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新時代のマーケティング論(22)
年頭所感/2007年はパラダイムシフト元年 2007年1月私塾界掲載分

森智勝氏

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明けましておめでとうございます。いよいよ2007年を迎えました。この「いよいよ」という言葉を使ったのには理由があります。私は10年前より「2007年が日本社会の大きな転換点になる」という主張を続けてきました。その理由の一つは日本において人口減少が始まる年と予測されていたからです。

(実際には特殊出生率の予想外の低下によって1年ずれましたが…)もう一つは言うまでもなく「団塊の世代」の大量退職が始まる年だからです。このダブルパンチによって日本の労働者人口は、今後、急速な縮小期を迎えます。労働者人口は消費者人口と言い換えてもいいでしょう。ニュース等で「景気の上昇に対して個人消費指数が伸びていない」という報道がなされますが、もともと消費者人口が減少傾向にあるのですから当然の現象です。

1980年代後半の「いわゆるバブル景気」については既に多くの総括がなされていますが、その多くは株や土地に対する「投機」による「虚像景気」と捉えるのが一般的です。(それこそがバブル命名の由来です。)さて、本当にそれだけでしょうか?

消費者動向に注目して、別の視点から分析すると次のことが言えます。

人が一生の中で最も消費活動する年代は40歳代です。(平均ピークは45~46歳)年収も増え、ある程度の人生設計に見通しが立ち、家を建て始める頃であり、子供の教育費が最大になる頃でもあります。実は1980年代後半は「団塊の世代」がその年代を迎える時期だったのです。当然、日本の個人消費指数はマックスになり、好景気を迎えるのは必然だったと言えます。けっして「投機」だけが原因ではありません。もちろん、グローバル化というファクターが景気を前倒しで加速し、過熱させた側面は否定しませんが。

そうなると、次の好景気のピークは「団塊ジュニア」が40代を迎える10年後まで待たなくてはいけないことになります。その間の経済を支えるために政府は(小泉政権は)ある手法を採りました。それがリストラクチャリング(リストラ:経済の再構築)です。

もともと「好不況」のモデル定義は「需要」と「供給」のギャップを言います。需要が供給を上回っている状態が「好景気」であり、その逆が「不景気」です。それまでの経済政策は、不況になると政府主導の公共事業等によって一時的に需要を増やすことでバランスを取り、在庫調整と需要の増大を待つというものでした。この手法は右肩上がりに人口の増加、つまり消費の拡大を前提として成立します。ところが、最近のように人口の横這い、あるいは減少の中では有効に機能しません。そこで日本は「供給を削減すること」によって需要とのバランスを取ることを選択したのです。

それが功を奏し、現在の戦後最長の好景気?を実現しました。しかし、その副作用として大量の雇用調整(いわゆるリストラ)、ニート、フリーターの出現、非正規雇用の拡大等の問題を生じることになったのです。

この傾向は今後、ますます強まると予想できます。日本社会における人口の減少、消費の減少はこれからが本番だからです。欧米のように外国人労働者を受け入れられない以上、国内の産業空洞化は避けられません。

こうした経済状況に転換すると、マーケティングにおいても大きなパラダイムシフトが要求されます。これまでのいわゆる「資本の論理」が通用しなくなるのです。正確に言うと資本の論理だけでは成り立たない市場が生まれつつあるのです。「資本の論理」を一言で表現すると、「より良いものをより安く」ということです。拡大発展時代(物不足時代)の消費者は入手欲求が高いため、同じ買うのなら「より良いものをより安く」と考えます。供給側は設備投資をすることによってそれを実現し、競争に勝つことを目指しました。アルビン・トフラー氏はこれを指して「(価格の)最低を目指す競争」と名付けました。この競争は今後も熾烈を極めることでしょう。

しかし、一方で「資本の論理」だけでは動かない消費者層が拡大しています。例えば「あなた」も500万円の車を買うとき、5万円の値引きの差が購入の決定要素になるでしょうか。本来、車はどこのディーラーで買っても同一商品を入手できます。それならば、1円でも安いディーラーから購入しそうなものですが、実際にはそうならないことは経験上ご存知のはずです。縮小均衡時代(物余り時代)では「資本の論理」に加え、「感情の論理」が大きな要素になってくるのです。

すでにテレビでは外資系保険企業が「このプランナーは私の母を自分の母親のように考えてくれる…」などと、感情に訴えるCMシリーズを流しています。賃貸仲介企業、通販企業、その他、多くの企業が同様のマーケティング手法を取り入れています。平たく言うと「何を買うか」から「誰から買うか」という傾向にシフトしているのです。今の消費者は「同じ買い物をするのなら好きな人、好きな企業から買いたい」という感情を持っているからです。

さて、翻って塾業界。もともと教育産業はそれぞれが違った商品を提供しているサービス産業です。もともと「より良いものをより安く」が通用しづらい業界です。今後はますますトフラー氏の言葉を借りれば「最高を目指す競争」が激しくなるでしょう。そして、もうひとつ…。新しい価値観を提供できる塾が支持されると私は予想しています。単に「成績を上げる」「志望校に合格させる」だけではなく、学問指導を通して新しい価値観、世界観を子供たち、保護者に見せることのできる塾、いわゆるマスタービジネスと呼ばれる手法を取り入れた塾が伸びると考えています。

激動の2007年、各塾が健全な競争をすることによって業界全体の活性化、社会全体の教育ニーズ向上に資するものと信じています。今年一年、「あなた」の奮闘を期待します。

 
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