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塾・新時代のマーケティング論(62)
マーケティング的マネジメントⅢ

森智勝氏

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 先月号まで「マーケティング的マネジメント」についてお話してきました。今回が最終章です。基本的には「教室長」レベルの塾人を対象にしてきました。個人塾の経営者は、経営者であり、教室長であり…そして現場の教師も兼ねていると考えて下さい。個人塾だからマネジメントは必要ないというのは間違いです。一人でも社員、アルバイトを雇っている場合、マネジメントは必要です。また、生徒・保護者のマネジメントも理屈は同じです。

 マーケティングの基本は次のサイクルを確立することです。[①見込み客を集める⇒②見込み客を顧客にする⇒③顧客を上客にする⇒④上客から紹介客を募る]

 そして、それぞれのステージに適した戦略と戦術を講じていきます。先月号でお伝えした「理念の落とし込み」は①の「見込み客を集める」に当たります。まずは、あなた(リーダー)の回りに部下(スタッフ)が集まってこなければ、組織は構成できません。

 次に必要なことは②の[見込み客を顧客にする]ですが、マネジメントで言うと、あなた(リーダー)を信頼してもらうことに当たります。部下の信頼を得るために絶対に必要なことはリーダーシップです。リーダーシップとは、「組織の上に立ち、組織全体のモチベーションを高めること」です。以前もお話しましたが、日本人はリーダーに就任すると「縁の下の力持ちとして…」と、組織の下に潜ろうとします。ところが人は、自分より下に存在する人を尊敬することはありません。また、「前任者の方針を継承し…」と、他者依存の方針を打ち出す人も多いものです。これも、言っていることは前例主義であり、こうした所信表明をする人物を尊敬することもありません。

 ただ、誤解してほしくないのは、リーダーシップと聞くと強権高圧的なワンマン・リーダーを想像しますが、全く違います。もし、信長的な人物しかリーダーになれないとしたら、秀吉も家康も不適任者ということになります。リーダーに適した資質があるのではなく、資質に合わせたリーダー像があるのです。「あなた」に合ったリーダーシップの発揮の仕方が必ずあります。「俺について来い!」的なリーダーの方が分かり易いというだけで、それが尊敬につながるわけではありません。

 以前もお話したことがありますが、私の同級生は総務部に配属されてから毎日、朝の6時に出社しています。それは総務部長に抜擢された今でも続いています。そのことで回りの尊敬を勝ち取ったのです。回りの人に認めさせ、尊敬を勝ち取る方策は様々です。あなたに合った方策を実践して下さい。

 もう1つ、重要なことがあります。見込み客が顧客になる決断をするときの鍵は「期待感」です。顧客になる前…つまり商品を購入する前は、本当の商品の価値は分かりません。当たり前のことですが、料理は食べてみて初めて美味しさを実感できます。同様に、リーダーも最初は期待感を回りに与えることが重要です。「この人になら任せても大丈夫かな?」と思わせることです。「とりあえず、この人の指示通りに行動してみよう」と思わせることです。そこに必要なのが理論武装です。

 下関で採れた天然のブリを、この道30年の職人が丁寧に料理をした…これです。この理論武装があって初めて、「騙されたと思って食べてみな!」というマスタービジネスは成立します。あなたが組織をリードする時、この理論武装は不可欠です。具体的には経営計画書、行動計画書といった形を採ることが多いと思いますが、そこに示される目的・目標、そして、それをクリアするための行動目標が「腑に落ちる状態」で提示されていることが重要なのです。少なくとも、「根性」「熱意」「死に物狂い」等々の精神論だけでは回りを納得させることはできません。

 リーダーになると、途方もなく高い目標を掲げることがあります。「目標は高ければ高いほど良い」と言って。しかし、高すぎる目標は、部下を10メートルの壁の前に立たせるようなものです。届かないことが明らかな場合、誰も跳躍しようとはしません。もし、壁の高さが3メートル程度ならどうでしょう。「もしかしたら届くかもしれない」と思った人はチャレンジを始めます。あと少しで届きそうな時、助走の距離、速さを工夫して何度もトライすることでしょう。そうした中で、ある時、手が壁の頂上に届くのです。なぜか。

 何度も跳躍しているうちに脚力が向上するからです。

 ビジネスも同じです。部下がトライをしてみようと思う理論武装がなければ行動に移すこともなく、脚力が増すこともなく、組織力が伸びることもありません。あなたの出す指示に理論武装をまとわせてください。

 さて、顧客を上客にするのは結果が全てです。騙されて食べた人が「ああ、騙されて良かった」と実感した時、その客は上客になります。同様に、あなたに期待して、あなたを信じて行動した部下達が、「ああ、リーダーを信じて行動してきて良かった!」と思えば成功です。つまり、結果を出すことです。もちろん、最初に立てた目標を達成することは理想ですが、達成できなかった場合でも「結果を出すこと」は可能です。甲子園の決勝で敗れた選手達が泣きながら、「3年間、監督に付いて来て良かった」と語る場面を記憶している方も多いと思います。商品が期待外れではダメですが、マネジメントは目標が達成できなかった時でも「結果を出すこと」は可能です。重要なのは、構成員全てが「やり切った充実感」を持てるかどうかです。私は「ブレイク・ポイントは限界まで行った人にだけ、(多くの場合)挫折感と共にやって来る」と考えています。ただし…

 これも日本人に多い傾向ですが、結果が出る前から「一生懸命やれば結果は2の次、結果より過程が大事」と公言する人がいます。言っていることは正しいのですが、それを前提にしてしまうと、人は限界まで行動することを辞めてしまいます。リーダーは最後の最後まで諦めない姿勢を見せ続けることが重要です。長島監督は自ら「国民的行事」と呼んだ中日とのリーグ優勝を決める最終戦の試合前、選手全員に向かって「俺達は勝つ!勝つ!勝つ!」と叫んだことは有名です。リーダーの言葉は重い。絶対に「結果はどうでもよい」とは言ってはいけません。

 最後の④「上客から紹介客を募る」はマネジメント的に言うとどうなるでしょう。例えば、新しい重要部署が作られたとき、より上級のポスト(地区長、地域統括部長等)に誰かを任命しなければならない時、その責任者に「あなたの名前」が自然発生的に挙がることです。部下からも上司からも。つまり、評判を作ることです。(「口コミ」は何でもいいので話題にしてもらうこと、「評判」は文字通り評価に関する話をしてもらうことです。)これは一朝一夕には作ることが出来ません。あなたのリーダーとしての不断の行為が作り出します。絶対に諦めないことです。あなたのブレイク・ポイントは、やはり、あなたが限界まで行ったその先に待ち構えています。その時、あなたは塾(会社)にとってなくてはならない存在になっていることでしょう。

 
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