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塾・新時代のマーケティング論(46)
今こそ経営者は戦う姿勢を見せる時!

森智勝氏

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 明けましておめでとうございます。今年も本紙面を通してのお付き合いをよろしくお願いします。
 100年に1度の大不況?の中、2009年が明けました。先行きが見えない時代と言われて久しいのですが、本当に先が見えなくなりました。
 もともと、年功序列・終身雇用の時代、いわゆる総中流社会では文字通り「先が見える」時代でした。回りを見渡せば、10年後の自分、20年後の自分がそこにいました。また、西洋に追いつけ・追い越せを目指していた頃は、アメリカを見れば10年後、20年後の日本が予測できました。
 そう、先が見えていたのです。
 そのころはビジネスも先が見えていました。これだけの資本を投下して、この商品を作ればこれくらいの売上と利益が見込める…と、誰もが予測できたものです。
 いわゆる「資本の論理」が生きていました。
 塾で言うと、この地域に教室を出し、チラシを○万枚撒けば□人の入塾者が見込めると計算できたものです。
 ところが、数年前から(実はバブル経済崩壊後から徐々に)その方程式が狂い始めました。チラシの反応率は悪化の一途を辿り、1万枚まいても電話の一本も鳴らないということが普通に起こるようになりました。私は数年前から「感情の論理」を提唱し、人の感情にフォーカスしたマーケティングをおススメしていますが、どれだけ社会の仕組み、経済の仕組みが変わっても人の感情はそんなに大きくは変わらないと考えたからです。ましてや「教育産業」という究極のアナログ、普遍的なビジネスにおいては客の感情を無視したビジネスは成立しないはずです。
 教育産業は最も川下に存在するビジネスなので、不況の影響を最も受けにくい業種と言われてきました。しかし、今回の世界的大不況は津波のように塾業界にも襲い掛かり、ここ数年の成績中間層の塾離れと相まって強烈な逆風となっています。
 こうした状況下では2つの対策が考えられます。
 一つは不況下におけるビジネスの常道です。つまり、不況下では利益確保よりも顧客確保に徹することです。顧客数を確保して、必ずやってくるであろう好況時期に備えるわけです。そのためには価格戦略が不可欠です。
以前もお話したことがあるのですが、商品の価格帯には2つの基準値があります。これ以上価格を上げると客離れが起こる価格を「プレミア価格」と呼び、利益が最大になる「価格値」です。それに対して、これ以上価格を下げると商品価値に不安を持たれる価格を「バリュー価格」と呼び、顧客数が最大になる「価格値」です。このバリュー価格に設定することで、最大の顧客数を実現します。すでにいくつかの大手塾では戦略の実行に着手しているのはご存知の通りです。言ってみれば、ビジネスの王道です。ただし、この戦略が成功するのはランチェスター経営で言うところの「強者」、一握りの地域トップ企業に限られます。体力のない「弱者」が安易に採用することは絶対に避けるべきです。
では、それ以外の塾が採るべきもう一つの戦略は何か?
20年前、バブル経済崩壊後の小売業で躍進したのは「100円ショップ」と「ブランド店」です。100円ショップが伸びたのは容易に理解できますが、実はブランド店もあの時期に躍進しました。今では多くの専門店が各地に進出しています。本来、バブル崩壊と共に衰退してもおかしくない高額商品が売れ続けたのはなぜでしょう。それは、消費者が「高い、でも…」と思えるだけの価値を提供していたからです。不況下では消費者の費用対効果を意識する度合いが高くなります。無駄なものにはお金を遣いたくないと思うのは当然なことです。逆説的に言うと、その心理はより本物志向へと向かうということです。100円ショップが伸びたのも、「安かろう、悪かろう」の常識を覆して、「100円なのにこの品質!」と思わせる商品を提供したところに原因があります。それはユニクロの発展にも言えることです。
つまり、商品価格に関わらず、本物を提供することで消費者の支持を得ることが絶対条件なのです。
「強者」が100円ショップ戦略(常道)を採用するのなら、弱者はブランド店戦略を行くべきです。いかに商品の付加価値を高め、消費者の圧倒的な購買意欲を喚起するか…。鍵は希少性です。独自性と言い換えても良いでしょう。「そこでしか入手できない商品」をいかに開発し、提供できるかです。本誌上でも何度もお話していますが、もう、どこにでもある補習塾のままでは通用しません。その路線を行くのであれば、「どこにもない補習塾」にまでクオリティを高める必要があるのです。
現場の当事者にとっては死活問題だということは重々承知の上で言うのですが、不況は悪いことばかりでもありません。内部に目を向け、より強固な体質を構築するチャンスと捉えることもできます。そのことで市場に対してより良い学習環境を業界全体として提供することができるならば、それは社会貢献にもつながり、社会の発展に寄与することにもつながります。
あなたの塾をブランド化することです。保護者に「高い、でも…」と言ってもらえるだけのクオリティを実現することです。当然、困難や苦労は付きものです。しかし、それに成功したとき、あなたの塾は文字通り地域になくてはならない塾として確固たる存在感を持つことになるでしょう。
我が子が「いじめ」に遭っているとき、安易に転校等の「逃げ」を選択するのは間違っています。親が前面に出て戦う姿勢を見せなければなりません。そのことで、子供は「守られている」という実感を得られます。今こそ、あなたの経営者としての真価が問われています。どんな戦略であれ、戦う姿勢を見せることです。全ての従業員・スタッフが、あなたの背中を見ているのです。

 
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