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塾・新時代のマーケティング論(83)
指導者は最後まで「勝つ」と言うべし!

森智勝氏

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 2月も中盤、受験期もラストスパートの時期です。現場が最も緊張し、受験生の不安もピークになることでしょう。受験生には最後まで諦めることなく、挫けることなく、全力で受験に挑戦してほしいものです。最後まで挑戦を諦めなかった者には、その合否にかかわらず、必ず僥倖が待っています。

 努力を続けることで、目指す方向に大きく成長する瞬間をブレイク・ポイントと言います。子どもだけでなく、全ての人は小さなブレイク・ポイントを積み重ねて成長します。その先に「夢の実現」はあります。しかし、全ての人が夢を叶えられるかと言えば、そうではありません。夢を叶えることができるのは、ほんの一握りの「選ばれし者」だけです。ほとんどの夢は破れることを我々は知っています。しかし、それでも我々指導者は「努力を続ければ夢は叶う」と言い続けなければなりません。なぜなら、諦めずに努力を続けた者には別の僥倖が待っているからです。

 最近、富士山の噴火が心配されていますが、火山が噴火するとき、山頂の火口から溶岩が流出する場合だけでなく、山の中腹から溶岩が吹き出る場合があります。地下に溜まったマグマのエネルギーがその突破口を探し、最も地盤の弱いところに「道」を作ります。

 同様に、人のエネルギーも突破口を探して動く性質を持っています。限界まで努力した者は否応なく「自らの素質の限界」と直面します。多くの日本人アスリートが100m10秒の壁にぶつかり、挫折してきました。しかし、彼らが青春を賭けて続けてきた努力はけっして無駄になりません。限界まで行った者は、そのエネルギーが必ず別の世界への扉をこじ開けます。その扉をくぐることをブレイク・スルーと言います。

 甲子園球児のその後を追跡すると、管理職に就いている人の割合が実に高いという結果が得られたそうです。プロ野球選手を目指し、青春の全てを野球につぎ込んだ彼らは、立派にブレイク・スルーを果たし、社会に貢献する人物となっています。

 勉強だって同じです。最後まで挑戦を諦めなかった者には、その合否にかかわらず、必ず僥倖が待っています。

 志望校に不合格だった場合、頑張った子供ほどショックは大きく、「こんなことなら、あんなに勉強するんじゃなかった」と思うことさえあります。しかし、その後悔は必ず克服することができ、成長の糧にすることができます。ところが、精一杯の努力をしなかった者は、不合格の時も(表現は不適切かもしれませんが)ヘラヘラしています。あまりショックを受けません。しかし、彼は10年後、20年後…いえ、一生涯悔やみ続けることでしょう。「あのとき、もっと真剣に勉強していればよかった」と。

 後悔には2種類あります。「やった後悔」と「やらなかった後悔」です。前者はすぐに取り返すことができますが、後者は一生の悔いとなります。

 人はいつまでも「自分はやればできる人間だ」と思いたい動物です。「やればできると思える条件」はただ一つ…何もやらないことです。何もやらなければ、可能性だけは残ります。しかし、それでは何の成長も前進もありません。

 有名な例え話があります。

 ある国の兵士が王女様に恋をしました。思い切って告白すると、「これから1年間、毎日休まずに私の部屋の窓の下に立ち続けてくれたらあなたと結婚します」という手紙が届きます。兵士は狂喜し、雨の日も雪の日も窓の下に立ち続けます。そして、ついに明日が最後の日という前夜、彼の中に大きな不安と疑念が沸き起こります。

 「本当に王女様は約束を守ってくれるのだろうか。単なる気まぐれか冗談で言ったのではないか。もしかしたら、そんな約束さえ忘れているかもしれない。1年間立ち続けた自分を笑い者にするかもしれない…」

 悶々と眠れない夜を過ごした兵士は最後の日、窓の下に立つことをやめてしまったのです。

 あなたは、最後の日も立ち続ける勇気がありますか?もしかしたら残酷な結末が待っているかもしれないという恐怖に打ち克ち、それと向き合う覚悟がありますか?

 私事ですが、昨年末の深夜に岐阜県の某所から車で帰宅しようとしていた時のことです。初めての訪問地だったのでナビを設定し、ナビの指示通りに車を走らせていました。すると、やがて前後を走る車はおろか、民家の明かりもない林道を走っていました。そして突然、道幅が急に狭くなり、左は山肌、右は崖の峠道に出てしまったのです。最初は興味本位で真っ暗の中、ライトに照らされる狭い視界だけを頼りに車を進めていたのですが、ふと気になって携帯を取り出すと案の定、圏外です。突然、恐怖が襲ってきました。「ここで脱輪でもすれば、助けが呼べない」

 何とか道幅が少し広い場所を見つけ、何度も車を切り返してUターンしました。私は恐怖に勝てなかったのです。

 今、受験生は「残酷な結末の恐怖」と必死に戦っています。指導者である我々がそこから逃げることは許されません。塾人としての覚悟が問われる残り1ヶ月です。

負ける負けると思えば負け、
勝つ勝つと思えば勝つものなり。
負けると思いて勝ち、
勝つと思いて負けることもあれど、
人には勝つものと言い聞かすべし。

 「人たらしの名人」と評される秀吉の言葉です。単なる精神論や根性論ではなく、「負けると思って勝つこともあれば、勝つと思って負けることもある現実」をちゃんと認識しています。その上で、「人には勝つものと言うべし」という結論を導き出しています。

 「合否は本人の努力次第」なんて言っている指導者は失格です。「お前は絶対に合格する。俺が必ず合格させる」と言ってあげなければなりません。その方が生徒の不安が軽減され、不安が軽減された分モチベーションが上がり、合格する確率が高くなるからです。ぜひ、受験不安を感じている生徒に向かって最期まで言い続けてください。「お前は必ず合格する」と。

 
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