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中小塾のためのマーケティング講座(12)
「たかがチラシ・されどチラシ」

森智勝氏

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チラシは集客の万能薬ではない

この原稿が掲載される頃は新学期の「塾生募集」も一段落していることでしょう。貴塾の今春の集客状況はいかがでしたか。

春先は多くの電話相談を受けます。会員さんはもちろん、本誌読者の方からも相談を受けることが多くなりました。そうした話を聞いていて皆さんに謝らなければいけないと思いました。私の説明不足というか、真意を伝えきれないところがあったらしく、誤解をあたえてしまったのではないかと危惧しているのです。つまり…「チラシさえ上手に作れば生徒はやってくる」と考えている人がいらっしゃる。

先月、久しぶりに入会キャンセルがありました。私は役に立たないものにお金を払っていただくのは心苦しいので、3ヶ月間の保証制度を設けています。ですからキャンセルされることには何の問題もないのですが、同封されていたコメントを読んで思ったのです。

1月末に塾生獲得実践会に入会してチラシの校正を依頼されたそうです。ところが、そのチラシで入会希望はおろか問合せの電話も入らず、期待外れだったと言うのです。

私のアドバイスが役に立たなかったことを棚に上げて言うのですが、春期(2月)に例えどんなチラシを折り込んだにせよ、1件の問合せも無かったということは、チラシ云々以前の問題が大きいのです。

ただ単に問い合わせの電話を求めるだけなら簡単です。チラシに大きく「お電話いただいた方、先着二十名様に五千円分の図書券進呈」と書けばよい。

春期募集を終えた今、もう一度チラシ(DM)の位置付けを整理したいと思います。

塾は教務力と経営力で成り立っています。教務とは授業のシステム(集団、個別、自立等)であり、講師の質・指導力であり、教材の良し悪し等のことです。別の言い方をすれば「商品力」です。

この教務力と経営力の重要度が5:5の割合です。そして、経営力の中には企画力、組織力、計画力、実行力等が含まれ、それぞれ戦略と戦術に区別されます。これが8:2です。(教務力の中も同様に戦略と戦術に区別されます。)チラシはその経営力の中の戦術部分、更にその一部でしかありません。全体からすると1割もないのです。だからこそ、ほとんどの塾が広告に掛ける予算を多くて全体の8%程度にしているはずです。

ところが、わずか数%でも、ジグゾーパズルのワンピースのように、そこが欠落しているから全体が機能していない塾があまりにも多い。

わたしが実践会設立当初から主張していることは、「真面目な学習指導を続け、地域に役立ってきた中小の塾が、ただマーケティングの手法を知らないというだけで大手塾の資本力に駆逐されていくのを社会的損失と考えるのです。」(入会案内より)ということです。けっして口先の言葉ひとつで塾生を集める「魔法の薬」を売ろうとしているわけではありません。(そんなものがあれば1千万円で売ります。)

確かにチラシを変えただけで、それまでの数倍の集客を実現した塾は多数存在します。それは、最後のワンピースがカチッとはまった結果であり、チラシ以外の9割がもともと優れていたからに他なりません。チラシが万能でないことは、チラシなど一切作らなくても充分集客している塾が存在することでも明らかです。

たかがチラシです。

チラシは塾の器(うつわ)です

では、「他の90%が不備ならばチラシを苦労して工夫することは無駄なのか」と問われれば、声を大にしてNOと言います。

チラシは器(うつわ)です。料理でも、素晴らしい九谷焼の皿に解凍しただけのミートボールを盛り付けようとする人がいるでしょうか?誰もがその皿に相応しい料理を考えるはずです。「器」を考えることは中身を考えることにつながるのです。

「人は形に反応する」という法則があります。ある塾のように、チラシのキャッチコピーに「公立受験なら絶対○○塾です!」と書いた瞬間から「より公立受験に役立つ塾」へと変化を始めざるを得なくなります。「それでもゆとり教育を支持しますか?」と問いかけた塾は、文部科学省の唱える「ゆとり教育」の対案を提供する方向へと自動的に動き始めます。つまり、チラシ作りを考えることはイコール塾の体質を見直し、変化を模索する作業に他ならないのです。

されどチラシです。

理想は「チラシの反応はぼちぼちですね。でも、昨年同時期と比較して2割アップです。」という姿です。実際、地域の有力塾はほとんどそうした動き方をします。ある程度の認知を得た塾は、チラシの反応率は落ちていくに決まっているのです。そのかわり春期だけでなく、年間を通して入塾者がやってきます。派手で高価なチラシが不要になり、広告宣伝費が軽減されます。

次の一手はコミュニケーション戦略

現在不調の「あなた」に必要なことは「魔法の薬」を探すことではなく、教室のレイアウトを変えることであり、元気が出るポップを張ることであり、1日1通の直筆手紙を書くことであり…今、自分が出来る塾の体質改善を考え、実行することです。人は行動することで意欲を増加させるという性質を持っています。春期の集客は過去1年間の力量の表れです。来春の集客は「今」にかかっているのです。

そうした取り組みを考える上で、常に念頭に置いてほしいことがあります。「コミュニケーション戦略」です。平たく言うと「如何にして塾生・保護者と仲良くなるか」ということです。人と人との関わりが希薄になりデジタル化が進めば進むほど、アナログ的なアプローチが有効になります。少子化は子供のひとり遊びを主流にし、「子供社会」の形成を阻んでいます。だからこそ塾側からの積極的なコミュニケーション戦略が必要なのです。

絶対に失敗はなく、かつ経費のかからない方法は「手書きの手紙」(ワープロ打ちはダメ)を送ることです。実行している塾は分かるのですが、手書きの手紙を送ると「お礼の言葉」「感謝の言葉」「感激の言葉」が多く寄せられます。日々の生活の中で、手書きの手紙をもらうということは既に非日常になってしまいました。ましてや塾から手紙をもらうことを保護者は予想もしていません。人は「予想を上回る出来事」「予想もしていなかった出来事」に遭遇した時、感動します。誕生日に行ったレストランで、突然目の前に差し出された特別サービスの「誕生ケーキ」に感激しない人はいないでしょう。

1日1通の手紙を書きましょう。入塾者への挨拶、退塾者へのお詫び、紹介のお礼…パターン毎の雛形を作っておくと手間もかかりません。長文・名文である必要はありません。「塾長から直筆の手紙が来た」という事実が重要なのです。

こうした提案をすると「私は字が下手だから」と尻込みをする方がいます。全く問題ありません。我々は学習指導のプロであり、けっして書道のプロではありません。丁寧にさえ書けば大丈夫です。相手に劣等感を持たせないので、字が下手な方がかえって良いくらいです。

さあ、あなたはどんな手段でコミュニケーションを図りますか。保護者と良い意味での「お友達付き合い」ができるようになること、それが地域に根ざした塾には不可欠です。実はチラシも地域とのコミュニケーションツールの一つと考えることができます。そう、けっしてチラシがセールスレターになってはダメなのです。

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