じ曲がるだけです。

同じことが政治の場で起こっています。「保育園落ちた 日本死ね」のブログをめぐる騒動です。私がこの文章を初めて目にした時の正直な感想は、「これほど下品で、これほどエモーショナルな文章を書けるのは凄い」です。

これは匿名性の高いネット文化の特徴ですが、平気で「死ね」と書きます。どこかの学生団体(もう、名称も忘れました)が「安倍死ね」と連呼していましたが、正直、我々世代はついていけません。どれほど憎くて嫌いな相手でも、「死ね」という言葉を発する習性を我々は持っていません。なぜなら、我々は言霊思考を持っているからです。

かつてネットいじめが問題になったときも、「死ね」という文字が軽々しく使われていました。匿名性の高いネット社会だからこその傾向です。ところが、そうした匿名文化に慣れた世代が、今度は平気で表立って「死ね」という言葉を発するようになります。すれ違いざま相手に「死ね」とささやくのは、いじめ社会では定番になっているようです。

「死ね」だけではありません。この文章の中には「クソ」「ボケ」「ふざけんな」と、子どもを持つ母親とは思えない下品な言葉のオンパレードです。「児童手当20万円にしろよ」「全て無償にしろよ」と、893さんも真っ青な恐喝?文章です。

ただ、私はこの匿名さんを非難するつもりはありません。これはあくまでもブログという匿名性を前提とした、いわゆるストレス発散の場に吐き出した言葉だからです。たぶんですが、実際にお会いすれば穏やかで賢いお母さんなのでしょう。

問題は、あくまでもネット社会というバーチャルな場に吐露された本音を、国会という表舞台に引っ張り出し、黄門様の印籠のごとく扱う政治家の幼稚さにあります。だいたい政治家はすぐに「国民が許さない」とか、「国民がどう思うか…」とか、あたかも全ての国民が支援しているかのごとく発言しますが、そんな不特定の(多数か少数かもわからない)声を背景にして正当化するのは、自分の意見・考えを論じられない無能者のやることです。

ところが安倍総理も正論で返すという下手を打ちました。「そうした声があることを真摯に受け止め、今後も保育政策に全力で取り組む」と建前で応じればいいものを、「そんな誰が言ったかも分からない匿名の文章に…」などと正論で応えたものだから炎上してしまいました。正論は相手を傷つけるのです。そうした心の機微を、二世政治家の安倍さんは分からないのでしょう。結果、国会前には「あれは私です」というプラカードを持った女性たちがデモを行う事態を招きました。

繰り返しますが、この文章は母親のストレスを解消するために、ブログという匿名を前提とした「公開日記」に本音をぶつけただけのものです。そして、本音と建前はちゃんと使い分けることが重要です。政治という建前で成立している場に引っ張り出してはいけません。少なくとも本音は、公にすべきことではないのです。ブログの中だけにしましょう。

塾の現場はストレスの塊です。言うことをきかない塾生、理解してくれない保護者…。しかし、それに対してあなたが本音で、正論で対応していたのでは塾経営は成り立ちません。ぜひ、上手に建前を使いこなす術を身に付けてください。それが相手(生徒・保護者)にとっても有益なことなのです。

 
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