HOME > 塾経営最強コラム > ミッションの重要性

塾・新時代のマーケティング論(3)
「ミッションの重要性」

森智勝氏

写真

前回紹介した神田氏はミッションの重要性を力説する。マーケティングとミッションはどう関係してくるのか。今回はそれを取り上げてみたい。

先日、ある塾長さんから入会の申し込みがあった。次のようなコメント付きで。
「当塾は4年前まで420名の塾生がいたのですが、ぱったり入塾者がなくなり、チラシを打っても反応はなく、昨年はチラシを出すのをやめ口コミに期待しましたがダメでした。現在は社員も辞め、60名の生徒を妻と二人で教えていますが、このままでは2年後には廃校も考えなければなりません。何とか塾生獲得実践会のノウハウで立て直したいと思います。」
私はすぐにFAXレターを送った。
「420人が3年で60人に減少するには何か原因があるはずです。まず、それを探しましょう。反応がなくなった頃のチラシをFAXしてください。私も一緒に考えます。」
ところが翌日掛かってきた電話の内容は、「その後、女房と相談したのですが、今回は入会を見送りたいと思います。」
まあ、いろいろ事情もあると思うが、結局は変化を恐れたのだろう。

縮小均衡が始まると、勝ち組と負け組みの差は一気に進む。420人がわずか3年で60人になってしまう。2対8の法則社会では上位2割に近い位置にいる塾の没落が特に激しい。
私は社会貢献できない塾は潰れるべきだと思っている。ただ、2割に残るべき資格を持つ塾が「マーケティング力」が無いというだけで潰れていくのが社会的損失と考えているだけだ。
「地域の他塾と仲良く、共存共栄を図ろう」などと考えている塾長さんはいないだろう。もう、護送船団方式の社会は崩壊している。また、その考えは消費者(生徒・保護者)にとって有益ではない。これからは2対8の法則社会だ。その闘いの幕が本格的に切って落とされたのが1997年。多分あと5年間は続く。(2007年まで、もしかすると2012年まで)明確な戦略と戦術を持っているか否かが勝敗の分かれ目だ。今更、戦略と戦術の講義をするつもりはないが…。戦術は技術だが、戦略にはミッションが必要だというお話をしたい。

最近、塾生数を伸ばしている塾の特長は、土日コースを充実させたことだ。言うまでもなく完全週5日制の導入による学力低下の不安感に訴えたわけだ。当然、大手進学塾がこの分野では圧倒的な強さを見せている。中小塾は相変わらずボランティアで土日補講をやっている。これだけ見ても分かるが、しっかり料金を取っているところの方が無料でやっているところよりも集客している。ただ、土日コースは戦略でなく戦術の範囲内。


塾における戦略とは、バックボーンとしての理念とかミッションに深く関わっている。これがないと何をやっても付け焼刃に終わり、結局、どんな塾なのかが伝わらず支持されないということになる。
大手進学塾が強いのは、そのミッションがはっきりしていることによる。
「優秀な生徒を更に優秀にして上位校に進学させ、将来のトップリーダーを育てる」…これだ。
主張の是非はともかく、明快なので誰にとっても分かりやすい。分かりやすいからその考えに共鳴した消費者が集まってくる。ミッションが明確だと戦略も明確になる。大手塾が参考書、問題集の作成、出版に業務を拡げるのは自然の流れだ。ミッションさえはっきりしていれば、ミッションに外れないことは何でも出来る。そのうち、健康食品会社と提携して、頭の良くなる食品を扱ったり、食事の宅配を扱う塾が出てきてもおかしくない。
問題は、あなたのミッションを如何に明確に伝えるか、ということだ。「あの塾は○○な塾だ」と思わせないと、けっして共感は生まれない。「塾生募集」「募集要項」「未来へ羽ばたく皆さんへ」「○○学習塾」で構成されているチラシが反応が薄いのは、ここにも原因がある。共感が生まれないのだ。よっぽど、「学歴は必要です」「こうやって成績を伸ばします」「進学実績はこれです」のチラシの方が共感を得ることができる。

ミッションとは一言で言うと社会貢献を文章化したものだが、それを考える場合注意すべきことがある。これがなかなか理解してもらえないのだが、「金儲けを罪悪視しないこと」だ。士農工商の影響か、もともと日本人は金儲けを嫌悪する民族性を持っている。特に、「教育を金儲けの手段に使うなんて」という風潮が長く続き、それが塾を必要悪視してきた原因のひとつであることは否定できない。また、「お金が全てではない」という意見もその通り。「私は年収が500万円あれば十分だ」と考えるのは自由だ。
でも、そんな人に言いたい。「500万円で十分なら、1億稼いで9千5百万円を社会に寄付してくれ」と。世の中には稼ぎたくても稼げない人が五万といる。ましてや不況の今、稼ぐ能力を腐らせるのは社会的損失だ。犯罪的行為でなければ、社会貢献と利益は等価交換する。たくさん稼ぐ人は、基本的にたくさん社会貢献している。つまり、儲かっている塾は、それだけ地域に、子供たちに貢献しているわけだ。
ところが、多くの塾長が「無料奉仕」を「社会貢献」だと考えている。ボランティアに走る。朝から晩まで、夜中まで仕事をする。スタッフにも自分と同じ献身を求める。そして疲弊していく。頑張れば頑張るほど利益が減り、疲れが溜まる悪循環。
これでは上位2割に残れない。
自分の仕事にプライドと自信があるのなら、堂々と主張すべきだ。私の提供するサービスは、これだけの価値があると。夜中まで働くことを悪いとは思わないが、尊いとも思わない。どこの会社でも、能力のない社長ほど良く働く。誤解があるといけないので言い直すと、雑務に没頭する。率先して玄関を掃除したり、現場作業に参加したり。それは、「上手くいかなかったときの言い訳作り」でしかない。「いい人だ」とは評価されるかもしれないが…。でも、あなたの仕事は違う。経営者にとって「儲けること」は社会的義務だ。そこを自覚していることが2割に入る条件だ。金儲けと教育はけっして二律背反ではない。

ミッションを掲げることだ。「ミッションに外れないことは何でもやる。ミッションに外れることは一切やらない」そう、そこからあなたのマーケティング戦略は生まれる。

 
© 2015 全国学習塾援護会