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中小塾のためのマーケティング講座(28)
「塾の暗黙知を伝えるニュースレター」

森智勝氏

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伝えるべきは塾の暗黙知

先月号で文章力(コピーライティング力)の必要性を述べました。文章とは情報や意志を伝える手段ですから、当然、何を伝えるかという「何」の部分が重要なことは言うまでもありません。それは、一言で言ってあなたの塾の「暗黙知」です。

暗黙知。平たく言うとお金では買えない価値のことです。それに対してお金で買える価値のことを形式知と言います。例えば「イチローの打撃術」1,980円という本は誰でも入手できますので形式知です。しかし、その本を読んだ全ての人がイチローのようにヒットを打てるようになるわけではありません。イチローにはイチローしか持っていない打撃力があります。それが暗黙知です。

形式知は、それを入手した瞬間から0円に向かって価値が落ちていく運命にあります。データベース教材も衛星授業も成績管理ソフトも…今流行(はやり)の入退室メールソフトも形式知です。つまり、戦術に関わる部分のほとんどは形式知だと思って間違いありません。それはそれで重要な要素なのですが、それだけでは不十分です。「強い塾」を作るには、その塾しか持っていない暗黙知の存在が不可欠です。そして、それは塾経営の戦略と密接な関係性があり、暗黙知を作ることと戦略的思考を持つことは車の両輪のようなものです。

今春、私塾情報センター主宰の全国縦断学習塾経営セミナーで特別講演をされた早稲田アカデミーの須野田誠氏は講演の中で、早慶にセグメントした圧倒的な進学実績作りの戦略と徹底した社員研修の中身を公開された。聴衆の感想はきっと次のようなものだったに違いありません。「俺(ウチの塾)には真似ができない。」
私も拝聴し参加者の様子を眺めていたのですが、明らかに顔にそう書いてありました。

そう、この「他塾には絶対に真似のできないもの」が暗黙知そのものです。そして、この暗黙知は戦略的に作るものであり、勝手に生じるということはないのです。須野田氏も早慶の合格実績は意識的、戦略的に作り上げたものだと吐露しています。

また、広告業界で言い伝えられるように「知らされない商品はないのと同じ」です。いくら「ここに暗黙知がある」と思っていても、市場に伝える広報活動なくしては「無いも同然」なのです。プロ野球もテレビ中継や新聞で取り上げられ泣ければ、多くの人にとって「無いも同然」です。そうした知られていないスポーツは数多く存在します。マーケティングはあなたの暗黙知を市場に顕在化させるために必要なのです。

中小塾にもできる暗黙知作りとは何でしょう。当然、合格実績では大手塾に敵(かな)いません。その代わり中小塾ならではの暗黙知をあなたは持っています。他ならぬ「あなた」そのものです。地域密着の項でもお話したのですが、大手塾は人の移動が頻繁なため「卒塾生が懐かしくなって5年ぶりに塾を訪ねると知った先生は1人もいなかった」ということになりかねません。しかし、あなたはいつでも「そこ」にいます。あなたは常に地域と共に生きています。その「あなた」こそが地域に伝えるべき暗黙知の筆頭です。文字通り「顔の見える塾」を目指すのです。あなたの理念、方針を地域に伝え、信頼を得ることが重要です。ところが、中小塾の作る多くのチラシは大手塾の作り方を追従する内容になってしまっています。これではネームバリューに勝る大手塾に対抗できません。全体規模では勝てないが、その地域では負けない地元優良塾を作るには常に大手塾の対極に立つことです。本当の意味での地域密着を目指すのです。

ニュースレターは地域と塾の架け橋

そうした地域密着の手段として、私はニュースレターの作成をお勧めしています。今では塾生獲得実践会の多くの塾がニュースレターの発行によって大きな効果を上げています。

ニュースレターとは何か。それはセールスレターの対極にあるものです。夏期講習の案内、テスト前対策授業のお知らせ等々はセールスレターです。ニュースレターとは塾長や講師の考え方、人柄を伝え、同時に塾と地域をつなぐ役目を果たすものです。ですから、内容は何でも良いのです。質より量です。A3二つ折り2枚、計8ページ以上が理想です。ある塾は地元でご商売をされている方に取材をして、その「苦労話」や「やりがい」、地域の子供たちに対するメッセージを連載しています。言わば「15歳のハローワーク」の塾版です。ある塾長は自らの学生時代に興味を持っていたものを紹介しています。初めて飲んだコカコーラのこと、夢中になったウルトラマン、当時のアイドル…子供たちには新鮮で保護者にとっては懐かしさを与える記事になっています。もちろん、ときどきの教育に関する真面目な論評も欠かせません。

私は塾長当時、我が娘(むすめ)と母親(女房殿)の日常ドタバタ劇を「カン子の受験奮闘期」と題してニュースレターに掲載していました。すると、卒塾生が言ってくれました。「あと1年、ニュースレターだけもらいに来てもいい?カン子ちゃんがどうなるか知りたいから。」会ったこともない娘の行く末を心配してくれるのです。翌年には高校合格を知った(もちろんニュースレターを通して)多くの保護者・塾生からお祝いのメッセージをいただきました。

こうしたニュースレターは塾生の家庭はもちろん、地域とのネットワーク作りにも活用されます。次の報告はニュースレターを発行している塾長から寄せられたものです。

(前略)私が定期的にニューズレターを渡しているのは、ダスキンのおばちゃんです。ダスキンのおばちゃんは年の頃35~45ぐらいで、ちょうど小学生から中学生くらいのお子さんをお持ちの方が多いようなのです。しかもいろいろな家に出入りし、仲良くなったお母さんとは子どもの勉強の話にもなるのでしょうね。
先日、ダスキンのおばちゃんからこんなことを言われました。
「この間のニューズレターおもしろかったわ。おもしろかったんで、友達に回してあげたのよ。」
ん、私のニューズレターが回し読みされている!?
そしてその後、「体験学習、受けたいってゆうてはる人がいるわよ。」
これは、ニューズレターを生徒獲得のツールとして、今後さらに強化していくべきだというサインでは!

私のニューズレターは、塾内の出来事と同じくらいのページを割いて、一般の方が読まれても「おもしろい」と思ってもらえる内容にしようと心がけています。それがよかったのか、何がよかったのか…私のニューズレターがどうもひとり歩きを始めたらしい。
行きつけの床屋、美容院、喫茶店、レストラン、郵便局、ありとあらゆるところにニューズレターをばら撒きましょう。私は女性がよく集まる場所をターゲットにニューズレターばら撒き作戦を開始しました。今のところは美容院と郵便局です。(後略)

塾の理念や方針、塾長や講師の人柄を伝えるのにチラシだけではどうしても足りません。こうした定期的に発行されるニュースレターは、あなたに代わって「塾の営業」をしてくれます。内容がセールスでないからこそ多くの人に読まれ、認知度と親近感のアップに貢献してくれます。

「ニュースレターを書きましょう」と提案すると、「毎回、そんなに書くことが見つからない。」と尻込みをする人がいますが、全く心配はありません。書き始めるとアンテナが立つので、向こうから情報が飛び込んでくるようになります。次から次へと書きたいこと、伝えたいことが浮かんできます。

ニュースレターを発行することで塾を取り巻く環境、雰囲気がガラッと変わります。どうぞ、騙されたと思って?取り組んでください。第一歩を踏み出した人だけがその効果を享受できます。

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