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新時代のマーケティング論(21)
あなたの周りの人4%を変える実践を 2006年12月私塾界掲載分

森智勝氏

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2006年が終わろうとしています。今年も多くの方々にお世話になりました。紙面をお借りして御礼申し上げます。

今年は「激動」と言うに相応しい一年でした。昨年末、塾現場で起こった悲惨な事件の余波を引きずったまま正月を迎え、その後も子供たちが犠牲となる事件が多発しました。学校教育現場では「いじめ」と「自殺」現象が再燃し、教育基本法の改正問題も継続中です。塾業界では本格的な大型A&Mが起こり、業界再編の波は今後、更に加速していくと思われます。

ところで「いじめ」と「自殺」に関して伊吹文部科学大臣から出された緊急アピール文があります。「文部科学大臣からのお願い」と題した短い文章なのですが、既に目にされた方も多いと思います。私が注目したのは文章の内容ではなく、そのアピール相手です。

一枚は「未来ある君たちへ」と子供たちに対するアピール文なのですが、大人向けのもう一枚は「お父さん、お母さん、ご家族の皆さん」に続いて「学校や塾の先生」と「学校」と「塾」が並列の形で表示されています。長年、塾は「必要悪」と言われ、子供を取り巻く問題の諸悪の根源のように言われてきました。それが、文部科学大臣から学校と肩を並べる?扱いをされるようになっている。まさに隔世の感です。これまで苦労しながら塾業界の地位向上のために奮闘されてきた先人達に心から敬意を払います。

さて、全国私塾情報センター主催の「名刺交換会の夕べ」でもお話したのですが、私は「4%理論」という主張をいつもしています。「4%の人が変われば全体が変わる」という理論です。例を挙げると次のようなことです。

近代日本を考えたとき、江戸幕府の滅亡から明治維新にかけての時期が大変革期だったことに異論を挟む人はいないと思います。しかし、あの時、その変化に関わった日本人が何人いたかという問いです。それは佐幕派、攘夷派、開国派…全てを合計しても当時の人口の2~3%程度だったと考えられます。大部分の日本人は大政奉還の日も変わらず畑仕事をしていました。でも日本は大きく変わった…。

日本の教育が行き詰っているという認識では大多数の人が共通しています。もし、教育に携わる4%の人が変われば教育全体を変えることが出来ると私は考えています。塾業界に携わっている関係者の人数を正確に把握しているわけではありませんが、わずか4%の人が変われば塾業界は変わる。そして、塾業界が変われば、そこから教育界全体を変えることも可能だと思うのです。問題は「変わる」とは何かということです。それは「行動すること」です。塾の立場で今の子供たちのために出来ることを実行することです。

例えば、次のような取り組みならば実行可能なのではないでしょうか。今の子供たちには学校はもとより家庭にさえ「居場所」を見出すことができません。そんな子供たちのために塾が「居場所」を提供してあげるのです。そのためには精神的居場所はもちろん、空間的居場所も考えなければなりません。以前お話したことのあるホスピタリティに通ずる話です。塾が学校、家庭と並ぶ第3の居場所になることが出来れば、それだけ子供たちにとっては選択肢が増え、日常の閉塞感から逃れられると思うのです。

ビジネス的に考えても、顧客の滞留時間と売り上げが比例することは広く知られています。私はホスピタリティが今後の塾発展のキーワードだと考えています。

中には「自分ひとりがシャカリキになっても世の中変わらないよ」とニヒリズムに構えている人もいますが、周りの人100%を変えようと思わなくてもいいのです。4%が変われば全体は変わります。あなたの周りの人のうち、4%の人を変える努力をしてください。同様に我々自身も、常に「自分の中の4%を変える意識」を持つことです。

かつて、リクルートのセミナー担当者の話を聞いたことがあります。セミナー参加者のうち、実際にセミナー内容を参考にして行動に移す人の割合は2%程度だと言うのです。ほとんどの人が「いいお話を伺いました」で終わってしまうそうです。この話を聞いて以降、私は自分の講演を聴いていただいた方のうち4%の人に行動に移してもらうことを目標にするようになりました。同時に、話の中でせめてそれぞれの聴衆にとって「4%は役に立つ」内容にしようと努めています。

100%を目指すとハードルが高すぎて人は行動に移せません。しかし、わずか4%でいいのです。ぜひ、あなたの「行動」を期待しています。これを読んでいただいた4%の方が行動に移してくれることを願って…。

来るべき2007年は日本社会にとっても大きな転換点です。「団塊の世代」の方々の大量退職の開始…それによる人材不足と消費者人口の縮小、人口減少による社会全体の縮小均衡化への移行等、これまで日本が経験したことのない様々な現象が現れることでしょう。しかし、社会がいかに変化をしても「教育の重要さ」という根本原則に変わりはないと思います。今、市場規模的にも「踊り場状態」にある塾業界がますます活性化し、「学びの場」をより広く提供し続けることが求められています。それには自由競争の中で生まれる多くの知恵が必要なことは言うまでもありません。

今年も一年間、紙面を通してのお付き合い、本当にありがとうございます。2007年が日本社会、教育業界…そして本誌読者の皆様方にとって良い年になりますように心からお祈り申し上げます。

 
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