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塾・新時代のマーケティング論(96)
新年度、社員のモチベーションを下げないマネジメントを

森智勝氏

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 3月。塾業界にとっての「正月」がやってきました。受験結果、新規集客状況に一喜一憂する時期ですね。全ての生徒たち、そして塾スタッフが晴れ晴れとして桜の季節を迎えられることを祈っています。

 春は新しい社員を塾に迎える時期でもあります。教育担当者は新人の育成に頭を悩ませることでしょう。特に「ゆとり世代」の新人類ぶりは、塾業界だけでなく、多くの一般企業の育成担当者からも嘆き?の声が聞こえてきます。「マネジメントが難しくなった」と。

 私はマネジメント、特に数値管理マネジメントは門外漢ですので語る資格を持っていません。そこで、社員のモチベーション向上に関するマネジメント手法について若干の参考意見を述べます。

 各塾では新年度の数値目標は既に設定済みでしょう。それに加えて、行動目標を導入することをご提案します。特に、「生徒数」「売上」「退塾率」等々の数値目標を持たせるのは現実的ではない新入社員には有効です。

 上記の「生徒数」「売上」のように、経営そのものに直接関わる目標を「結果目標」と言います。結果目標の達成・未達成は外部要因に左右されることがあります。すると、目標が達成できなかった時、全てを外部要因のせいにして、何も改善を図らないという弊害を生じやすい。ところが行動目標は、突発的な事象(病気や事故)さえなければ、自分の意思で絶対にクリアできます。

 もともとマネジメントとは、「最大効率化」を目指す手法を指します。最大効率化とは、「今ある資源(人・金・モノ)を最大限活用する使い方」と考えていいでしょう。

 例えば、処理しなければならない作業が90あり、能力の違うスタッフが2人(Aさん,Bさん)いたとしましょう。能力比は分かりやすくA:B=2:1とします。もし、2人に平等に同じ量の作業を与えた場合、1時間後にAさんが作業を終えたとき、Bさんはまだ半分の作業が残っていることになります。Aさんは残りの時間を持て余し、作業全体が終了するのに倍の2時間がかかってしまいます。そこでマネージャーの登場です。

 Aさんに60のBさんに30の作業を与えます。すると90分後、2人同時に全作業を終了することができます。これが最大効率化です。誰に、どの仕事を、どれだけ振り分ければ最大効率化が図れるかを考え、指示するのがマネージャーの仕事です。いわゆる「適材適所」を考えることです。それに対して、リーダーの仕事はチームのモチベーションと能力を上げる=成長させることで、90分掛かる作業を60分で終らせることです。新入社員の成長を促す意味でも、行動目標を持たせることは有効です。

 目標の設定基準も考えてください。「目標は高ければ高いほど良い」と主張する人もいるようですが、私はお勧めしません。最初から達成不可能と思われる目標を立てると、誰もが意欲を喪失します。例えば結果目標で言えば、1年で生徒数を倍増させようという無茶な?目標です。目の前に3メートルの壁があれば飛びつこうとチャレンジする人でも、10メートルの壁に対しては最初から「無理だ」と諦めてしまいます。目標は「頑張れば届くかもしれない」というレベルに設定します。

 また、検証不可能な曖昧な目標は、目標の意味を成しません。行動目標であっても、例えば「読書を心掛ける」ではダメです。「月に3冊の本を読む」という数値で表されるものでなければなりません。なぜなら、検証ができなければマネジメントにおいて重要なPDCAサイクルを回すことが出来ないからです。このサイクルを回すことは、最大効率化を目指す上で不可欠です。

 次に重要なことは、それらを「見える化」することです。ここで言う「見える化」とは、文字通り物理的に「目標と進捗状況が見える状態にする」ということです。例えば、上記の「月に3冊本を読む」という目標を立てた場合、大きな集計表(手書きでも充分です)をスタッフルームに貼り出し、1冊読む毎に●を付けていくような工夫です。シールを貼ってもいいですね。とにかく、本人はもとより、「誰でも」「いつでも」「嫌でも」目に入る状態にすることです。

 もともと見える化の定義とは「今やるべきことが正しくやれているかどうかが誰にでも一目で分かる状態、これからやるべきことが誰にでも一目で分かる状態」のことです。現状が「正常な状態なのか、異常な状態なのか」が、一瞬で分かるように(意識をしなくても目に入ってくるように)して行動を促すものでなければなりません。それによってはじめて、アファメーション効果を最大限活用できます。パソコンの中・手帳の中に「見える化」をしても効果は低くなります。

 注意点としては、(前述したように)行動目標は本人の自覚とやる気があれば絶対に達成できる性格のものですが、それでも未達成になる場合があります。新入社員は要領も分からず、効率的に行動することが出来ません。その場合、「本人の怠惰」に原因を求め、非難することだけは絶対に避けましょう。これをやると、本人のモチベーションが一気に低下し、疲弊します。指導者(上司)を含めたチームとして「目標達成を阻害しているもの」を洗い出し、排除する姿勢が必要です。「本人の怠惰が原因」と結論付けていては、いつまで経ってもPDCAサイクルは回りません。

 PDCAサイクルを回す具体的な場は、会議(ミーティング)です。マネジメントのソフト面として、この会議のあり方も検討してください。単なる報告と叱咤の場にすると、参加者が萎縮し、会議本来の目的が果たせません。

 会議の目的については以前、本誌で取り上げたことがあります。1つは、様々な意見を出し合うことで化学反応を起こし、より良いアイディアを醸成することです。誰かの意見にヒントを得て、新たな発想は生まれます。一人よりは二人、二人よりは三人の方がアイディアの量は飛躍的に増えていきます。(人数の二乗に比例すると考えて間違いありません。ただし、多くても8人までです。それ以上参加者が増えると、別の機能が作動して提出されるアイディアの量は激減します。理想は4~5人でしょうか)

 ですから、会議とは様々な意見が飛び交う場にしなければならないのです。指名されるまで誰もが無言を貫く会議は「失格」です。そのためのルールはただ1つ。どんな意見に対しても絶対に議長が否定(非難)しないことです。特に、経営者のあなたが否定すると、それが結論になってしまいます。誰もがあなたの顔色を伺い、「あなたの意向に沿うような意見」を言うようになります。これでは活発な議論になりません。

 会議の2つ目の意義は、言葉は悪いですが「スタッフのガス抜き」です。(モチベーションUPと言い換えることもできます)

 会議で提案されたアイディアが全て採用できるはずもありませんし、その必要もありません。それでも、思っていること(愚痴とか不満ではなく建設的な意見)を発表することで、人はある種の納得を得られるものです。

 女性は「悩みは聞いてもらうだけで軽くなる」と言うではないですか。あれと同じメカニズムです。人は、採用されなくても発表の場が持てるだけである種のモチベートになるのです。「よし、明日からも頑張ろう」と思えるのです。採用できないアイディアに対しては、「その発想は私にはなかった。貴重なアイディアをありがとう。すぐに実行は難しいが、すごく参考になった」と答えておけば充分です。

 どちらの目的も、達成するためには「活発な議論」が必要です。テーマを具体的に絞り、事前告知し、意見のないスタッフも容認し、トンチンカンな意見も否定しない…経営者は忍耐力が必要ですね。

 2013年度、新入社員を含めた全スタッフが、活き活きと前向きに業務に取り組むことを心から期待します。

 
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