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新時代のマーケティング論(17)
塾業界の天敵は投資業界だ! 2006年9月私塾界掲載分

森智勝氏

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今年も梅雨の終わりに全国各地で豪雨にさらされました。被害に遭われた地域の皆さんにお見舞い申し上げます。

豪雨の後は猛暑。この暑さの中、最多忙期の夏期講習に各塾とも突入しました。塾経営者の方、スタッフの皆さん、体調に気を付けて乗り切ってください。

さて、私は以前から「利益=社会貢献」という主張をしています。その考えに変わりはないのですが、最近、多くの若者が「勘違い」しているようなので、あらためて補足説明したいと思います。

私が言う社会貢献とは「付加価値」のことです。付加価値があれば、その商品が流通することで社会の進歩・発展が実現されます。

ところが、ホリエモンや村上ファンドが100億円儲けたとして、本当に100億円分の付加価値を社会に提供したのかという疑問を持っているのです。本来、誰かが100億円儲けたのならば、それは100億円分の付加価値を社会に提供したわけですから、社会は100億円分の発展がなければなりません。しかし、どこかで「損をする人」の存在を前提としたビジネスモデルでは、右のお金が左に動くだけですから、社会全体としては何も発展しないことになります。私が株トレーダーやホリエモン商法に批判的なのは、法を犯す云々の前に「本当に社会貢献している」(付加価値を提供している)とは思えないからです。

人には臨界点があります。例えば年収1億円が臨界点の人が10億稼いでも生活には何の変化もありません。ただ、預金通帳の数字(残高)が9億円増えるだけです。言ってみれば、50円のボールペンがあれば済む話です。それに何の意味があるのでしょう。

ほとんどの人が1億どころか数千万円程度のレベルで臨界点を迎えるはずです。それ以上は「通帳」という用紙の上に印刷された数字の違いだけです。私は臨界点までは「金」のために働くことを否定しません。しかし、それを超えても「金」のために働くのは「金の奴隷」だと思います。お金ではない「何か」(これが哲学であり理念であり人格を表すと考えます)のために働く。そうした生き方の方が何百倍も幸せだと思っています。

いつも例に出して申し訳ないのですが、株の誤発注問題で数十億の利益を上げた「若きデイトレーダー」君。何てつまらなさそうに生きていることでしょう。私、100億積まれてもあんな生活はお断りです。

先日、あるテレビ番組で「ホリエモン・村上ファンド問題」が議論されていて、そこに出演していた東大生が「これからの日本は投資で利益を上げることを考えるべきだ」趣旨の発言をしていたのでビックリしました。と、同時に恐ろしくなりました。もし、多くの若者(東大生だから次世代のリーダー候補でしょう)が同じ考えをしているとすれば、この国はどうなってしまうのでしょうか。

戦後の日本の経済発展は「ものづくり」が支えていました。そして教育は国の骨格を担う「ひとづくり」にあります。我々塾人はビジネスマンであり教育者です。自らが働くことの意味を自問し、自答しながら生きていくことが求められています。その姿勢が子供たちに、親に、地域に浸透し共鳴を得ることが塾の発展に大きく寄与することは間違いありません。

ここまで書き進めてきてふと思います。もしかしたら塾業界の天敵(ライバル)は投資(投機?)業界ではないかと。今、書店に行くと株式投資に関するノウハウ本がずらっと並んでいます。「中卒の俺が年間3億円稼いだ訳」「普通の主婦が100万円を1億円に増やした方法」のように刺激的な題名が棚を賑やかせています。もし、世間の風潮が「楽をして金を稼げる」幻想へと流れてしまった場合、地道に学問に取り組むモチベーションが下がりかねません。正直、数時間で20億円以上の利益を得たという報道に接して、地道に働いたり進学を目指して苦しい勉強を続けることが「馬鹿らしく」感じた国民は多いと思います。ましてや「投資の素人ですから」と自ら言う日銀総裁が、村上ファンドを利用して多額の利益を得ていたことが公(おおやけ)になってしまった今となっては…。

塾業界はニーズによって成り立っています。このニーズ圧力が低下することを私は恐れています。

先月号でもお話しましたが、我々塾人は対極に立つ覚悟が必要なようです。そして、魅力的な業界を作り、「ひとづくり」の意義を訴え、常に新しい人材を迎える準備をしなければなりません。案内によると、全国私塾情報センター主催の「教育産業就職フェア」が9月30日に大阪で開催されるとのこと。こうした取り組みを通して業界が情報発信を続けることは大きな意味があると考えます。

あなたの塾で働く全ての大学生が会場に足を運んでいただけるよう、ぜひ、おススメしてください。私も当日は駆けつける予定です。

 
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