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塾・新時代のマーケティング論(44)
組織の一体感は目標と目的の明確化から

森智勝氏

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 以下は私も学んでいる会議コンサルタントの宇井先生から送られてきたコラムの抜粋です。

 (前略)日本チームの監督に、星野仙一氏等の名前が挙がったとき、イチローがこんな発言をしました。「大切なのは足並みをそろえること。(惨敗の)北京の流れから(WBCを)リベンジの場と捉えている空気があるとしたら、チームが足並みをそろえることなど不可能」イチローは、選手もコーチも監督も、その他の関係者も全ての人たちの足並みをそろえることの大切さを訴えたのです。常々、イチローは、こうも話しているそうです。「個性を持った実力のある選手で構成される代表チームが一つにまとまるには、現場と選手の一体感が何より重要」。

 もし、日本チームにとって、北京のリベンジをWBCの「目指すところ」にしてしまったら、北京に参加していないイチロー他メジャーの選手たちには、関係のないことになってしまいます。チームとして、足並みをそろえ、ひとつにまとまることができなくなってしまいます。そうです、イチローは知っているのです。強いチーム(組織)に必要なのは、「一体感の高さ」だということを。

 では、一体感を高めるためにはどうしたらいいのでしょうか?

 先ほどのイチローの発言からも分かる通り、ズバリ、チーム(組織)のメンバー全員が共感できる目的を持つことです。チーム(組織)のメンバーが、本当に目指したいと思える、ワクワクするような目的を明確にすることです。イチロー曰く、優勝した2006年の第1回大会では、「王監督に恥をかかせるわけにはいかない。何があってもやってやるという気持ちになっていた」ということらしいです。

 尊敬する王さんに恥をかかせられない。世界の王さんを世界一の監督にする。

 これこそが、前回大会の日本チームの一体感を高め、チームとして一つにまとめさせることができた「目的」なのです。「北京のリベンジをする」が目的では、チームの一体感を高めることができない、ひとつにまとめることができないのです。

 目的は目標とは違います。目的とは目標のその先にある未来の姿です。

 前回のWBCでいえば、優勝することが目標であり、優勝することで王さんを世界一の監督にするが目的だったと言えるでしょう。つまり、目的とは、「なぜ、この目標を達成するのか?達成したいのか?」に答えるものです。

 「なぜ、WBCで優勝をするのか?」「それは、王さんに恥をかかせないため、王さんを世界一の監督にするため」ということになります。そして、大切なのはチームを一つの気持ちにして、一体感を高める力がなければならないということです。クライアント先の企業で、私はこう質問することがあります。

 「今年の売上目標は○○万円なんですね。なぜ、○○万円なんですか?」と。すると営業課長さん、営業部長さんあたりからは、こんな答えが返ってくることが多いです。「損益分岐点がいくらいくらなんです。自分たちの人件費ぐらいは超えたいという気持ちを持ってもらいたいですし…」

 確かにおっしゃるとおりでしょう。確かに、その目標にした理由には答えているでしょう。しかし、そこにチームの一体感を高める力があるかというと、かなり怪しいのではないでしょうか?メンバーが本当に目指したいものが、損益分岐点を超えて、自分の人件費を賄うこととは思えませんよね。これが目的だと言われても、あまりワクワクしてきません。ちなみに、北京オリンピックで金メダルを取った女子ソフトボールは、北京で金メダルと獲る目的を、「子供たちにソフトボールの楽しさを伝えること」としていたそうです。

 昨今、アメリカの企業を中心にして「エンゲージメント」という言葉がよく使われるようになってきたそうです。日本でも少しずつ言われ始めています。エンゲージメントとは、「組織の一体感」ということです。

 組織の一体感の高さが業績に反映するというのです。日本の企業の強さは、もともとこの組織としての一体感にあった気がします。しかし、日本でも言われ始めているとしたら、その一体感が失われてしまっている危機感があるのかもしれません。(後略)

 いかがでしょう…塾も同じですね。その売上目標が「採算分岐点」という味気ない数字を基礎に作られているとしたら、スタッフの一体感は生まれず、働くモチベーションも上がりません。この時期、冬期講習の「売上目標」「外部生獲得目標」等が会議で提出されることと思いますが、是非、そこにスタッフの一体感、モチベーションを向上させる「物語」を付加してほしいものです。

 塾経営においては、組織としての一体感はもちろん、私はもう一歩踏み込んで、「客も巻き込んだ一体感」を理想としています。そのために「フレンドシップ・マーケティング」を提唱しています。母親が「この塾は私が助けてあげなければダメなんだから」と思い、塾生たちが「仕方がない。先生に恥を掻かせるわけにはいかないから頑張ろうか!」と思える塾運営を目指すことです。もちろん、学習指導に関しては高いリーダーシップを保ち、マスタービジネスを展開する必要があります。それは、譲ることの出来ないコアの部分です。しかし、その周辺部分においては「客の協力も得る」という柔軟さが必要です。つまり、地域にとって「なくてはならない塾」になることを目指すのです。地域密着とは、近隣の子供たちしか通わない塾のことではなく、地域の人から「なくなっては困る」と思われる塾になることです。

 前回のテストで、平均点10点アップさせた子供たちの心根に「好きな先生のために…」という思いがあったことを私は信じて疑いません。そして、そうしたコミュニティを一人ひとりと作り上げていくことが地域密着につながるのです。

 現在のような高度情報社会においては「何を伝えるか」よりも「誰がどうやって伝えるか」の方が重要になってきます。「あなた」はどうやって地域のコミュニティを形成していきますか?

 
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