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塾・新時代のマーケティング論(45)
今の金融不況下こそ塾業界のチャンスと捉えよう

森智勝氏

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 先日、本誌を発行している全国私塾情報センター主催のプレミアムセミナー&レセプションパーティーに参加してきました。塾関係者約150名が一同に集まる盛大な会でした。この速報をお読みの私塾界正会員の方は無料ご招待なので、是非、参加されることをおススメします。前向きなエネルギーの充満している「場」を求めることは重要です。欧米では成功の秘訣を「成功者の集まりに参加すること」というのが定説になっています。自らのモチベーションを高めるには最適の機会です。

 さて、アメリカ発の金融危機が日本の実体経済にも大きな影響を与え、麻生総理の言葉を借りれば「100年に一度の大不況」が始まったようです。「不況に強い教育産業」という神話も崩れ、成績中間層の塾離れと相まって塾業界は大きな転換期を迎えようとしています。しかし「ピンチはチャンス」という言葉もある通り、この金融不況は捉えようによっては塾業界のチャンスかもしれません。
 私は市場に対して次のようなメッセージを発し、地域を啓蒙する大きなチャンスだと考えています。
 「お父さん、お母さん、株や証券という『紙切れ』に投資をするよりも、お子さんに投資をした方がはるかに有益で高い付加価値を生み出しますよ」と。
 ビジネスの基本は付加価値(社会貢献)とお金の交換です。本来、経済活動によって利益を上げるということは、それだけの付加価値を社会に提供することが前提です。誰かが富を得る場合、それを上回る付加価値が社会に提供され、市場は拡大します。それはインフラの整備・拡充として、住民生活の向上として、それをベースとする需要の増大として顕在化します。そして、それはそのまま社会の発展を実現することにつながります。
 ところが、昨今の金融市場はその膨張具合が社会の発展とはあまりにも乖離していました。象徴的な例としては、ジェイコブ株の誤発注により数分間に20億円以上の利益を上げて有名になった当時20代の「若きデイトレーダー君」がいます。とあるドキュメントに登場した彼は、一日の作業(株の売買)を終えてカメラに向かい、「今日は4億の利益がありました」と言い放ちましたが、彼が4億円分の付加価値を社会に提供しているとは思えません。
 本来の株式市場とは、資金を有する者が能力と行動力のある者に投資し、自らの代わりに付加価値を生み出してもらい、その対価の一部を配当という形で還元してもらうことが基本です。その付加価値の創造を無視した「投資」はいつか破綻するのは自明の理です。バブル景気に踊った日本人は、高い授業料を払ってそのことを学んだはずです。
 付加価値を作り出すもの…それは「人」というアナログの存在です。そこに投資をすることが最も確実で、そして最もリターンが大きいのです。機械は決められた速さで決められた量の製品しか作り出すことしかできませんが、人は時として人類全体を救う付加価値を生み出すこともあるのです。
 教育は長い期間を経なければ実際の効果を計ることができないため、ややもすると軽んじられる傾向にあります。企業でも業績不振に陥ると真っ先に「人」を削り、研修費を削ります。しかし、そのことが企業体質を悪化さ、企業そのものを衰退させてしまいます。
 我々塾人がオピニオンリーダーとして地域を啓蒙することは、新たな需要を掘り起こす作業でもあります。今の時代だからこそ教育の必要性と有効性を説き、真に必要な教育の形を提示し、多くの共感をネットワーク化することで安定的に拡大する「見込み客」を作り続けることです。それにはこれまでもしばしば主張してきたマスター・ビジネスへの転換が急務です。実際、これまで拡大を続けてきた塾は、市場を大きく揺さぶる確固たる理念、教育に対する信念を有しているものです。
 幼児が砂場で山を作るときの様子を思い出してください。高い山を作るために、盛り上げた山の頂点を何度も叩き、結果として裾野を大きくする作業を繰り返します。「逆も真なり」です。高い旗を掲げれば掲げるほど、裾野は広くなっていきます。つまり、経営者たる「あなた」の掲げる御旗の高さが見込み客の広がりを決定するのです。
今の社会情勢だからこそ、経営者たる「あなた」の主義・主張が求められています。

 さて、間もなく冬期講習が始まります。多くの塾が冬期講習を来春に向けた「0次募集」と位置付けていることでしょう。安価な料金設定により多くの外部生を獲得することを目指す塾が増えています。確かに、多くの外部生を講習に取り込むことは重要ですが、それは諸刃の剣でもあります。「安かろう、悪かろう」の講習を実施してしまうと、受講生が多ければ多いほど、悪い評判を速く広く伝えることになってしまいます。安価なフロント商品ほど高い付加価値を提供しなければなりません。再春館製薬が成功したのは、「無料お試しセット」に高い付加価値を備えたためです。気軽に注文した「見込み客」に「無料なのに、こんな豪華なセットをもらえるのか…」と思わせたところに成功の鍵があります。バブル経済崩壊後に「100円ショップ」が隆盛を誇ったのも「100円なのにこの品質…」と消費者を感動させたことが最大の要因です。要は、費用の高低に関わらず、「本物」を提供することです。
 価格ダンピングの最も大きな弊害は、現場担当者のモチベーションが落ちることです。現場の教務担当者のモチベーションが低下したのでは本末転倒です。講習、特に短期で実施される冬期講習は、教師の熱い思いが伝わらなければ成功とは言えません。ここで最大のエネルギーを傾注し、塾生の魂に火をつけ、入試本番に、そして、春期募集へと塾全体が燃えたまま突入しなければなりません。
 これから冬期講習までの短い期間に講習内容の変更は難しい。しかし、担当教師のモチベーションを上げる方策なら実施可能なはずです。例えば、「緊急決起集会」なるものを講習前に開催して担当教師の心に火をつけることはできます。
 そう、生徒の心に火をつけるのが教師の役目ならば、その教師の心に火をつけることが塾経営者の大きな仕事です。「あなた」が今、内蔵しているエネルギーのすべてを現場教師に注いで下さい。

 
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