モリモリ元気レポート[126] -つむぎクラブ掲載文より

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森智勝氏

先日、女房殿と二人の娘を連れて、金沢の「ちょっと贅沢な温泉旅館」を訪れました。朝夕の料理も美味しく、スタッフの対応も気持ち良く、女どもは旅館ライフを満喫したようです。その中で最も好評だったのが、特別な部屋に泊まった客だけが利用できる「スペシャル・ルーム」です。暗証番号を入力して入ることができるその部屋では、ワインやウィスキーの酒類とジュースが無料で振る舞われ、岩盤浴とマッサージ、ネイルサービスが受けられます。平日で他の客が少なく、娘たちは入り浸っていました。束の間のお姫様気分を味わっていたのでしょう。「う~ん、生きてて良かった」などと呑気な言葉を吐いています。

こうした特別なサービスは、人の優越感を刺激します。

旅行から帰ってすぐに、一般社団法人日本青少年育成協会が主催する「教育コーチングフェスティバル」が京都で開催され、私も招かれて参加しました。すると、「コーチング認定事業10周年」の節目ということで、思いがけず感謝状を頂くことになりました。たいした貢献もしていないのにステージ上で盾を贈られ、こそばゆい感じです。しかし同時に、ある種の優越感を持ったのも事実です。

多くの塾舎では成績上位者の名前が張り出されているのが通例です。合格発表直後には、トップ校合格者の名前がきらびやかに掲示板を飾ることでしょう。それはそれで重要な取り組みだとは思うのですが、それだけではスポットライトを浴びるのが常に一部の成績上位者だけです。塾としてはできるだけ多くの生徒に光を与えたい。

私が10年以上前に勉強会を立ち上げた当初、会員塾の間で流行った取り組みがあります。名付けて『英雄伝説』です。勉強だけでなく、スポーツや文化活動等、活躍した塾生を「英雄」として表彰する活動です。例えば「部活で県大会に出場した」「読書感想文で表彰された」等々、塾生ひとり一人の広範囲な活躍に対してスポットを当てます。中には「運動会のかけっこで一等賞になった」なんてのもあります。

あるいは、定期的に「いいところカード」を発行している塾もありました。塾から「あなたのいいところ」を記載したメッセージカードを贈るのです。「いつも真剣に授業を受けているあなたの目の輝きが素晴らしい」「忙しいご両親に代わって、幼い妹の世話をしているあなたの優しさがすばらしい」…こうした生徒の良い点を見つけて教えてあげるのです。子どもたちは自分でも気付かない長所を指摘されて、まんざらでもない顔をしています。

中1の男子が「いじめ」をほのめかす遺書を残して電車に飛び込み、自殺しました。実際に何があったかは軽々に予想してはいけませんが、少なくとも、「誰かが自分を理解してくれている」「自分のことを本気で見ていてくれる人がいる」…そう実感している子どもは、何があっても「死」という最悪の選択をしないと確信しています。

これから塾の現場では、期末試験、冬期講習を経て入試まで修羅場の連続でしょう。ややもすると教師たちも殺気立ち、教室の雰囲気が刺々しくなるものです。教師たちの視野も狭くなりがちです。ぜひ、子どもたちをしっかりと見てあげてください。良い点を見つけて、指摘してあげてください。

あなたの大切な塾生の中から、不幸な選択をする子が誕生しませんように…。

 
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