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塾・新時代のマーケティング論(82)
理念の浸透が感動創出の根源だ

森智勝氏

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 明けましておめでとうございます。今年も紙上でよろしくお付き合い下さい。

さて、先月号で戦略・戦術の中心には感動の創出がなければならないという話をしました。その続編です。本来、授業(商品)における「感動創出方法」から論じるべきなのですが、私の専門分野ではありませんので割愛します。

 マーケティングの分野、特に感動創出に欠かせない理念の貫徹について取り上げます。

「人はデジタルに感心はするが、感動はしない」

 何度も言い続けている原則です。裏を返せば、人はアナログに感動するのです。アナログとは「人」そのもの…極論すれば「あなた」そのものです。あなたの言葉、行動が相手を感動させなければなりません。そこで絶対に必要なのが理念・ミッションと呼ばれるものです。どの塾にも理念があります。例えば、「学力をもって社会に貢献する人材を育成する」とか、「子供たち一人ひとりの夢の実現をサポートする」とか…。内容は「あなた自身の内なる情熱」を言語化したものです。ただ、そのままでは単なるスローガンです。「お客様は神様です」と同じ。その理念を砕いて説明ができ、その理念に添った行動を徹底すること、それが重要です。

 例を1つ挙げます。

 大晦日の夕方、ローカル・ニュースで必ず流される「年末の風物詩」として「大手塾の年末・年始合宿特訓」があります。東海地方でも、私が確認できただけで3つの大手塾の合宿の様子が放映されました。それを見て、同世代の子供を持つ保護者は「ああ、年末・年始を返上して頑張っている子供たちが大勢いるんだなあ」と感動します。

 ところが、我が子が通っている塾は年末・年始は休みです。さて…その瞬間です。保護者の脳裏に一つの疑念が生まれます。

「あの塾は面倒見の良さを売り物にしているけれど、本当に面倒見が良いと言えるのかしら…?」

 そう、ほとんどの大手塾は年末年始も仕事をしていますが、たいていの中小・個人塾は年末年始を休んでいます。もし、近隣他塾が年末年始を休業しているのなら、「あなたの塾だけは年末年始も営業する選択肢」があってもいい。実に分かりやすい差別化です。

 私は「正月も営業すべきだ」と主張したいわけではありません。「休業するときも感動を与えなければならない」と言いたいのです。大手塾は若いスタッフが年末年始を返上して働く姿を見せることで感動を提供しています。それに負けないだけの感動を塾生に、保護者に、地域に提供しなければ勝てません。

 そこで必要なのが理論武装です。年末・年始を休む場合は、その理由を冬期講習のチラシで、秋の教育説明会で、入塾時面談で…ありとあらゆる機会に訴えることです。例えば次のように。

 確かに子供たちには勉強が必要です。しかし、学生である前に家族の一員でもあります。たとえ受験生だからと言って特別扱いしたり、家族としての役割を免除したりすることには断固反対します。勉学とは自らを鍛え、将来、社会の役に立つ人物になるための修業です。その勉学を理由に、人として、家族として為さねばならないことを免除するなどの特別扱いすることは、学業本来の趣旨から逸脱するものです。大晦日は家族と共に大掃除をし、一年を振り返る時間を持つ。正月は家族揃って雑煮を食べ、氏神様にお参りをする。実家の祖父母の家には挨拶に行く…そうした家族の一員として当たり前のことを当たり前にできる人であってほしい。二日や三日、勉強をしなかったからと言って、それが原因で志望校に落ちるような「やわな指導」を当塾はしていません。どうぞ、安心して年末年始の家族団らんを楽しんでください。

 こうした主張をしていると、年末・年始を休業しても「そうですよね」と共鳴(感動)してくれる保護者が集まってきます。なぜなら、それが塾の主張する教育理念に適った言動だからです。

 年末・年始に休業することが悪いのではありません。「それが当然のごとく休業すること」が悪いのです。「当たり前のこと」からは感動が生まれません。

 もう一度、原点に立ち帰って下さい。なぜ、塾人を目指したのか。塾人として何をしたかったのか。塾人としてできる社会貢献は何か。そうした思いを込めた「理念」「ミッション」を掲げるのです。そして全ての業務において、その理念を貫徹させなければなりません。「全てはお客様のために」と言いながら自社に有利な保険を売るように指示している保険会社は、消費者どころか自社の外交員の支持すら得られません。当然、業績は伸びません。塾の中にも「現場重視、塾生重視」を唱えながら、会議や報告業務に忙殺されて授業が疎かになっているところが少なくありません。

 ザ・リッツ・カールトンやジョンソン・エンド・ジョンソンが採用して有名になった「クレド」も同じ効果を持っています。リッツが素晴らしいのは、クレドを持っているからではなく、クレドを徹底する文化と仕組みを持っているからです。(例:クレドに即した朝礼、全従業員が持っている1日2,000ドルの決裁権等)そのために全ての従業員にクレドが浸透しています。「クレドに合うことはすべてやる、合わないことは一切やらない」という行動指針が明確になっています。何かあるたびに上司にお伺いを立てる必要もなくなります。

 「理念」「方針」「ミッション」「クレド」…呼び方は様々ですが、いずれにしても砂上の楼閣にせず、トップから末端まで浸透させる不断の取り組みが必要です。なぜなら、人はそうした企業に感動するからです。

 2012年、あなたにとって最上の年になりますように…

 
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