モリモリ元気レポート[111] -つむぎクラブ掲載文より

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森智勝氏

夏期講習真っ只中ですね。猛暑の中、奮闘されている「あなた」を心から応援します。

長崎県佐世保市で痛ましい事件が起こりました。高校一年生の女子が「人を殺して解剖したかった」という理由で同級生を殺害しました。当初は母親の死と父親の再婚等、家庭環境の変化が影響を与えたのではないかと言われていましたが、それ以前から小動物の解剖をしたり、給食に洗剤を混入したり、父親を金属バットで殴ったりという異常な行状が明らかになり、あの「サカキバラ事件」以来の衝撃が走っています。少女を担当していた精神科医は、6月の時点で「人を殺しかねない」と児童相談所に相談をしていたということです。しかし、事件は防げなかった。長崎県では過去の悲惨な事件を受け、命の教育を充実させてきたようですが、教育の無力さ、限界を痛感します。被害に遭われた少女のご冥福を心からお祈りします。

こうした悲惨な事件を前に、我々塾人は語るべき言葉も能力も持ち合わせていません。軽々しく扱えるものではないでしょう。しかし、それでも何かを語る責任を抱えているのも事実です。あなたの覚悟が試されています。ぜひ、生徒に保護者に何かを語ってください。かく言う私も「何かを語ってください」と言うだけで、「何を」を提示できない無力さをさらけ出しているだけなのですが…。

話題を変えましょう。

夏の甲子園大会の出場校が出揃いました。今年は地方予選で劇的な試合が多く、特に石川県大会の決勝では星稜高校が9回の裏に8点差を逆転するというドラマチックな展開がありました。四国(香川県)で野球小僧だった私は、勝った星陵高校ではなく敗れた小松大谷の選手たちに思い入れを深くしてしまいます。それまで星稜打線を2安打に封じながら突如制球を乱して降板したエースの山下君、リリーフした2年生投手の木村君、二人のピッチャーの心の傷を案じます。

野球は、ボールゲームの中で唯一、エラーという記録が残る競技です。1人のエラーで勝負が決するという過酷なゲームです。「あいつのせいで試合に負けた」と言われやすい。そうした肩身の狭い思いを抱えて地元で生きていくのは辛いものです。でも…

今年の夏、40年近くぶりに小・中学生時代の1つ下の後輩A氏に会いました。彼は高松商業の主力選手として3度、甲子園に出場しました。最後の夏は優勝候補にも挙げられていましたが、1回戦で延長17回、サヨナラデッドボールで負けました。地元ファンの落胆は大きかったようです。特に中心打者としてノーヒットに終わったA氏に対する風当たりは相当なものでした。それでもA氏は大学でも野球を続け、全日本にも選抜されるなど活躍しました。プロには進めませんでしたが、彼は今、社員100名を抱える企業の経営者になっています。豪快に笑いながら、「あの甲子園での屈辱があったから、今の自分がある」と言います。

また、甲子園の熱戦として語り草になっている箕島・星稜戦。あと一人、アウトを取れば勝利という場面でファールフライを落球した一塁手のB氏。その後、地元企業の営業マンとなった彼は、「あのファールフライを落としたのは私です」と自ら喧伝しながら営業活動を行い、トップセールスマンになったそうです。

失敗は罪ではありません。それを引きずり、囚われ続けることが罪なのです。

テストに失敗する、入試に失敗する…学問の世界でも多くの失敗が存在します。しかし、それをバネにして自らを成長させるかどうかが問われています。そして、そうした道があることを教え、導くのも我々指導者の仕事です。

生徒たちに道を説く題材は甲子園だけではなく、そこら中に転がっているものです。ぜひアンテナを立てて、様々なデータを収集してください。何気ない事象の中から重要なエキスを抽出して語れる人は、大きな求心力を持つ人です。それは、塾経営者の重要な資質のひとつです。どうぞ、生徒・保護者に「さすが塾の先生」と言わせてください。

この夏、あなたの更なるご活躍を期待します。

 
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