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中小塾のためのマーケティング講座(15)
「『英雄伝説』で考える感動作り」

森智勝氏

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英雄伝説の誕生

前回、物語の重要性について述べました。「人は感情移入をすることによって共感する」この原則に基づく戦略です。そして、「こんなに熱心に指導している」ことを物語として伝える効果を説きました。また、創業時の苦労話も例に挙げました。これを一歩進めて、今回は「塾自らが物語の舞台になる」方法について述べたいと思います。

どこの塾でも「成績上位者」を貼り出すことは当たり前のように実施しています。学校の定期テスト、校外模試、月例テスト…。「○○高校合格」というのも同じ趣旨で行われます。ところが、成績上位者は次のテストが始まれば基本的にリセットされてしまいます。また、「成績上位者」というネーミングはレッテルと同じ「記号」ですから何の感動も生みません。加えて、毎回同じ顔触れが並ぶことが多く、ほとんどの子供達にとって関係のない掲示物になってしまいます。

そこで生まれたのが「英雄伝説」です。

これは塾生獲得実践会の中で誕生した企画です。まず、ネーミングが素晴らしい。「成績上位者」は刹那的なものですが、英雄(ヒーロー)は永遠です。今でもウルトラマンや仮面ライダーは生きていますし、明日のジョーは我々の世代にとって文字通り永遠のヒーローです。(これは、「過去は売れるが未来は売れない」というマーケティング原則にも通じるのですが…ノスタルジーの活用と関連します。)

「英雄伝説」は成績上位者を「英雄」として表彰しようという考えから始まりました。しかし、「英雄」という概念を導入した瞬間、様々な英雄が存在することに気付きます。運動会のかけっこで一等賞になった子も英雄です。部活動の県大会に入賞した子、作文コンクールで金賞を取った子も英雄です。こうして、成績優秀者だけでなく全ての塾生にとって英雄になるチャンスが生まれます。そうした英雄達に「英雄認定書」を発行して張り出し、表彰するのです。実行した塾では、子供達のモチベーションが格段に向上しました。

「英雄伝説」は更に進化を続けます。「英雄認定書」が塾規定の枚数に達した生徒は「殿堂入り」と
いう仕組みが出来上がりました。殿堂入りした子供は立派な額で殿堂入り認定書を飾り、永遠に表彰を続けるわけです。
さあ、想像して下さい。入塾を希望する子供が母親と一緒に教室見学にやってきます。すると、廊下の掲示板に顔写真入りの「英雄認定書」がズラッと並んでいます。子供は母親と一緒に、その1枚1枚に目を通します。そして友達の名前を探します。

「あっ、これクラスの謙治君だ。」
「あらっ、向かいの洋子ちゃんも通っているのね。」

その瞬間、入塾の意志が固まります。子供達・母親は、「どんな先生が教えてくれるのか」と同様に、誰が通っているのかを心配しています。知り合い(友達)の存在が大きな安心感を与えます。その意味で英雄伝説の効用は大きなものがあります。

もう一歩、想像を逞(たくま)しくして下さい。子供が額に飾られた「殿堂入り」の表彰を眺めています。もし、そこに自分の父親の名前を見つけたとしたら…。そのときの親子の感動の大きさはどうでしょうか。

現在でも、親子2代に渡って通ってくるという塾は少なくないと思います。確かに20年以上に及ぶ時間の流れが必要ですが、「英雄伝説」は、そうした想像を掻き立てる魅力を持っています。塾が物語の舞台になる。それも大河物語の…。

かつて、日産は「技術の日産」と自己主張をしていました。技術的な優位性を一生懸命説明してきました。(そして不振に陥った。)現在の日産は「ものより思い出」と言っています。(そして業績が回復した。)私は偶然ではないと思います。物余りの現在、「良い品」を提供することは当たり前の時代なのです。そこにどれだけの感動を付加することができるか。私の脳裏には「土砂降りの中、車でキャンプに来た家族が協力してことにあたる映像」が焼き付いています。

学習塾も同様です。良い授業をすることは、もう当たり前なのです。「感動の創造」それこそが今の中小塾に求められています。あなたの塾は何をもって子供達に、保護者に感動を与えますか?

ネーミングは魔法の手法

「英雄伝説」の例から、もう一つ学びたいことはネーミングの重要さです。以前、「チラシは塾の器だ」と言いましたが、その例えで言うとネーミングは小鉢のようなものです。「成績上位者」を「英雄(ヒーロー)」と言い換えただけで、以後の展開がまるで違ってきます。言霊の国、日本では「名は体を表す」と言われるほど名前(ネーミング)は重要な要素です。ところが、この点に充分な注意を払っている塾がどれだけあるでしょうか。

例を挙げると、夏休みの講習はどこの塾でも一様に「夏期講習」と呼んでいます。「夏期講習」はすでに一般名詞化され、あなたの塾の講習を表す言葉には成り得ていません。当然、読者に対して何の感動も与えません。そこには、あなたの塾の講習を表すネーミングが必要なのです。一般名詞である「夏期講習」を使っている以上、講習内容の説明も変わり映えのしない、一般名詞的なものになってしまいます。結果、どの塾のチラシを見ても同じような説明が並び、消費者は選択基準が分かりません。(すると、「安心できる」という理由で有名大手塾の講習に申し込む傾向が強くなります。)そう、ネーミングは消費者に対する選択基準の提示でもあるのです。

感動の創造は塾長から

無関心、無気力、無感動の3無主義と言われる時代を保護者世代は生きてきました。今は無責任を加えた4無主義とさえ評されています。だからこそ、塾が感動を作り、提供し、その創造に子供達を参加させる演出を意識的に行う必要があるのです。そして、その大前提は主催者たる塾長が日々の業務を「感動を持って」行うことです。活き活きとワクワクしながら仕事をすることです。

「成績上位者」をプリントアウトして貼り出す事務的作業をしている自分と、「英雄伝説」として取り組む自分を想像して比べてみてください。どちらが意欲的になるか。そう、英雄伝説をはじめとする感動作りは、実は自分を感動させる手段でもあるのです。

かの有名な斉藤一人氏は言います。「天職を見つけるのは簡単である。自分がワクワクドキドキする方向へと進めばよい。そこにあなたの天職が待っている。」

さあ、子供達に感動を与えるのはあなたです。あなたは何にワクワクドキドキしますか?

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