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中小塾のためのマーケティング講座(24)
「『あの塾は高い!でも…』と言ってもらおう!(2)」

森智勝氏

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先月号で価格戦略の重要性についてお話しました。特に、安易な値下げはするべきではないことと、高プライス・高クオリティーを目指すことをお勧めしました。
とは言え、「値上げ」は最も困難な道であることも確かです。誰もが顧客から苦情を言われるのは辛い。できれば「いい人」と思われたい。また、何の前触れもなく「授業料改定のお知らせ」なるものをご家庭に配れば反発されるのも道理です。
今回は授業料の「値上げ」をスムーズに成功させた事例をご紹介します。

春期講習・売上げ4倍増達成

今年の春期講習で例年の4倍以上の売上げを達成したA塾の例です。
まず、周辺環境は次の通りです。

「地域のほとんど全ての塾では、春期講習の受講料に関しては、格安である。
毎年のことであり、伝統ともいえる。
無料~1万円台がほとんどである。3万円を超えるところは稀有である。
当塾でも今までは、慣例にしたがって激安価格で提供し続けてきた。(塾長報告より)」

春期講習は新規塾生獲得の一貫として低価格路線が全国的な傾向です。この地域も大手塾の激安路線に引きずられるように、全体的に価格破壊が進んでいました。
その中でA塾は、思い切った高価格戦略を採りました。

「他の塾と同じことをやっていても良いのか?同じ土俵に立っていて良いのか?
価格が安いということは、自信がないということではないか?
今年は勝負の年だ、自信を持って、強気に、適正価格で、最高の指導を提供したい!と
考え、敢えて逆らって高価格設定を断行した。(塾長報告より)」

A塾は中学生、それも新3年生にターゲットを絞り、7万円台を筆頭とする高価格なコース設定をしました。結論から言うと大成功でした。新中3の受講率は100%、半数が最高価格コースを受講しました。

(1) 72,450円(50%) (2) 55,440円(42%) (3) 30,240円(8%)

同様に、63,000円を筆頭とするコース設定をした新中1、中2も全体として73%の受講率を確保し、結果として例年の4倍以上の売上げを達成したのです。その勝因はどこにあったのでしょう。

(1) 何と言っても、春期講習の案内のパンフレット。学年別にパンフレットを分け、10ページ近い長文で力強く情熱的に受講のアピールをし た。熱意が伝わって嬉しい。

(2) 2月の下旬から3月の上旬にかけて、一斉に三者面談を行い、(1)のパンフレットを添えて直にアピールしたのが良かった。
(1)と(2)両輪がうまく機能した。

(3) 1月から3回に渡り撒いたチラシ、広告戦略もうまく機能した。セグメントにより、もともとヤル気と能力があり、高価格でも良い環境で学習 したいという生徒が集まった。(塾長報告より)

例年の数倍の価格で提供する以上、その理由を明示する必要があります。そのためにA塾は1学年10ページにも及ぶパンフレットを作成し、三者面談で受講の必要性をしっかり伝えています。塾長報告には載っていませんが、加えて3月中旬に「教育説明会」を開き、そこでも訴えています。

見逃せないのが(3)のチラシ戦略です。「高価格」をキーワードにした戦略により、新規募集、春期講習とも過去最高の数字を達成しています。(個別指導塾ですので通常の授業料も他塾と比べて高価格です。)塾長報告にもある通り、高価格でも本物を求める層は確実に増えているのです。

A塾の春期講習は熱かったと思います。これで期待を裏切ったら「客」から見捨てられてしまうからです。でも、そうした緊張感が塾の力量を高め、信頼感を高めていくのです。

カリキュラム変更で授業料1.5倍

「生徒が半分になっても・・・の覚悟で教室を改装して1対4の個別に改め値段を上げましたが、それがために退塾した生徒は2名。というより、それは変えなくても3月には辞めるだろうと予想済みの生徒でした。」

そう語るのはB塾の塾長です。教室を改装して、それまでの自立学習型のスタイルから個別指導スタイルに今春変更したばかりです。

「2月27日の説明会では保護者宛の案内に「出来上がった教室で・・・」と書いていたにもかかわらず改装が間に合わず、説明会の直前までジャージにトレーナー姿で友人の電気屋さんの配線工事を手伝っていました。一応スーツを用意していましたが、そのままの格好で「こんな汗臭い格好ですみません、今まで電動ドリルを初めて使って配線工事を手伝ってまして…。説明会の後も、完成するまで今夜は頑張ります。」とパネル上部から配線が飛び出たままのブースに座ってもらい、電動ドリル、ニッパーなどの工具が散乱する中での説明会となりました。
初めは私も値段を上げることに恐縮してしゃべっていましたが、だんだん話は横道にそれ、「子供を甘やかすとろくなことはありません!塾で必死にやっても家庭でそんな調子だと…」ふと気づくと説教調になってしまって、「あ、いかん!」
帰りに「先生、値段は上がるわ、時間は短くなるわ、説教されるわ」とぶつぶつ言ってたお母さんが後日「3人目もお願いします」
また、友人を二人紹介してくれたり、過去に退塾した生徒のお母さんからの紹介があったり、分からないものですね。(B塾長談)」

B塾長と保護者の間に信頼関係が築かれている様子が伺えます。値上げを申し出た場合、保護者は礼儀として?苦情を言うものです。しかし、信頼する塾長の考えたことだからと、ほとんどの方が納得をしてくれています。後は、その信頼に応えるべく子供達の成績を上げ、「塾長を信頼してよかった」と思ってもらうことです。B塾の春以降の授業が熱くなったことは言うまでもありません。

両塾に共通することは、塾長自らが保護者の面前に立ち、説明責任を果たしていることです。けっして、紙切れ1枚の通告で終わっていません。信頼関係が構築できていれば、値上げについて理解を得ることは出来るのです。「お子さんにはこのような教育が必要です」→「そのためにはこれだけの費用が掛かります」→「わたしが責任を持って結果を出します」そうした説明が通用する人間関係を保護者との間に作っていくこと。それが価格戦略を成功させる条件です。

デフレ経済が一向に改善の兆しを見せない中、ここ10年近く授業料改定をしていない塾を多く見かけます。しかし、決まって経営的には苦しんでいます。ビジネスにおける適正価格とは「客もハッピー、店もハッピー」になる価格のことです。そう、「買ってくれてありがとう。」「売ってくれてありがとう。」と言い合える関係。そんなコミュニティーを地域との間に作ってください。これからの中小塾にとって不可欠な「地域密着」とは「近くの子供しか通わない塾」のことでは決してないのです。

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