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中小塾のためのマーケティング講座(22)
「退塾防止は「飽きる」の撲滅から」

森智勝氏

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塾にとって退塾を防止することは重要な課題です。いくら新規塾生を獲得しても、退塾者を多く出していたのでは「穴の開いたバケツに水を注ぐ」ようなものです。また、退塾者はけっして良い評判を作ってはくれません。退塾防止は塾にとって緊急の、そして日常的な課題です。退塾理由の1番は「成績不振」です。当然、指導力(商品力)の充実が最優先であることは言うまでもありません。ここでは別の要素、「顧客心理」に立ったマーケティングについてお話します。

「客離れ」3つの原因

一般に「客離れ」の原因には[1]忘れる[2]飽きる[3]卒業する、の3要素があると言われています。[1]の「忘れる」は日常的に起こる現象です。例えばあなたにもこんな経験はありませんか。毎日のように通っていた馴染みの喫茶店があったとします。ところが仕事が忙しくなり2週間ほど行くことができませんでした。すると、次に顔を出すと何か言われそうで気まずくなり、行きそびれているうちに行かないことが日常になってしまった…。これが「忘れる」という現象です。塾の場合も同じです。何かの理由で長期欠席した塾生が、そのまま退塾してしまうということはよくあることです。これは「顧客ロイヤリティーは接触回数と比例する」という原則にも当てはまりますし、「人は3週間で日常化する」という原則にも当てはまります。つまり、長期欠席者を3週間そのままにしていると「塾に行かないことが日常」になってしまうのです。学習意欲減退のように理由がはっきりしない場合はもちろんですが、病気や怪我が原因の長期欠席、スポーツや音楽活動を理由とした場合(大事な大会が近い等)、長期旅行の場合(語学研修留学、里帰り等)のように、原因がはっきり分かっている場合も、その間の接触を忘れていると思わぬ退塾に結びついてしまうことがあります。
[3]の「卒業する」は塾にとって避けられない運命です。パソコン教室や英会話教室、通信講座等、教育産業では当たり前のことです。見方を広くすると、若い頃は夢中になったアイドル、ファッション、ディスコ、ギター…これらも「卒業する」に入るでしょう。ところがピンクレディーが復活したり、「中年バンド」がブームになって若い頃は手が出せなかったギブソンのギターが売れるようになるなど、「卒業生」が帰ってくることもあります。中小塾が地域に根ざした活動を続けることでコミュニケーションネットワーク(口コミ・評判の流通経路)を作ることは重要です。以前にもお話しましたが、いかに卒塾生・保護者のネットワークを作るかは、今後の塾の繁栄に欠かせない要素です。その先に「親子2代で通う塾」すなわち卒業生が帰ってくるという現象も生じます。

「飽きる」を撲滅するために

退塾防止の中心課題は[2]の「飽きる」です。人は日常化したものには安定を感じつつも「物足りなさ」も同時に感じてしまう困った?生き物です。行きつけの居酒屋があっても、新規開店した店があると一度は覗いてみたくなるものです。そして、そこの居心地が良ければそこへ通うことが日常になっていく。よくある客離れの瞬間です。誰もが「安定を望みつつも変化を求める」という相反する2面性を持っているのです。
塾の場合も、新規開校時はある程度の集客は期待できます。誰もが新しいものには期待感を持つからです。(もちろん、それなりの戦略・戦術は必要ですが…)近くに新しく開校した塾に多くの塾生を取られ、ショックを受けたという経験を持つ方は多いのではないでしょうか。「あれほど熱心に指導して結果も出し、コミュニケーションもうまくいっていると思っていたのに…。」実は、私も若い頃に経験があります。「なぜ、その地域での実績もない新しい塾に移ってしまうのだろう。」その時は本当にショックでした。正直「裏切られた」とさえ思いました。しかし、今では原因が分かります。子供達は、そして保護者も「飽きて」いたのです。そのとき、近くに魅力的な新しい塾が登場し、一部の塾生は新しい環境を求めて移動していった。逆の言い方をすると「客を飽きさせない努力」を怠っていたのです。
では、どうすれば「飽きさせない」ことができるか。小さな変化を日常的に積み重ねることです。
例えば・教室のレイアウトを変える・メッセージポップを張る・掲示板を一新する・塾の写真館を作る…教室に来る子供達が「今日はここが変わっている」「次は何が変わっているだろう」とワクワクして通塾してくるような工夫をすることです。日常の中に小さな変化を忍ばせるのです。いつものように塾に来て、いつものように授業を受け、いつものように帰って行く…その中に「飽き」は発生します。それは静かに発酵し、いつか退塾という形で顕在化します。
ほとんどの塾はクリスマス会やスポーツデイなどのイベントによって塾運営に変化をつけているでしょうが、それだけでは不十分です。ぜひ、10分でできる日常の変化を心掛けてください。

「飽きる」はあなた自身にも起こっている

なぜ、日常の変化がそれほど重要か。それは「飽きる」という現象が子供や保護者だけでなく、あなたの中にも無意識のうちに起こってくるからです。惰性・慢心と言葉を変えてもいいでしょう。
1月に次のような相談が寄せられました。
「1月に途中退塾者が出ました。それも次々と4人も。開校3年目で、これまで一人の途中退塾者を出さなかったのに、いったいどうしてでしょう。対応方法がわからず苦慮しています。」
もちろん本当の退塾原因は個々の問題があるのでしょうが、こうした現象は不思議なことではありません。開校時は塾長もモチベーションが高く、情熱に燃え、来てくださった生徒に全力で対応します。その熱いエネルギーが生徒、保護者に伝わり、評判を呼んで塾生数も増えます。ところが、3年目くらいになると塾長の中に知らず知らずと惰性・慢心が生じてきます。いわゆる「飽きて」くるのです。また、「新教室」という新鮮味(アドバンテージ)も薄れる時期です。「去年も春に30人来てくれたから、今年もそれくらいは入塾者があるだろう。」と思っていると、その半分も獲得できなくなったりします。そして、退塾者が発生を始めます。
これは塾(塾長)の側に生じた「飽きる」現象が原因です。放出するエネルギー量が減退してくるのです。それを防ぐためにも日常の中の小さな変化は必要です。「どうすれば子供達がワクワクして塾に通ってくれるか」を考えることで、塾(塾長)も常にワクワクしている…そうした状態を保つことが塾のエネルギーレベルを落とさないための必須条件です。
退塾者数を0にすることはできません。引越し等の避けられない事情も当然あります。しかし、常に退塾者数0を目指して小さな変化を心掛けることは塾の活性化につながり、力量を高めることにつながります。また、あなた自身が毎日ワクワクしながら仕事をする方法でもあります。あなたのワクワクが伝染して子供がワクワクします。それは必ず地域へと伝染するのです。
以前もお話したことがあります。ワクワクすることは「天職」への近道です。今年度もワクワクしながら新鮮な気持ちで1年間を過ごしてください。

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