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塾・新時代のマーケティング論(54)
退塾伝染病が流行り始める頃②

森智勝氏

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 前回に引き続き、退塾伝染病の話をします。重要なことはウイルスを入れないことですが、それだけで万全かと言えば、そうではありません。ウイルスはいつでもどこでも発生し、増殖を始めます。

 例えは悪いですが、我々の体の中では常に癌細胞が作られているらしい。それを免疫力の力で常に退治しているので、表面上は発症しないでいられる。何かの原因で、この「癌細胞退治免疫力」が衰え、癌細胞の増殖を抑えられなくなった時、癌を発症する…似ています。

 常にクラスの中で増殖しようとする退塾ウイルスを、常に退治する免疫力を送り込むことです。誰が?そう、「あなた」が…です。

 もう一度、エネルギー伝播の法則を思い出してください。人のエネルギーは正のエネルギーも負のエネルギーも伝播します。それも増幅しながら。もし、クラス(塾)の中に負のエネルギーが存在するのなら、それを上回る、打ち消すだけの正のエネルギーを放出すればいいのです。

 だから…授業の冒頭は元気な声で「さあ、今日も頑張ってやるぞ!みんな、1週間元気だったか~!」と迫力満点に始めなければならないのです。

 学生時代を思い出してください。チャイムが鳴って5分以上も遅れて教室に入り、気だるそうに授業を始める学校の先生っていましたよね。見るからにやる気のない。「でもしか先生」と呼ばれていた教師が。生徒も憂鬱そうに授業を受け、時計の針が進むのだけをじっと耐えて待っている…そんな光景が塾で展開されているとすれば、そんな塾は遠からず市場から退場を余儀なくされるのは当然として、それまで塾に通っている生徒が不幸です。今すぐ、さっさと身を引きなさいと言いたいですね。

 とにかく、プラスのエネルギー満載の授業を展開することです。ここでも勘違いして欲しくないのは、めたらやったらと騒がしい授業が理想ではありません。たとえ静かな口調でも、真剣味のある講義で生徒の集中力を引き出す授業も存在します。

 要は、いかに教師側が授業に対して全身全霊を込めて取り組むか、ということです。行き当たりばったり、その場しのぎの授業ではダメだということです。多少下手でも(凄く下手は困りますが)教師が真剣ならば、そのエネルギーを生徒は確実にキャッチし、ミラー現象を起こし、真剣に授業に取り組むものです。そうした授業は時が過ぎるのを忘れさせ、終了後には充実感を伴った心地良い疲労感をもたらします。

 もう一つ、授業とは別の角度から注意しなければならないことがあります。以前もお話したことですが、ある大手塾の調査によると、退塾理由の一番は「成績が上がらなかったから」を押さえて「塾(先生)が約束を守らなかったから」だったそうです。

 教師は様々な場面で生徒と約束をしています。教師にとっては取るに足らないことでも、生徒にとっては重い約束もあります。例えば…

「よし、今度、計算のプリントを作って持ってきてあげるね」と約束したとしましょう。ところが、「うっかり」次の授業の時に忘れてしまいます。生徒に「先生、計算のプリントは?」と請求されて、「あっ、悪い、悪い。帰りに事務所まで取りに来て。」…教師にとってはたいしたことではないかもしれませんが、この生徒はどう思うでしょう。

 …自分のことは軽んじられている

 そのことを伝え聞いた保護者はどう思うでしょう。

 …自分の娘は軽んじられている

 こうした小さなことの積み重ねが積もり積もって限界値を超え、退塾に至るのです。別れた夫婦が理由を聞かれても「いろいろなことが有り過ぎて…」と、「コレ」といった理由を挙げられないことがありますよね。あれと同じです。。

 小さな約束ほど絶対に守らなければならないのです。

 さて、それでも退塾者が発生したらどうするか。もう、現象化してしまったのですから、最悪を防ぐ対処療法しかありません。よくあるパターンとして、退塾した生徒と仲の良かった生徒が芋づる式に?退塾していくことがあります。「あなた」も一番に心配するのは「そこ」ではないでしょうか。

 私は、正直に謝罪とお願いをするのが一番良いと考えています。例えば、その生徒(退塾者の友人)に対して次のように話してみます。

「君と仲の良かった○○君が退塾することになった。○○君の学力向上のために何とか頑張ったのだけれど、私の力不足だった。せっかく二人で楽しく通塾していたのに誠に申し訳ない。でも、君は入塾以来、学年順位も△位ほど上がっているのを見ても、ウチの塾の指導が合っているようだ。私も今まで以上に良い授業をするので、君もちょっと淋しいだろうが頑張ってくれ。」

 本来、友情と塾(勉強)は別物で、友達が退塾したから一緒に辞めるというのは、(冷たい言い方ですが)それだけ塾に力がなかったということです。「付き合い退塾」が発生した場合は謙虚に反省材料としましょう。

 そして、最後に一つ。これは昔から言っていることですが、退塾者の家庭に手書きの侘び状を送ることです。目的は…口止めです。

 退塾者はその原因が何であれ、たとえ自分の不始末が原因でも、絶対に良い評判は広めません。言うとしたら悪い評判です。

 どんな退塾理由でも「退塾に至ったのは私の力不足です。申し訳ありません。○○君には心機一転、頑張って欲しいと思います。」という趣旨の手紙を送ることによって、保護者に「この塾も精一杯の対応はしてもらったよね」と思ってもらうことです。それで、多少なりとも悪い評判を防ぐことができれば御の字です。まあ、「ダメ元」のつもりで実行しましょう。

 以前、塾業界が右肩上がりの拡大発展時代は、多少の退塾者が出ても、それを上回る入塾者がいましたので、そんなに気に病むことはありませんでした。しかし、少子化、縮小均衡の今は、一人も途中退塾者を出さない覚悟と対応が必要です。

 今は、「あなたの塾も素晴らしいけれど、隣の塾も素晴らしい」時代です。また、その素晴らしい隣の塾が結構近くに存在したりします。退塾を躊躇させるファクターが希薄になっています。また、高校受験がニーズ圧力としては虚弱化している時代背景もそれを後押ししています。今一度、退塾防止のための策を見直してください。それも、戦略構築の重要なテーマです。

 
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