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塾・新時代のマーケティング論(6)
「会社組織はビジネス・パートナーの集合体である」

森智勝氏

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塾も企業である以上、社会的責任を負っていることは言うまでもない。その1番は利益を出すことである。日本人は士農工商の身分制度に慣れ、金儲けを軽視する精神構造を持っている。いや、そうした東アジア圏特有の精神構造が士農工商という身分序列を生んだのかもしれない。どちらにせよ、長年「貧しくとも、清く正しく美しく」を美徳としてきた。金持ちを見ると「何か悪いことをしているのに違いない」と考える。有名人が脱税で話題になると「やっぱり」と思ってしまう。
お金の流れを単純に見ると次のような構図が考えられる。

例えば120円が右から左へ動く時、左から右へと缶コーヒーが動く。280円が動く時は反対方向に牛丼が移動する。つまり、基本的には2者間の予定調和の上に成立する等値交換である。お金の流れと反対方向に移動する商品、サービス…これらを広い意味で捉えると「社会貢献」と規定することができる。より多くの社会貢献を提供するところに、より多くのお金が集まってくるのは社会的原則である。そう理解した場合、人は誰もが「金を稼ぐ」行為を疎かにしてはいけないと分かる。
こうした話をすると必ず返ってくる意見がある。「いや、世の中お金だけが全てではない」「私は年収が500万円もあれば充分だ」全くその通りである。私もお金だけが全ての価値を計るものだとは思わないし、年収500万円で充分だというのも個人の理念、哲学なので尊重する。ただ、そうした人に言いたいのは「年収500万円で充分ならば、どうぞ1億円を稼いで9千5百万円を社会に寄付してください」ということだ。世の中、稼ぎたくても稼げない人、言い換えれば社会貢献をしたくてもできない人が大勢いる。そうした人たちのためにも、稼ぐ(社会貢献する)能力のある人にはその力を発揮してほしいのである。お金を1億円稼ぐことと1億円の生活をすることは別の問題である。ただ、私はまだ「1億稼いで9千5百万を寄付している人」に出会ったことがない。

この原稿を書いている現在は、総選挙の真っ最中である。そのたびに繰り返される定番のインタビューがある。「あなたは選挙へ行きますか」そして、必ず返ってくる回答がこれだ。「だれが政治家になっても世の中変わらない」今回も、テレビに登場した20代の若者が言っていた。「だれが総理大臣になっても給料が上がるわけではないし…」当たり前である。我々は総理大臣から「小遣い」をもらっているわけではない。社会貢献をしようとしない者にお金が集まってくるはずがない。他力依存症の極みである。
あなたが学習塾の経営者ならば、学習指導という教育の一部を担い、大いに社会貢献をして利益を上げる責任がある。

さて、現在の日本には前述の他力依存症が蔓延している。特に若者の間で顕著である。あなたの塾の講師たちにも同様の傾向が見られるのではないだろうか。かつてのあなたのように、私教育の理想に燃え、自己実現の場として学習指導に携わっているスタッフが何人いるだろうか。組織が大きくなっていけばいくほど思いは乖離し、経営者と社員の関係構築が難しくなる。しかし、企業の2番目の責任として「多くの従業員に就業の場を提供し、生活維持の手段とさせる」ことが求められている以上、組織運営、マネジメントから逃れることはできない。まさか、カビの生えた資本家と労働者の対立というイデオロギーで労使関係を捉えている人はいないだろう。最近指摘されている重要なポイントは、「如何にモチベーションを社員に与え続けることができるか」という点である。

かつての大企業の場合、良くも悪くも制度そのものにモチベーションが内在していたため、そうした論点は存在しなかった。つまり、係長・課長・部長・役員…昇進という目標が常に社員の目の前にあった。終身雇用が当たり前だった時代の産物である「企業ロイヤリティー」の成せる業であろうか。しかし、その制度そのものが崩壊し、労働力の流動化が著しい現在では、昇進が決定的なモチベーションとは成り得ない。ましてや塾業界の場合、最大手でも年商300億円程度の「中堅企業」である。ほとんどの塾は現在のスタッフ全員にモチベーションとなり得るだけのポストを用意することは難しい。では何をもって組織を作っていくか。ここで個別具体的な方法を述べることは不可能であるが、ひとつのキーワードを提供したい。
「ビジネス・パートナー」である。長く日本マイクロソフト社の社長を務めていた成毛氏は「社長というのは、その任に最も向いている者が就く役職のひとつである。社長が最も偉いわけでもなく、ましてや最も販売に長けているわけでもない。」と言う。つまり、適材適所の一つとして「社長」があると主張する。そして、そうした適材適所の一人一人が、社会貢献を実行するためのビジネス・パートナーなのである。

あなたも新入社員も、学習指導という行為を通して社会に貢献するためのパートナーと認識した時、これまでの隷属的労使関係から脱却した新しい組織が生まれるのではないだろうか。そして、その時必要不可欠なのが以前述べた「ミッション」である。分かりやすい例を挙げると長嶋ジャパンが掲げた「For the flag」である。その一言があるがために、自他共に認める時代を築いた一流選手たちが高校野球のような全力疾走を見せるのである。もちろん、長嶋監督のカリスマ性、リーダーシップが大きいことは当然であるが。
私は招かれて、その塾のスタッフに話をすることがある。いろいろな話の最後に必ず言うことは「不良社員たれ」ということである。不良社員とは、経営者からは扱いにくくても居なくては困る社員のことである。自分の時間、労働力を切り売りしていると考えている間は不良社員になれない。
ミッションを実現するためのビジネス・パートナーの集合体が会社組織だとの認識を共有できた時、言葉を変えれば、お互いが相互メリットの実現のために欠かせない存在だと理解した時に、あなたの塾(会社)は強固な組織体に生まれ変わることだろう。

 
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