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塾・新時代のマーケティング論(64)
モチベーションを高めることは働きがいを高めること

森智勝氏

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 夏期講習を目前に控え、各塾では多忙な日々が続いていることでしょう。体調に留意して長い講習期間を乗り切って下さい。

 さて、夏期講習の受講生、特に受験生以外の生徒のモチベーション(学習意欲)を維持するのは難しいものです。塾関係者の中にも「夏休みくらい自由に過ごさせてあげてもいいのではないか」と考えている人がいて、それが生徒に伝播し、緊張感のない講習になってしまう傾向があります。

 私は以前、会員さんに次のような文章を例示しました。

よく「夏休みくらい勉強しなくてもいいじゃないか」という声を聞くが、
「夏休みに勉強しない方がいい理由」が分からない。
我々大人と違い、君たちは毎日成長している。
その歩みを止めていいはずがない。
いや、夏こそ本来の意味での勉強に最も適した季節だ。
勉強できる人になろう。
成績で人生は変わらないが、自ら努力できる人は、自らの人生を変える力を持つ。

 こんな檄文(げきぶん)をB紙に書いて、掲示板に貼っておきます。そのことによって、生徒はもちろん、指導スタッフにも緊張感を持って講習を実施してもらう工夫です。

 こうした「理論武装」は、口頭で伝えるだけでは効果が薄くなります。文字化することです。アファメーション効果と言いますが、人は文字化することで潜在意識に刺激を与え、そのような行動を取りやすくなります。よくドラマなどで、勉強部屋に「目指せ東大」という張り紙をしている場面を見ますが、あれは効果があることが知られています。同様に、受験生が「必勝」の鉢巻をして講習を受ける塾もあると思いますが、あれも意味のあることです。

 塾に限らず、企業経営者の役割は大きく分けて次の3つです。

① 企業の方向付け
② 資源の最適配分
③ 人を動かす(動機付け)

 有名な経営コンサルタントの一倉氏の言葉に「ダメな会社は、社長が部長の仕事をし、部長は課長の仕事をし、課長は平社員の仕事をしている。そして、平社員は会社の将来を憂えている」というのがありますが、塾業界にも当てはまります。中小塾の場合、プレイング・マネージャーも多いと思いますが、そこに没頭するあまり、本来の経営者の役割を疎かにすることは感心できません。また、管理することが経営者の役割と思っている人もいますが、それは文字通り管理職(部長・課長、塾の場合はエリア長・教室長)の仕事です。

 経営者の3つの役割のうち、①の「企業の方向付け」は「何をやって何をやらないか」という戦略を指します。その戦略に沿って②の「資源の最適配分」を考えます。(ここで言う資源とは主に予算と人事です。)よくあるパターンですが、例えば「今年は小学生を中心に集客しよう」という方向付けをしたとします。ところが、チラシを作る段になると、「中学生も高校生も増やしたいから…」と、結局、総花的な「ありきたりのチラシ」になってしまうことがあります。これでは当初の方向へと塾を導くことは難しい。そこには経営者の覚悟と決断が絶対的に必要です。

③の「人を動かす」に関しては、私のところに来る依頼、相談が最も多い分野です。曰く「うちのスタッフはやる気がない。どうすればモチベーションを高めることができるのでしょう。」

 残念なことに、人は「やる気を出せ!」と言って意欲的になる動物ではありません。それどころか、多くの場合は逆効果になります。子供に「勉強しなさい」と言うのと同じです。

 根本的方法は、上からと下からの両面で「説得と納得」の共感を作っていくことです。「上から」とは企業の理念・方針・ミッションを指します。どの塾でも「理念」を掲げていると思いますが、それが「お題目」になっていないでしょうか。経営者の掲げる理念は、経営者の情熱・信念を文字化したもののはずです。その意義と意味について絶えず語り、スタッフの共感を得る不断の活動が不可欠です。人は「パンのみに生きるにあらず」です。待遇を餌にしてもモチベーションは長続きしません。しかし、経営者の理念に共感して「共に生きたい」と願うスタッフは、常に高いモチベーションを維持するものです。人の思い・エネルギーは、確実に増幅しながら伝播します。

 「下から」とは、その理念を「小さな行動」に落とし込むことです。高尚な理念を掲げても、具体的な行動に表されなければ意味がありません。また、小さな行動が大きな理念につながっていなければ、スタッフが意欲的に取り組むことなど有り得ません。

 例えば、お客様からの電話を「会議中」を理由に取り次がない会社があります。企業理念には「顧客第一主義」と掲げているにも関わらず…です。本当にお客様のことを第一に考えるならば、こんな行動は出来ないはずです。つまり、理念が行動に落とし込まれていないのです。多くの企業が内部志向になっています。「上司に睨まれないように…」という社風を作ってしまうと、スタッフ全員が内向きの行動しかできなくなります。言うまでもないことですが、この世に「客」の存在を必要としないビジネスはありません。ところが組織が大きくなり、スタッフ(社員)の数が増えてくると、往々にして外部よりも内部を志向する風土が出来てしまいます。(その究極の組織が「お役所」でしょうか。)

 「顧客第一主義」を掲げる以上(これを謳わない企業があるとは思えませんが)、「電話はコール3回までに出る」「会議中だろうが社長面談中だろうが、お客様からの電話は取り次ぐ」のは当然の帰結です。

 こうした「小さな行動」に一貫性があり、意味のあることならば、スタッフが高いモチベーションを維持することにつながります。モチベーションの低い職場の口癖は、「こんなことに何の意味があるのだろう」です。(そうした職場では多くの場合、「会議」を最も意味のないものと考えています。意味のある会議を実践して下さい。)

 冒頭に例示した檄文も、生徒を動かすと同時にスタッフ(教師・講師)をも動かす工夫の一つです。こうした理論武装は小さな行動に意味付けする…つまり動機付けの基本です。そして、それは経営者の重要な役割でもあるのです。まさか、あなたの口癖は「言われたことはゴチャゴチャ言わずに黙ってやれ!」ではないですよね。

 モチベーションを高めることは、「働きがい」を高めることです。そして、「働きがい」とは仕事に意義と意味を見出すことに他なりません。それは、経営者たる「あなた」の仕事です。

 
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