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中小塾のためのマーケティング講座(27)
「本物を伝える文章力の向上を図れ!」

森智勝氏

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マーケティングの本質

今月から新年度に向けたマーケティングの技術論について具体的にお話を進めていきます。現在は「マーケティング論」が大流行のようで、書店には数々のノウハウ本が並んでいます。しかし、どんなマーケティング戦略も最終的には現場に落とし込んだ実践に結びつかなければ意味がありません。あなたにも経験があるのではないでしょうか。本の題名に惹かれ購読してはみたが、結局何をやればいいのかが分からなかったということが。

経営コンサルタントを仕事にしている人は自らのマーケティング戦略に目を惹くネーミングをつけます。本の題名も「いかにも…」という魅力的なものばかりです。あれは「本を売るためのマーケティング術」を駆使しているに過ぎません。中身の薄さに憤慨するよりも、思わず買ってしまった(買わされてしまった)著者の技術を学びましょう。どちらにせよ前回お話しましたように、中身が本物でなければいずれ見捨てられるだけです。

マーケティングの本質は机上の空論(見た目にカッコイイ理論展開)にあるのではなく、実践に結びついた「仕組み作り」にあります。ですから、実践する1つ1つは地味で泥臭いものです。それを忘れ、日々の積み重ねを疎かにしていると全体の仕組みは機能しません。また、その1つ1つに焦点を当てすぎると「木を見て森を見ず」になってしまいます。こうした仕事をしていると多くの塾からの問い合わせを受けます。曰く「直筆の手紙を書けば本当に塾生は増えますか?」曰く「ニュースレターを発行すれば塾生は増えますか?」「チラシのキャッチコピーを変えれば…」「教育説明会をやれば…」つまり、どうしても「魔法の金槌」が欲しいのです。本来必要なことは「あなたがどんな釘を打ちたいか」にあります。5寸釘を打つのでしたら金槌で充分でしょうが、牧草畑に杭を打つためには誰もが大きなハンマーを用意するはずです。そして、その釘や杭をどの範囲に、どんな模様に打ちたいのかが重要なのです。

一度、上空に上って塾の全体像を眺めてみましょう。どの部分に杭や釘が必要かを確かめることです。そして、それに必要な金槌を用意する。それこそがあなた独自のマーケティング戦略です。あなたは一寸法師を大きくした「打ち出の小槌」をご存知ですね。あれは一般人には何の価値も無いものです。一寸の体しか持たない彼にだけ必要な道具でした。この世に魔法の杖は存在しませんが、あなただけに使える「打ち出の小槌」は必ずあります。

マーケティングの基本は文章力

さて、「魂は言葉に宿る」と言います。どんなに優れた商品(授業)でも、それを伝える技術がなければ広く知ってもらうことはできません。その意味で「文章力」は塾にとって必須です。今回はマーケティングの基礎を成すコピーライティングの実践講座です。以前も「言霊コピーライティング」として紹介しましたが、マーケティングを「商品の良さをより多くの人に、早く正確に伝える技術」と定義するならば、文章力を無視することはできません。中には「私は理系畑で文章はどうも苦手です」と言う塾長もいますが、それでは「塾経営」は上手くいきません。ぜひ、トライしてください。

まず、次の文章を読んでください。

このコースは○○進学塾の最先端コースといえます。「独習」を徹底させる指導から始まります。「そんなこと自分の子供には出来ない!」と思われるかもしれません。しかし、お子様を見くびってはいけませんよ。我々にお任せいただければ充分に可能なのです。時間はかかりますが、ご家庭での協力があれば大丈夫です。自立したお子様は、学年枠に捉われずにドンドン独力で先取り学習が出来るようになります。こうなれば、本当にしめたものです!将来有望です。
また、当コースでは小中高を一貫させて、数年後には、大学受験指導までを一括プロデュースしていく予定です。北大や医学部などの現役合格を目指します。独自で最新の長期コーチング指導を提供致します!(後略)

これは本誌6月号で紹介した「春期講習で例年の4倍強の売上」を達成した塾が、チラシに載せる予定だった文章(ラフ案)です。同塾が今春新に開講した「小中高一貫エリート育成コース」についての説明文です。読んでお分かりのように、自立学習を中心とした指導で大学受験までを視野に入れたコースです。ところが「独習」の説明に大半を費やしてしまったため、本来の「商品力」が上手く伝わっていません。

そこで私は、次の文章のように直してみました。

このコースは文字通り、ここ北の大地から将来の日本をリードする真のエリートを輩出するコースです。言われたことしかできない受身型のひ弱な秀才をエリートとは言いません。また、自分さえ良ければ…という身勝手な天才もエリートではありません。いわゆる豊かな人間力を備えた精神的にたくましい人物を育てたいのです。

そのためにはまず「独習」を徹底させることから始まります。学年を超えて先取り学習ができるようになることが先決です。大人の勝手な判断で子供の知識欲と吸収力を過小評価してはいけません。多少時間は掛かりますが、誰でも独力で先取り学習は出来るようになるのです。それは塾歴十六年の経験から得た私の結論です。

そして北大をはじめとする上位校への現役合格を実現します。私達が徹底した長期サポートにより、お子様のたくましい成長を学習面から総合的にプロデュースします。(後略)

まず、塾が考える「エリート」の定義を紹介することによって塾の理念を知らせます。そして、その本当の意味での「エリート」に育てるためには「独習」が不可欠であるという理論構成です。このコースは週1回90分の指導で月額15,750円というかなり高額な授業料設定です。前者の文章だと「自習に15,750円も払うのか」という読後感(誤解)を招きかねません。後者の文章にすることによって、このコースを選択する意義がより鮮明に伝わるようになりました。

この塾の所在地は、今、何かと話題の札幌です。秀英予備校の進出により、大手塾も中小塾も件並み値下げ競争に走っています。そうした中、この塾は6日間72,450円の春期講習を成功させ、他塾の2倍近い授業料構成にもかかわらず、昨年度を大きく上回る塾生数を獲得しています。何と塾生の4人に1人が医者の家庭です。(67分の18/5月末現在)

何度も言いますが、全ての子供、保護者に振り向いてもらおうとすると失敗します。2割の保護者に「そうそう、そうなのよ」と思ってもらうこと。それが大切です。「ウチの塾はどんな子供が来ても対応する」という姿勢は尊いのですが、それは傲慢さと紙一重ということも覚えておいてください。京都の「一見さんお断り」は店の傲慢さの象徴ではなく、客を大切にするという謙虚さから生まれたのです。後者の冒頭「言われたことしかできないひ弱な…」というエリートの定義は、まさに「そうそう、そうなのよ」を誘発するためのものです。

ラフ案の最大の欠点は、文章全体から塾の「自信のなさ」が滲(にじ)んでいることです。「この価格では誰も申し込まないかもしれない…」のような。これも繰り返しになりますが、自信の伝わらない商品は絶対に売れません。堂々と「この商品の価値が分かる人だけ来てください!」と言うべきです。そして、来ていただいた方に後悔させないように死に物狂いでサービス(学習指導)の提供をする。それしかないのです。

価格戦略のときに話をしましたが、「ウチの塾は高いから客が来ない」と思っている塾は値下げをすると更に客離れを起こします。なぜなら、自信のなさがモロに伝わってしまいますから。

文章力が向上すると「チラシの反応率」「講習の受講率」が上がってきます。前回指摘したように感動の創造を支えているのは技術力です。あなたの文章力が利益を産む源(みなもと)になることを知ってください。

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