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中小塾のためのマーケティング講座(18)
「『客』はあなたが選ぶのです!」

森智勝氏

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不振塾に共通の悩み

今私のところに寄せられる質問、悩みは多岐に渡ります。経営不振の塾から特に多いのが
(1)「学力レベルの低い子しか来ないのですが…」
(2)「授業料を上げたいのですが、地域柄、授業料を高くすると生徒が集まりません…」
(3)「中3生の比率が多く、春になると毎年不安でいっぱいです…」というものです。
読者の中にも同じ悩みを抱えている人が多いのではないでしょうか。これら3つの悩みの根源は1つです。「あなたが客を選んでいない」ことが主な原因です。

(1)の「学力レベルの低い子しか…」と悩んでいる塾のチラシや看板には決まって「基礎から難関校進学まで」と書いてあります。成績による入塾基準も設けていません。以前も指摘したことですが、「どんな子でも受け入れます」という塾には誰も興味を持ちません。「誰にも嫌われたくないと思っていると誰からも好かれない」これは真実です。「誰でもどうぞ」と言われると、自分にとって、あるいは我が子にとって相応しい塾かどうかが分かりません。人は分からないものには近寄らない性質を持っています。教育意識の高い家庭ほどその傾向は強くなります。子供にとって最も適した塾を選択しようとします。結果、「基礎から」を必要とする子供だけが集まってくるという現象を生み出してしまうのです。「基礎から難関校進学まで」と対象を広げると、低いレベルに吸引されるのは自然法則です。

また、そうした塾のチラシをみると漫画イラストを数多く使っている傾向があります。そして文字数が少ない。そのことについて塾長に尋ねると「広告代理店の人に『文字数が多いと読んでもらえないので少なくしましょう』と言われて…」という返事が返ってきます。このシリーズの初期に「チラシの文字数と反応数は比例する」と書きましたが、正確には「教育意識の高い保護者からの反応数が多くなる」のです。悲しい現実ですが、親世代で「文章の読めない」人がかなりいます。私の回りでも読むのは漫画とゴシップ週刊誌だけという人は少なくありません。多くの文字で塾の理念や方針を説明したチラシを読んで問い合わせてくる保護者は、学力レベルが高く、総じて教育意識も高いものです。そして当然のことですが、そのお子さんの学力レベルも高い。漫画イラストに惹かれて問い合わせしてくる家庭との違いは歴然としています。
つまり、成績レベルの低い子しか来ないのではなく、塾自身が成績レベルの低い子を引き寄せているのです。

(2)の「授業料を高くすると…」という悩みも同様です。「もっと授業料を上げたいのだけれども…」と言いながら躊躇する気持ちは充分理解できますが、ひとつ考えてほしいことがあります。「安いから」という理由で通っている人は本当にあなたの理想とする「客」ですか?本来は「授業料は高い。でも○○先生に教えて欲しい。△△塾でお世話になりたい。」と言ってくれる人が理想の「客」なのではないでしょうか。だからこそ「そうした期待に応えよう」と指導に力も入るというものです。私は無方針のボランティア(無料補習や無料対策授業)をお勧めしません。受ける側にも指導する側にも甘えと妥協が生じるからです。「サービス」を無料の意味で使う傾向(例えば「今、テレビを買うとCDプレーヤーをサービスします」のように)がありますが、本来サービスの提供には適正な対価が付き物です。人は「価格」を見てサービスの質を推し量ります。安い授業料を設定していると、それがあなたの提供する「商品」の価値となり、その価格を求める客層が集まってきてしまうのです。
「他店より1円でも安く売ります」と「安さ」を売り物にする量販店の関係者は「これだけ安く提供しているのに値切る客が多い」と嘆きます。でも、それは当然のことです。「安さ」を求める客を自ら集めているのですから。
近隣他塾の授業料と比較するのも無意味です。同じ「塾」というだけで、提供している「商品」は全く別物です。チョコレートにも10円の物から数千円の物まであるように、品物が違えば価格が違って当然です。授業料を上げると確かに今の客層は離れるかもしれません。しかし、価格に見合った(あるいは上回る)商品を提供し続ければ、必ず別の客層があなたの前に現われます。乱暴な言い方をすれば、「あなたが理想とする授業料を設定する。そして、それに見合ったサービスを提供する。」という順番で考えた方がよいのです。現在、世に出回っている商品のほとんどがそうした考え方で作られています。自動車も「エンジンがいくら、タイヤがいくら…」という積算方式ではなく、「価格150万円で主婦層をターゲットとした車」というコンセプトが先に決まり、それに合わせて開発が行われます。マンションも「価格」が一番に決まり、「内装」は後から決定されるのです。

(3)の「中3生の比率が高くて…」というのは個別指導、自立指導塾に多く見られる傾向です。また、集団授業形式の塾でも、定員を設けていない塾はこの悩みを抱えています。一人でも多くの塾生が欲しいため(その気持ちは本当によく分かるのですが)入塾希望者を全て引き受けてしまいます。中には高校生部門を持っていないにもかかわらず、10月や11月でも中3生を受け入れる塾があります。当然、周りからは「いつでも入れる塾」と見られ、「塾は受験が近くなった中3からでいい」と考える人が集まってくることになります。結果、中3だけが肥大化する文鎮(ぶんちん)型塾生構成の出来上がりです。卒塾生の比率が高い塾は、毎年のように塾生激減の不安から逃れられません。経営的にも不安定な状態が続きます。各学年がバランスよく構成されている塾は「中3生は満席のため募集していません」あるいは「中3生は2学期以降の入塾をお断りします」としています。そのことによって「あの塾は中3からは入れない。空席があるうちに…」という評判を生み、低学年からの集客を成し遂げているのです。人は「行列の並ぶ店」には並んでも入りたくなるものです。

理想の塾は苦しい一歩の積み重ねから

これら3つの悩みの原因は「客はあなたが選ぶ」というビジネスの原則を忘れてしまっていることにあります。逆の言い方をすれば「そうした客を無意識のうちに選んでしまっている」のです。
先月号で「理想の塾」についてお話しました。理想の塾には当然「理想の客」が必要です。ビジネス(マーケティング)の3大要素を「人」「金」「物」と言いますが、その意味を勘違いしている経営者が多い。昔の「人」は従業員を指していたかもしれませんが、買い手市場になった現在の「人」とは「客」のことです。(ちなみに「先立つものが…」というセリフがあるように、かつては資金が最も重要視されていましたが、現在では「人」が最も大切です。)
理想の客を集めることです。客はあなたが選ぶのです。学力レベルの高い子供を集めたいのでしたら入塾基準を設け、基準に達しない子は断らなければいけません。高い授業料を設定したいのであれば、塾生が半分になっても歯を食いしばることです。残ってくれた塾生に「この塾で良かった」と思わせることです。文鎮型の塾生構成から脱却するためには学年別の定員を設け、厳格に守ることです。つまり、今の痛みに耐えなければ理想の塾は作れないのです。
今年、大リーグでイチローが安打数の大リーグ記録を打ち立てました。その時のインタビューで彼は次のように言っています。
「小さなことを一つ一つ積み重ねることで、とんでもないところへ来てしまった。」
掲げた「理想の塾」を一瞬にして実現することはできません。ほとんどの人がその壁の高さに恐れて尻込みをしてしまいます。しかし、それを成し遂げる人は壁の頂上から足元へ続く階段を作ります。一気には越えられない壁も、階段を作れば登ることが出来ます。一歩一歩、苦しくても歯を食いしばって歩を進めます。その苦しさから逃れようと何もしない人との違いは歴然です。
繰り返します。「今の辛さ」から逃れて理想の塾を諦めることは「未来逃避」です。あなたが「理想の未来」から逃げないことを願っています。

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