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新時代のマーケティング論(31)
ドラマに学ぶ「おもてなしの心」 2007年10月私塾界掲載分

森智勝氏

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NHK朝の連続テレビ小説「どんど晴れ」が終了しました。私は毎朝欠かさず見ていましたので、ちょと残念です。ドラマのテーマは「おもてなしの心」です。「おもてなし」と言うと旅館のイメージがありますが、塾にとっても必要不可欠な要素です。

塾はカテゴリーとしては「サービス業」に分類されます。学習指導という目に見えない商品を扱っているわけですから、それ以外の要素、特に「おもてなしの心」が重要になってくるのは当然です。

ところが、これまでの塾経営者は「技術屋」「職人気質(かたぎ)」の方が多く、「良い授業をしていれば自然と評判を呼んで生徒が集まってくる」と考えています。たとえて言うと、「ラーメンの味さえ良ければ、多少店内が汚くても客は来る」という発想です。中には通ぶって「多少汚いくらいの店の方が味はいいんだ。」と言う人もいますが、私はゴキブリが出そうな様相のラーメン屋は勘弁です。テレビで特集される「行列の出来るラーメン屋」は例外なく店内は清潔に保たれています。「清潔」は、外食産業に限らず「客商売」と呼ばれるビジネスにとって共通の必須要素です。「おもてなし」の基本中の基本と言ってもいいでしょう。

塾も同じです。掃除、整理整頓は毎日すべき日常業務です。個人塾さんに多いのですが、「学習指導には自信がある」と公言する塾の中には「倉庫の中に教室がある」状態のところがあります。販社から届いた教材を入れたダンボールが教室の隅でそのままになっていたり、もう使わなくなった古い教材類が教壇に山積みになっていたりします。それを指摘すると「整理・整頓よりも教材準備の方が大切」と考えている塾経営者が少なくないことに驚きます。それは優先順位を付けるべき性格のものではなく、どちらも必要なものです。

「おもてなし」という意味では、スタッフの服装にも注意したいものです。授業中は必要ありませんが、入塾面談等、お客様を迎える時のジャケット着用は一般常識です。ここ数年、本誌発行元「私塾界」主催の縦断セミナーで基調講演の講師を務めていますが、こうした公(おおやけ)の場に「普段着」で来る塾人を見ると「いかがなものか」と思ってしまいます。私が参加している異業種交流会のセミナー、例会、役員会ではジャケット着用が暗黙のルールです。(と言うよりも、ビジネス界の常識なのでしょう。)セミナーに普段着で来る人は、きっと日常も普段着で客と接しているのでしょう。こうした点で大手塾関係者はしっかりしています。(ネクタイが苦手でスーツも持っていない私が指摘するのも気が引けるのですが。)

「どんど晴れ」の中の老舗旅館が掲げる重要なキーワードがあります。「来る者、帰るがごとく」です。旅館に来られた「客」に我が家に帰ってきたように寛(くつろ)いでもらおうという趣旨なのですが、塾にとっても大切な要素です。「帰属意識」の問題です。

特にサービス業の場合、その店(教室)に対する帰属意識を高くしてもらう工夫は欠かせません。別の言い方をすれば「顧客ロイヤリティ」を高くする工夫です。以前も話したことですが、塾は全ての「客」が常連客という特殊なビジネスです。一人として「一見の客」は存在しません。すると、当然のように多かれ少なかれ「帰属意識」が芽生えます。それが希薄だと、平気で「近くにできた新しい教室」へと移動してしまいます。また、充分な「紹介」も期待できません。各塾では塾生証やバッチ、ニュースレターに塾生参加コーナーを設けるなどの工夫をしていると思いますが、今の状態に満足することなく、更なる「一手」を仕掛け続けてください。

アイディアを一つ提供します。「冬期講習」等イベントの様子をビデオに撮り、最後に参加者の感想を編集したDVDを作って配布してはいかがでしょう。最後のエンド・ロールには参加生徒の名前を流します。ココがミソです。講習全体を映し出すDVD(プレゼン用)は多くありますが、出演者?の名前が流れるDVDは珍しいと思います。家庭でDVDを見て、最後に登場する我が子の名前に感激する両親の姿が想像できます。生徒本人も当事者意識を高めることは間違いありません。最後の感想部分だけクラス単位(学年単位)で編集すれば、大手塾でも使える手法だと思います。ビデオ、パソコンの性能が進化した現在では、中小・個人塾でも安価に制作できます。プレゼン用のDVDは消耗品ですが、自分の(我が子の)姿と名前の登場するDVDは一生の宝物になります。

塾業界が縮小均衡時代に入り、限られた市場(客)を奪い合うわけですから、「授業」という商品力言うまでもないことですが、その周辺要素の重要性はますます高くなってきます。「商品力」は必要条件ですが、それだけでは充分条件とは言えないのです。

ぜひ、一度「おもてなしの心」をキーワードに周辺部分を見直してください。注意したいのは、「おもてなし」とは客に対して「おべんちゃら」?を言ったり迎合することではありません。老舗旅館でも伝統と格式を守ることを客にも求め、客も相応しい振る舞いをすることで「ひとつの心地よい世界」を作っています。そこに帰属意識が生まれます。あなたの塾の文化、風土を大切にし、生徒・保護者も一緒になって守っていく…そうした人的関係を作っていく過程の中でこそ、淘汰の時代に力強く伸びていく「強い塾」は作られます。

 
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