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中小塾のためのマーケティング講座(1)
「中小塾再生、第一歩のために 」

森智勝氏

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塾業界は未曾有の不況にさらされている。
主な原因は次の4つである。

原因の第一は言うまでもなく少子化である。1981年、小学生の人口は1193万人のピークを迎えたが、2000年は737万人、6割強に減ってしまっている。中学生人口のピークは1986年の611万人だが、2000年は410万人まで減少し、7割弱まで減少している。この傾向は今後も続く。塾業界は確実に縮小均衡の時代へ突入している。

第二がここ10年以上続く大不況である。本来、教育産業は不況に強いと言われてきたが、さすがに通塾率は緩やかに低下している。特に、1997年以降の低下率は著しい。不況の長期化に伴い、通塾を断念せざるを得ない層が広がっている。同時に、授業料滞納者の割合も増えている。また、授業料の頭打ち現象が現れ始め、1997年以降、全国の授業料平均は小・中学生とも下がっている。

第三の理由が「ゆとり教育」の推進である。1970年代から始まった学習内容の削減と少子化の進行によって、勉強に対する価値観の低下と学習意欲の減退が進んでいる。学習内容の削減は成績上位者の学習意欲を減退させ、中下位層の学習満足度を高めてしまっている。結果、通塾率の低下を招いている。特に、補習塾への通塾率低下は顕著である。

最後に、業界としての構造的欠陥が指摘されている。塾は規制がなく開業が容易なため、フランチャイズを始めとする異業種からの参入が増加している。皮肉なことに、不況を背景とした起業ブームによって塾業界へ参入する人が後を絶たない。 旧総務庁の統計調査によると、1981年に18,683教室だったものが、1999年には48,663教室と3倍になっている。ただし、この塾の数も1997年以降、減少に転じている。淘汰が始まったのだ。

こうした状況下では、今までと同じことを繰り返していたのでは現状維持も難しい。既に大手塾による寡占化が進行し、多くの中小塾が廃業に追い込まれている。自然淘汰は自由資本主義の掟ではあるが、地域に密着した学習指導に努め、子供たちの学力向上に役立ってきた優良塾が廃業に追い込まれてしまうのは社会的損失である。このままでは30%~50%の塾が消滅するという予測もある。


塾も小なりとは言え企業体である以上、利益を上げ、拡大再生産をすることによって社会的貢献を実現していかなければならない。また、利益が出なければ塾生たちに対して充分な教育サービスを提供することも難しい。けっして塾長の個人的犠牲と献身だけでは成り立たない。ところが、多くの塾長が「無料奉仕」を「社会貢献」だと考えている。ボランティアに走る。朝から晩まで、睡眠時間を削って夜中まで仕事をする。スタッフにも自分と同じ献身を求める。「良い授業をしていれば塾生は自然と集まる。塾生が減っているのは頑張りが足りないからだ。」と考え、さらに打ち込む。そして疲弊していく。頑張れば頑張るほど利益が減り、疲労が増える。悪循環。

中小塾の塾長は自らも教壇に立ち、経営者というよりも教育者としての姿勢を前面に出している傾向にある。エネルギーの大部分は授業研究、教材開発、講師育成という、いわゆる「塾運営」に費やされる。中小塾の場合、塾長の肉体的、金銭的犠牲の上にようやく経営が成り立っているところが実に多い。そうしたところの塾長は「教育を金儲けの手段にするのは…」と考えている。そんなことだから「教育を金儲けの手段」にしている塾に負ける。なぜか。塾経営、つまるところ塾生を集める事に関しては「何もしていない」に等しいからだ。拡大発展の時代には通用したことが縮小均衡の今は通用しなくなっている。

地域の子供たちのためにも、あなたは多くの塾生を集めなければならない。その第一歩は「塾運営」と「塾経営」を分けて考えることだ。そして、明確な戦略と戦術を持って実践することである。「一生懸命やっているだけでは塾生は増えない」ということを直視することから、あなたの塾の再生は始まる。

チラシの反応率が悪くなったと言われて久しい。一説によると7千分の1とも1万分の1とも言われている。ところが、一方では夏期講習に42名を集客したチラシ、6月という中途半端な時期に高校生を17名獲得したチラシが存在する。その差はいったいどこにあるのだろう。

今春、チラシの反応が悪かったとお嘆きの方は、自塾のチラシを広げていただきたい。一番最初に飛び込んでくる文字が「塾生募集」になっていないだろうか。次に目立つ文字が「塾名」、そして「未来へはばたく君へ」「頑張る君を応援します」というキャッチコピー。残りの記事は「募集要項」のみ。実は、これが反応の無いチラシの典型である。

なぜ、「塾生募集」のチラシは反応が無いのか。ひとつは、塾が塾生を募集するのは当たり前だからである。人は、当たり前のことには反応しない。例えば、魚屋で魚を売っていて驚く人はいないが、もし、魚屋の店頭に大根が山積みされていたら、「何事か」と思わず覗いてしまうのではないだろうか。そして、そこにこんなポップが掲げてあったら…。

新鮮な秋刀魚、入荷しました!今朝採れたての大根おろしで召し上がってください。最高に美味です。

秋刀魚と大根がバカ売れすることを保証する。

塾が「塾生募集」と言うのは魚屋が「魚売っています」と言うようなもので、誰も反応しなくて当然なのである。

同様のことが「塾名」にも当てはまる。残念だが、ほとんどの母親はあなたの塾名には興味がない。あなたがハワイツアーを選ぶ場合、旅行代理店の名前に注目するだろうか。塾名が威力を発揮するのは、その名前が地域でブランド化している場合だけだ。あなたの扱っている商品がバッグならば「エルメス」という名前だけで売れる。

もう1つの理由は、消費者の購買行動が以前と変わってきたことである。あなたの塾の商品価格を計算してほしい。月額2万円の授業料ならば、中学3年間で72万円。入塾金、教材費、テスト代、講習費等を入れると100万円近くになる。ほぼ自動車を買う値段である。あなたは車を買うとき、B4のチラシ1枚で購入を決定するだろうか。多分、販売店をいくつか回り、説明を受け、試乗もした上で決断するのではないだろうか。ところが、いざ自分の商品を売るときは紙1枚で済まそうとしてしまう。「塾生募集」は、「100万円の商品を買って下さい」と言っているに等しい。これでは反応を求める方が間違っている。消費者心理に立てば、余りにもハードルが高い。ハードルが高すぎると人は跳ぶ前に諦めてしまう。当然、電話もかかってこない。

あるコンサルタントが某塾業界誌にチラシ戦略を次のように解説していた。(見出しのみ)
<1>折込の基本……狭い範囲に回数多く
<2>チラシ製作の基本……目立つこと
<3>内容の基本?……訴求対象を明確に
<4>内容の基本?……安さと実績

実は、ここに掲げた4項目は全て間違いである。これは、チラシに関する一般論を「主語を塾に変えて」述べているにすぎない。不特定多数を対象とする商品、例えば車を売るのであれば通用するかもしれないが、塾は特定少数を対象に学習指導というサービスを提供する特殊な業界である。一般論は通用しない。しかし、作り方を工夫すれば今より反応率の高いチラシは必ず作れる。

反応率の高いチラシはどう作るか。次回から具体的な方法について解説をしていくが、その第一歩は、見出しの「塾生募集」をやめることである。

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