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中小塾のためのマーケティング講座(23)
「『あの塾は高い!でも…』と言ってもらおう!(1)」

森智勝氏

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最初に次の2つの文章を読んでください。

(1)塾講師をしています。経営者から突然「業績が思わしくないので給与を下げる」と一方的に宣言されました。「こんな塾辞めよう」とも思うのですが、転職先の目処(めど)もなく悩んでいます。

(2)生徒が増えないと、いろいろなことを考え「集団授業の塾に比べて月謝が高いことが原因だ」と思ってしまったのです。塾生の数が減少するのと比例して授業料も下げてきました。結局一緒でした。授業料が下がったからといって問合せが増えたわけでもなく、入塾者が増えたわけでもありませんでした。講習にしても講習費を下げても受講率は上がりませんでした。ポイントが違っていました。生徒が増えないのは、塾に魅力がないから増えないのであり、授業料が高いからではなかったのです。やっと気付きました。

これらは最近寄せられた中小塾に勤務している社員講師からの切実な訴えと、ドン底を脱しつつある塾経営者の報告です。どの塾にも起こり得る問題です。これらを基に塾の価格戦略についてお話しましょう。

未塾経営に安易な値下げは禁じ手

マーケティングとは少し外れますが、マネージメントの問題は重要です。これをお読みの方は塾経営者がほとんどだと思いますので、その視点でお話しします。

それぞれの最低限の役割を整理すると次のようになります。

●経営者-利益を出す仕組み作り
●塾長(教室長)-塾生を増やすこと
●講師-塾生の成績を上げること
●アルバイト-エラーをしないこと


経営者の最大の責任は利益を出すことです。しかし、そのために一方的な給与カットに走るのは禁じ手です。ご自分の車を売ってでも社員の給与を払うべきです。また、酷なようですが、そうなる前に会社を整理する決断をすることも経営者の責任です。もともと塾は「現金先取り、経費後払い」という他業種が羨むほど倒産しにくい業種です。そのため、倒産するときは周り(取引業者、従業員、顧客等)に多大な迷惑(損害)をかけてしまいます。デッドラインはどこかをしっかりと見極め、その手前で何らかの対処をしなければなりません。ところが、なまじ?現金が先に手元に入るため、そのデッドラインに気付かずにズルズルと、あるいは気付いても「何とかなるさ」と結局、何の手も打たずに泥沼に沈んでいく塾があります。

そうした塾が最初に打つ手段の特徴は…「値下げ」です。それが最も簡単な方法だからです。また、冒頭の先生のように、授業料を下げれば生徒は増えると勘違いをしているからです。しかし、効果的な方法だとはとても言えません。我々が扱っている商品が既製品のチョコレートならば当てはまる需要と供給の法則も、サービス業では通用しないのです。逆に、塾生が減少する→経営が苦しくなる→授業料を下げる→売上げが減る→より経営が苦しくなる…という悪循環に陥る可能性の方が高くなります。これは消費者の心理を考えると分かります。授業料を下げるということは、自らの商品に自信がないことを吐露しているようなものです。目に見えないサービスを提供している業界にとって「自信のなさ」を伝えることは致命的です。よっぽどの戦略があれば別ですが、中小塾に「値下げ」はお勧めしません。

「値下げ」という安易な手法に頼る経営者は、次の一手も安易な手法を選択します。それが冒頭の賃金カットです。

以前とは違い、経営者と従業員は主従関係ではなくビジネスパートナーと捉える必要があります。ビジネスパートナーとは本来、「相手がいなくても充分やっていける者同士が、協力したほうがより大きなメリット(付加価値)を生むから提携する」関係を指します。つまり、誤解を恐れずに言えば利害で結びついた関係のことです。社員講師である「あなた」の力で塾生100人を集めることができれば、給与カットもなく転職先に困ることもないでしょう。また、そんな優秀な講師を手放す「バカな」経営者はいません。

経営者の仕事は利益を生み出す仕組み作り

顧客満足と並んで、最近では社員満足が重要視されています。どうすれば社員満足は向上するか。以前参加した中小企業参加のセミナー分科会でこんな意見を聞きました。

「お客様の喜びの声を聞いたときに社員は満足を感じると思うのだが…」

車の修理工場を経営する社長の意見です。もちろん、その考えを否定するものではありませんが、こうした考え方の経営者は「お客様に喜んでもらうために商品をより安く提供する」戦略を採る傾向があります。お客様を喜ばすためには「値下げ」が最も分かりやすい手法だからです。すると確実に社員(この場合は塗装技術者ですが)の満足度は落ちていきます。誰が考えても「他社より安かったとお客様が喜んでいたよ」と言われるより「あなたの優秀な塗装技術のために他社より20%も高く商品が売れている。ありがとう。」と言われる方がモチベーションは上がります。同様のことが塾経営者と講師の間にも成立するビジネスパートナーの法則です。

講師は自らの技量を上げ、塾にとってなくてはならない存在になる。経営者はそれ(塾にとって講師は商品の中心です)を出来るだけ高く売る努力をする。そうした関係を築くことが「元気な塾」の条件です。

誰もが自己実現を望み、それを評価されることを望みます。賃金カットは講師に対して「あなたの力量は低い」という評価を突きつけ、経営者としての最低限の義務を放棄すると宣言するに等しいのです。これでは塾内のモチベーションが上がることはないでしょう。そして社員満足のない職場で顧客満足を作り出すことは不可能です。

サービス業における顧客満足はけっして「低価格」ではありません。価格を上回る付加価値を享受できたと感じるとき、顧客は初めて満足します。また、自らの技量が他者よりも高く売れることを実感するとき、社員満足も実現します。サービス業たる塾は、そうした好循環の中で発展していきます。あなたの仕事は、いかにしてこの循環を作るかという「仕組み作り」にあるのです。

例えば授業料を半額にして塾生数が倍になったとします。(まず有り得ない想定ですが…)売上げ総額は変わりません。しかし、管理費・消耗品費等はアップします。もしかすると人件費や地代家賃も増えるかもしれません。確実に収益率は落ちるのです。安易な値下げが経営を圧迫することは明らかです。

少子化が続く中、これからの中小塾は基本的に「高プライス、高クオリティー」を目指さなければなりません。値下げが塾にとって最も安易な手法ならば、これは最も困難な手法かもしれません。しかし、中小塾が生き残り、さらなる発展をするためには避けて通れない道なのです。

「あの塾は授業料が高い。でも、あの塾に(あの先生に)お世話になりたい。」と言ってもらえる塾。そんな塾作りをしてください。そうした塾には顧客満足と社員満足がいっぱい溢れています。そして、人はそんなプラスのエネルギーに引き寄せられて塾に集まってきます。

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