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新時代のマーケティング論(12)
ライブドア事件からの教訓・利益とは何か 2006年2月私塾界掲載分

森智勝氏

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ライブドアの堀江氏をはじめとする幹部が逮捕されて以来、マスコミは手の平を返したように「その錬金術の闇を暴く」態の報道を一斉に流しています。その是非を論じる資格も能力もありませんが、1つだけ同じ経営者として考えたいことがあります。「利益とは何か」についてです。

よく「小学生でも分かる理屈」という言葉を使いますが、小学校の算数ではこう教えています。「利益=売上-原価」。そして、利益を別名「付加価値」と呼び、私の理解ではイコール「社会貢献」です。社会貢献が高ければ高いほど利益は高くなる。ところが、報道で知る限りライブドアの手法はどうやら「損をする人」の存在を前提としたビジネスモデルのような気がしてならないのです。

株式市場の社会貢献度を否定するつもりはありません。資本主義において「株」の存在がなければ経済が成り立たないことは承知しています。しかし例えば、かの発注ミス事件で20億円以上の利益を上げたことで有名になった「若きデイトレーダー」君。先日もテレビで「今日の利益は4億円」と話していましたが、彼は4億円分の付加価値(社会貢献)を提供したのだろうか?規制緩和によって多くのデイトレーダーが誕生しましたが、マネーゲームのみで得た「お金」は本当の意味で「利益」と言えるのだろうか。やはり「バブル」なのではないでしょうか。

堀江氏の功績は良くも悪くも「ホリエモンを目指す若者」を大量に生み出したことです。今、ネット上では「10代のニートが月収100万円」「小学生でも儲かる株取引」なんて言葉が至る所に見られます。小学生時代に親から100万円を与えられて株の世界へ飛び込んだ…村上氏の影響でしょうか、「親子で学ぶ株式セミナー」はどこも盛況と聞いています。

しかし…本当にそれでいいの?

子供たちに「お金」について教えることは重要です。私は一番に「お金の価値は相対的」ということを教えます。「お金」は何かを成すための手段であることに異論を挟む人はいないでしょう。

私の娘(高2)は中学1年生から「化粧とファッション」に目覚め、中1の5月に化粧をして学校へ行き、「顔を洗って来い!」と教室を追い出されました。ところが、我が家の教育方針は「他人に迷惑を掛けないことなら何でもOK」なので、その後も化粧とファッションの研究には余念がない我が娘。しかし、嗜好品に親が援助をするはずもなく、中学生時代は「100円ショップ」で化粧品を探していました。高校生になるとすぐに名古屋駅のマクドナルドでバイトを始め、情報誌を買い漁り、いよいよ高額な(と言ってもブランド物には手が出ないのだが)買い物を楽しみ始めています。バイト料が入ると通帳を眺めてニタニタしています。周りから見ると、完全に金の亡者のよう。口癖のように「ああ、もっとお金が欲しい…」と溜息をついています。そんな娘でも実は「お金」が欲しいのではなく、「化粧品」や「服」「バッグ」が欲しいのだということが分かります。もっと言えば「そうした嗜好品によって得られる幸せな生活」が欲しいのです。そう、本当に「お金」の好きな人は少ない。本当に「お金」の好きな人は銀行になど預けずに、縁の下にでも隠して夜な夜な数えて楽しんでいます。

「お金が好き」という人は、実のところお金で交換できる服が好きなのであり、バッグが好きなのであり…そのお金で実現できる生活が好きなのです。そうであるならば、その人の嗜好に応じて「お金は相対的なもの」のはずです。

私の後輩に「ある有名社長の娘」と交際していた「奴」がいます。テレビに良く出る「馬好き」社長の娘です。彼(以下A君)から聞いた実話です。ある真冬の夜10時頃、突然社長(彼女の父親)から電話があったそうです。

「今すぐ下呂温泉の○○ホテルに来い。」

その日は生憎の大雪。とても名古屋の人間が車で行くのは勇気がいる。それでも、彼女の父親の「命令」なので、意を決して出掛けたそうです。真夜中に到着して広間に案内されると、大勢の歓声と怒号で迎えられます。上座に座った「社長」が手招きをして呼びます。訳も分からず近づくと、社長の前にはおびただしい札束の山。

「よう来た。これはお前の取り分だ。」と言って無造作に札束を茶封筒にねじ込み、A君に渡したそうです。(2~3百万円はあったそうな。)

…社長は慰安会の席で「電話一本でA君が来るかどうか」を社長仲間と賭けていたのです。

私は賭け事をやらないので理解できないのですが、多分、彼らが百万円で味わうスリルは1万円もあれば充分堪能できそうです。つまり、私の1万円は彼らの百万円に匹敵する。そう、お金の価値は人によって違うのです。

改めて今の株式ブームは何だろう?と考えてしまいます。

以前もお話しましたが、日本国民全てがヒルズ族を目指す社会を想像すると本当に暗澹とした気分になります。少なくとも「ヒルズ族」の対極に立つ塾業界が声高に「対極の理念」を訴える必要があるのです。壮大な綱引きです。そして、誰もが損をしない…関わった人全てが幸せになれるビジネスモデルは存在します。子供と関わるビジネスをしている我々は、それを体現していく責任と義務があると確信しています。

今回のライブドア事件を「国策捜査」として非難する声もありますが、「額に汗して働く人が報われる社会の構築が目的」という社会規範を私は全面的に支持します。

 
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