モリモリ元気レポート[102] -つむぎクラブ掲載文より

写真
森智勝氏

10月末、女房殿と平泉を訪問しました。駅前でレンタル・サイクルを借り、一日掛けて周ったのですが、歴史好きの私にとって至福の時間でした。

「自転車に乗っているのは観光客」と分かるらしく、地元の人は実に親切です。その中でも子ども達が素晴らしい。すれ違う時、誰もが「こんにちは!」と声を掛けてくれるのです。これは鹿児島を訪問した時にも体験したことですが、本当に清々しい気分になります。観光で成り立っている町にはゲストを大切にする、いわゆる「お・も・て・な・し・の心」が根付いています。それは昨日今日の話ではありません。長い年月の中で醸成された文化・風土なのでしょう。広い意味で教育の問題です。

塾を訪問すると、時として同じような体験をすることがあります。どこの「馬の骨」とも分からない私に対して、塾生たちが「こんにちは」と声を掛けてくれます。もし私が塾見学に来ていた保護者だったら、その瞬間に入塾を決断することでしょう。その塾が生徒に対して日頃から「人として」の教育を実践していることが実感できます。私は「勉強だけを指導する塾ではありません」と安易に主張することを戒めることがあります。塾の一次的使命は生徒の成績向上にあるからです。その使命を果たした上で、こうした人間教育にも力を入れている塾は魅力的です。

一方で、真逆の塾に遭遇することもあります。以前もお話したのですが、研修の打ち合わせにとある塾を訪問した時のことです。玄関横の受付から声を掛けたのですが、職員室で作業をしていたスタッフ(アルバイト?)がチラッと私を見ただけで黙々と作業を続けています。私を営業マンか何かと思ったのかもしれませんが、印象は最悪です。もし私が問い合わせに来た保護者だったら、その瞬間に入塾しないことを決断することでしょう。

こうした塾の文化・風土は一朝一夕には作られないものです。不断の努力と行動が必要です。私は一日に一度は生徒の名前を呼ぶことを勧めています。生徒の立場になってください。塾に通ったその日、一度も名前を呼ばれなかったら…寂しいものです。単に「こんにちは」と言うだけでなく、「山田君、こんにちは」と言ってあげることです。そうしてはじめて、その「こんにちは」は自分に向けて発せられたと山田君は認識します。保護者も同じです。入塾面談時に一度だけ会った教師から、「山田君のお母さん!」と声を掛けられたら…とても嬉しく思うはずです。私は入塾面談時に「親子写真」を撮ることをお勧めしています。写真をファイルして1日1回は全てのスタッフが目を通します。そうやって、顧客の名前と顔を覚えます。もちろん、完璧に覚えることは難しいでしょう。しかし、だから何もしない塾と、それでも努力を続ける塾の間には大きな差が生まれることを信じて疑いません。なぜなら、その努力を惜しまず続けることこそが塾の文化・風土そのものだからです。

 
© 2015 全国学習塾援護会