HOME > 塾経営最強コラム > 塾の常識は一般の非常識

中小塾のためのマーケティング講座(16)
「塾の常識は一般の非常識」

森智勝氏

写真

塾の一日は一般社会とずれている

今回は「塾業界の常識は一般社会の非常識」というテーマです。
我々は毎日を塾人として生活していますので、どうしても一般社会の常識に疎くなってしまいます。そのため、気付かないうちに大きなミスを犯してしまいます。

以前説明したようにチラシの目的は入塾を求めることではありません。電話を掛けてもらうことです。ところが電話を掛けてもらう工夫がほとんどされていない。塾に問い合わせの電話をかけるというのは、我々にとっては日常ですから気が付きませんが、母親の立場に立つとかなり勇気がいることです。ですから、その心理的負担をできる限り軽くしてあげなければいけません。その方法の一番は何か。
電話番号を大きくすることです。


電話番号が申し訳程度に小さくしか載っていないと、心理的に電話を掛けづらくなります。ところが、塾名は大きく載せているのに電話番号はその半分以下の大きさ、というチラシを多く見かけます。残念ですが、母親はよっぽどのブランドになっている塾以外は、塾名に興味がありません。そこの塾が「エルメス」ならばOKです。「エルメス」というだけで買う人がいますから。電話番号と塾名は基本的に、同程度の大きさでなければなりません。
次に受付時間を表示することです。

なぜ受付時間がないといけないのか。これも、我々の日常と一般の日常が違うからです。あなたの塾の出社時間は何時でしょうか。自宅で営業されている方は大丈夫かもしれませんが、朝9時出社というところはまずないはずです。そんなことをすると1日14時間労働とかになってしまいますから。大体出社時間が午後1時とか2時というところがほとんどです。その間、教室に誰もいないので電話が掛かってきても出る人がいない。留守電になっている。あるいは鳴りっ放しになっている。
ところが一般の人は、世の中は朝の9時から動いていると思っています。
一般の専業主婦の方が暇になる時間というのがあります。朝、家族を送り出して洗濯を終えて、一息ついて新聞に目を通すのが十時とか十時半です。そこでチラシを見て電話を掛けてくるわけです。ところが電話に出ない。問題は次です。出ないと、その母親は一体どう思うか…怒っちゃうんですね。「せっかく電話をしたのに出ないなんて…」そして別の塾に掛けます。塾を探している人は、チラシを見て2~4程度、候補塾が目の前にあるわけです。そこに順番に問い合わせます。
つまり受付時間を明記していないと、留守中に掛かってきた電話は、ほとんど他塾に流れていると思っていただいて結構です。
ですから、少なくとも「この時間なら必ず電話に出ますよ」という受付時間は、大きく明記すべきです。そして、それ以外の時間も、留守電あるいは転送等の方法を使って出来る限り受けられるようにすべきです。

また、受付時間が書かれていても「月曜日から金曜日午後2時から7時まで」のように、非常に時間を短くしているところがあります。一般の母親の夕方7時までの生活パターンを考えると、とても忙しくて電話ができない。夜、暇になるのは、夕食が終わって片付けをして…子どもを風呂に入れている間、大体8時前後からでしょう。
ところが、その時間に電話を掛けようとしたら「あら受付時間が過ぎているわ」と。すると、やはり同じパターンで他塾へ流れていきます。受付が7時までとなっている塾は、それだけで何本か自分か気づいていない間に客を逃しているはずです。
なぜこのようなことが起こるかと言いますと、ほとんどの塾が自分の都合で「仕組み」を作ってしまっているからです。顧客本位で作っていない。
かつて公的資金導入のときに銀行が強い非難を受けたことがありますが、理由の一つは3時で窓口を閉めてしまうからです。3時で窓口を閉めてしまうのは「3時で閉めないと自分達の業務が定時に終わらないから」です。自分の都合です。
最近では窓口を午後7時から再開する銀行も登場しています。塾業界は、多分サービス業の中で最もその点の配慮が遅れている業界の一つだと思います。「勤務時間が2時から10時だから受付もその時間」「7時になると事務職が帰ってしまうので受付は終了」顧客本位になっていないのです。一度、自塾の受付体制を見直してください。

消費者は「商品」を求めていない

電話受付に関しては技術的な修正で解決しますが、もう一つ、一般社会と塾の間に根本的なズレがあります。
塾にとっての「商品」とは何でしょう。「授業」と答えられる方が大半だと思います。それは間違いではありません。では、消費者である生徒、保護者は商品である「授業」を本当に求めているのでしょうか。

以前も触れたかもしれませんが、全てのビジネスにはウォンツ(欲求)とニーズ(必要)の2要素があります。レストラン・映画・テーマパークなどはウォンツ、病院・弁護士・税理士などはニーズで成り立っていると言っても良いでしょう。すると「塾」は…と考えると、後者のグループに属しているのは明らかです。
ニーズで成り立っているビジネスの特徴は、「消費者は商品そのものを求めていない」ことです。皆さんは歯医者へ行きたいという欲求を持っていますか?ほとんどの、いや、全ての人が「歯医者には行きたくない」と考えているはずです。だから、虫歯があると分かっていても痛み出すまでは歯医者に行きません。塾も、消費者の立場から言うと「行かないで済むなら行きたくない」「行かせないで済むなら行かせたくない」ものなのです。
そうした業種の場合、「消費者は商品そのものを求めていない」ことになりますから、いくら商品の良さを声高に訴えても消費者の耳には届きません。医者が自分の力量を誇示しても、人は39度の熱が出ない限り病院へは行かないのです。
では、彼ら(生徒・保護者)が本当に求めているものは何でしょう。
実は、抱えている悩みの「問題解決法」を求めているのです。「志望校に合格する力がない」「家では全く勉強しない」「頑張ってはいるが成績が伸びない」等々、彼らは様々な悩みを抱えています。その悩みを解決する方法を塾に求めているのです。ですから、あなたが提供すべきものは、そうした悩みに対する「解決法」でなければならないのです。
ところが多くの塾がその点を理解していません。それはチラシではもちろんですが、電話対応の場面に顕著です。
母親は初めて問い合わせた塾に自分の(子供の)悩みを打ち明けることはしません。ですから、時間割・授業料等の当たり障りのない質問から始める傾向にあります。あなたが聞かれたことだけに答えていると「では子供と相談してみます」となって2度と電話が掛かってくることはありません。なぜか。本当に知りたかった問題解決法を、その塾は与えてくれなかったからです。では、どうすればいいのでしょうか。

簡単なことです。聞いてあげるのです。
「塾にお電話をいただいたということは何かお困り事があるのではないですか。私でよろしければ出来る限りのアドバイスをさせていただきます。」
そうして初めて母親は少しずつ悩みを打ち明け始めます。その悩みに答えてあげることで、つまり問題解決法を提示することで塾に対する信頼を得ることが出来るのです。そして最後に「よろしければ私からご本人さんに直接アドバイスをしましょうか。入塾云々は別にして、一度教室まで起こし下さい。」と誘ってみましょう。100%来塾します。その時は、あなたを「問題を解決してくれるメンター」として認めているからです。
「商品を売るな、感動を売れ」というマーケティング鉄則は、ここでも生きているのです。

→次の記事を読む

 
© 2015 全国学習塾援護会