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塾・新時代のマーケティング論(51)
危機管理「悲観的に考えて楽観的に行動する」

森智勝氏

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新型インフルエンザが日本にも上陸し、特に関西地方を中心にパニック状態になりました。今回のことを教訓として危機管理について考えてみたいと思います。
さて、この大騒動について「過剰反応だ」という批判がありますが、結果論で批判するのは避けたいところです。予想外に被害が少なかったから言える話です。まあ、恐れていたH5型の鳥インフルエンザ発生時の予行演習になったと思いましょう。そう、問題は致死率70%とも言われているH5型が日本に侵入したとき、あるいは新型が突然変異を起こして猛毒性に変貌したときの危機管理が各塾に備わっているかということです。
これまで何度もお話していることですが、我々日本人は言霊思想(言葉にしたことは現実のものになるという信仰)で生きています。今でも結婚式で「切れる」「別れる」はご法度ですし、友人が海外旅行に行くとき、冗談でも「昨日、細木数子が飛行機が落ちると予言していたぞ」とは言いません。万が一、そんなことを言って本当に墜落事故が起こったとしたら、「俺があんなことを言ったばかりに…」と自己を責めてしまいます。本来、言葉にしたことと事故との間には何の因果関係もないのですが、我々日本人はそう感じてしまうのです。そのため、「悪い想定」をすることが苦手です。悪いことを想定すると、それが現実に起こってしまうと考えるからです。それが、日本人の危機管理の甘さを生んでいます。
本来、危機管理とは最悪を想定して準備しておくことが常識です。私が言う「悲観的に考えて楽観的に行動すること」です。ところが、日本人は逆をやってしまいます。「楽観的に考えて悲観的に行動する傾向」が強いのです。「新型インフルエンザは日本には来ないだろう」と楽観的に考えて(つまり、何の対策も考えず)、実際に上陸すると「わあ、もうダメだ。とりあえず塾は閉鎖するけれど長引くと倒産してしまう…」と悲観的に行動してしまう。経営者としては逆の発想をすべきです。最悪を(悲観的に)考えて、実行するときには楽観的に行動することです。
考えるべきことは山ほどあります。今、塾経営者の「あなた」には究極の危機管理が求められています。地域に新型インフルエンザ(H5型)が発生したときの対応策を早急に立て、社員や顧客に通知(宣言)することです。突然のことにパニックになる塾と、事前に「万が一、発生したときには弊社はこう対応します」と伝える塾とでは信頼感が違います。
以前、塾の現場で臨時講師が塾生を殺害するという痛ましい事件がありました。その時も、他人事と見過ごしていた塾と「当塾の講師採用と事故(事件)防止策」をすぐに発表した塾とでは、その後の集客に大きく差が付いたことは記憶に新しい。これは、全ての場面で言えることですが、顧客に対して事前に行動計画を伝えることは最大のマーケティングです。それは、店(企業)の信頼感を売ることになります。
私塾界本誌によると、すでに5月7日に成学社・太田代表の呼び掛けによる「インフルエンザ緊急協議会」が関西地方では行われました。そうした事前の準備が、その1週間後に実際に関西地方で発生した新型インフルエンザ・パニックにも冷静に対応できた要因でしょう。また、ティエラコム主催「パンデミックセミナー」が全国6会場で緊急開催されます。ぜひ、こうした機会を利用して自塾の対応策を練って下さい。
 ことは新型インフルエンザだけに限りません。例えば、担当講師が何らかの理由で突然退職することは塾の現場で往々にして起こることです。そうした時、「不慮の事態だから仕方がない」と新人講師を当てて繕っていると、確実に顧客満足度は下がります。突然の講師変更の時ほど最高レベルの人材を投入する必要があります。年度途中における講師変更というマイナス点を補う対応が求められるからです。要は、そうした準備が社内(塾内)に備わっているかという問題です。多くの塾経営者は「年度途中で辞める講師はいないだろう」と楽観的に考え、実際にそうした事態になると「何て無責任な奴だ。あいつのせいで大変なことになった」と非難するだけに終わってしまいます。顧客に対して「塾の都合を押付けている」という意識が希薄です。やはり、最悪を想定した事前準備は不可欠です。
 資金繰りについても同様のことが言えます。塾という経営形態は、「授業料は前受け、経費は後払い」という他業種から見れば垂涎の業種です。それだけに資金ショートの危機に気付きにくいという性質を持っています。「この業者の支払いは待ってもらって、夏期講習の受講料が入ったら支払いをしよう」と楽観的に考える経営者が多いのも事実です。しかし、現在のような不況期に「オプション商品」が例年通りに売れる保証はありません。実際、私が主催する経営セミナーでも、セミナーそのものへの参加者数は変わらないのに、懇親会への申込みが激減(例年の半分以下)しています。「何とかなる」という根拠のない楽観主義は慎みたいものです。
 すでに多くの塾が夏期講習の募集を開始していますが、「去年と同じことをやれば、去年と同じ売上が確保できる」という楽観主義は捨てるべきです。悲観的に考えた対策を是非、今から講じて下さい。特に外部生の獲得は例年以上に悪くなると想定したほうが無難です。
 悲観的に考えて、楽観的に行動する…その態度を貫ける塾が生き残り、勝ち残りを実現できるのです。

 
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