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中小塾のためのマーケティング講座(6)
「誰にでも好かれる塾にするな!」

森智勝氏

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マーケティングは技術だ

マーケティングというのは自分の持っている商品をいかに市場に対して伝えるか・広めるかという技術だ。テクニックに関する部分だ。だから、誰でも使える。どこそこの塾しか使えないノウハウとかテクニックなどはない。「あの先生だからうまくいった」とか、「あの地域だから使える」という技術はないのだ。先日も電話がかかってきて、「実践会の言うとおりのチラシにすれば、本当に塾生は増えるのか」と尋ねられた。私は予言師ではないので分からない。また、コピーライティングは塾が実践すべきことの一部でしかない。そこで「断言はできないが、こうしたチラシで塾生を増やした塾はありますよ」と説明すると、次はこうおっしゃる。「いや、うちの地域は特殊な地域で…。」つまり、ほかの地域と比べてお母さん方の教育熱が低くて通塾率が低いということを言われる。だから通用しないと言いたいのだろう。役に立たないと。もし私だったら、「うちの地域は教育熱が低くて、通塾率が地区全体低いのですよ。」などという地域があれば、飛んで行って教室を出す。だって「あの塾の生徒は学習意欲がすごく高くなって、みんな生き生きしている」という評判を作れば一人勝ちではないか。なぜ、ご自分で地域を活性化させることを考えないのだろうか?

セグメントの重要性

そして、そうした言い訳を探すことに忙しくて行動に移せない人は、1番にやるべきことが出来ていない。つまりセグメント(絞り込み)ができない。今、様々な業界で「ナンバーワン、オンリーワンでなければならない」と言われているのはご存知だろう。例えば小売店の場合、商品構成・商品量ではデパートにはとてもかなわない。だったら、洋服だけに絞り込もうと。それでもかなわなければ、婦人服だけに絞り込もう。そこまで狭くしてもかなわなければ、次は大きなサイズのみ扱う店にしよう…。つまり、自分のところが、ナンバーワン・オンリーワンになれるところまで絞り込みをかけるわけだ。それをしないと以前説明した上位2割には残れない。そこまで絞り込めば、婦人服の2Lサイズ以上―女性の場合SとかMとか言うのだろうか―ならば上位2割に残れるわけだ。すると、それを必要とする女性の方が、その商品を求めて集まってくる。

塾の場合も、どこまであなたが自分のお客さんの対象を絞り込んでいるか、という問題が存在する。中小塾の失敗の原因のほとんどは、すべての小中学生を対象にしてしまうことにある。大きな原則を知ってほしい。「誰にでも好かれようと思っている人は、誰からも好かれない」こういう人を八方美人と言う。つまり、みんなにいいこと言ってしまうから信用されない。子供たちの世界を見れば分かる。いじめブーム以後、子供たちは嫌われることを極度に恐れて、みんなにいい顔をしてしまう。誘いを断れない。付き合いが悪いと思われたくない。上辺だけの付き合いにすがる。結局、誰からも好かれなくなる。塾も一緒だ。すべての生徒に受け入れられる塾にしようとするから誰からも支持されない塾になってしまうのだ。

同じことが講師についても言える。塾によっては定期的に塾生にアンケートを実施していると思うが、支持率100%を講師に求めてはいけない。100%を求められた講師は、次第に「役に立たない」講師になってしまう。塾生に厳しいことが言えなくなってしまうからだ。

単純に考えてほしい。これはあくまでもモデルケースだ。その地区の中学校の、学年の生徒数が例えば200人だとする。ほとんど平均的に考えれば、通塾率は半分だ。そして、その2割の生徒に支持されれば、塾は生き残れる。つまり、この塾の目標とする学年の獲得数は20名だ。200人全員に来てもらおうと思うから、10人も集まらなくなってしまう。しかし、うちの塾は20名にさえ来てもらえばいい、この地区で20名、自塾を支持してくれる人たちを作ればいいのだと。そういったポリシーを持って、塾の理念なり指導方針を伝えていけば、必ずその考え方に共鳴してくれる消費者が現れる。

そのために大手の進学塾では成績によって絞り込みをする。内申点32以上とか、あるいは入塾テストで何点以上とか。それで、基準点に満たない人は入れない。「うちは成績のいい人を対象にしています。それ以外の方は、どうぞ別の塾へ行ってください。」そこが非常にはっきりとしているから、成績のいい生徒は、「この塾こそ僕の行くべき塾だ」と考え、最初からその大手塾を目指す。ところが中小塾の多くが「学校補習から受験指導まで」と謳い、塾の性格を分からなくしている。(もっとも、それすら謳っていない塾が多い。)

あなたの塾は、地域の子供たちあるいは保護者に、どんな塾だと思われているだろうか。どんな塾だと思わせているだろうか。私は塾訪問をする時、近所の子供たちに塾の評判を聞くことがある。「あそこにある何々塾はどういう塾?」そうした時、「あそこの先生ね、すごく怖いから僕、嫌!」と返事が返ってくる塾は繁盛している。つまり、その塾は「非常に厳しい先生が」つまり言葉を変えれば「熱心な先生が教えてくれる」という評判ができているわけだ。だから、そうした指導を望んでいる人は自ずとその塾へ行く。

ところが、地域で「どんな塾」という評判が立っていない塾は、自分にとって、自分の子供にとって、相応しい塾かどうかが分からない。だから、そんな塾には行かない。電話もかけない。人は分からないところには近寄らない。あなたも一見の寿司屋に1人で入る勇気はないだろう。

この「絞り込み」ということを、これからは考えてほしい。「私の塾はこういう塾だ。こんな理念で指導している。だから授業形態はこうだ。」というのがあって初めて、それを市場に対してアピールするためのマーケティングの技術が有効になる。伝えるものがなければマーケティングなんて意味が無い。なぜなら、マーケティングは単なる技術だからだ。問題は何を伝えるかだ。

消費者の期待を上回れ

こうした話をすると、以前に指摘した「抽象的表現」に戻ってしまう塾が多い。曰く「当塾は一人ひとりを大切にします」「とことん面倒を見る塾です」何度も言うが、抽象的表現は相手に伝わらない。一人ひとりを大切にしているのなら、例えば「塾生全員と交換日記をしています」「毎月、子供の様子を伝える手紙を家庭に送っています」「誕生日にはバースデーカードを贈っています」のように、具体的な行動で表現しなければならない。そこまでして、やっと「この塾は一人ひとりを大切にする塾だ」ということが伝わる。「誕生日を祝うことよりも、成績を上げることのほうが大切だ」という考えを持つ人がいるが、これは二者択一の問題ではない。塾に通わせている母親の立場に立つと、塾が成績向上のための努力をするのは当たり前のことなのだ。期待を上回るサービスを受けた時、人は感動する。塾もサービス業である以上、消費者の期待を上回る付加価値の創造は欠かせない。

もう一度あなたのチラシを見てほしい。2割の人に、「これこそ私の(私の子供の)ための塾だ」と思わせているだろうか。DMは「あなた」に対する手紙になっているだろうか。コツは主語を「みなさん」ではなく、「あなた」にすることだ。自分の塾に相応しい「あなた」を想定して文を書く。そうすることで、自塾が主張すべき特長と、足りない何かが見えてくる。

あなたは、けっして時給800円の事務員と同じ仕事をしていてはいけない。その「何か」を発見することがあなたの成すべき一番の仕事である。

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